パルデンの会

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中国が恐れるドル経済圏からの永久追放。 1.1兆ドル凍結で共産党消滅も?

【中国】ドル経済圏から追放される中国の焦り 

      ⻩⽂雄(こう・ぶんゆう)

 

● 焦点:「鉄のカーテン」再びか

ドル圏から締め出し恐れる中国
新型コロナ以後、アメリカは中国通信⼤⼿のファーウェイや監視カメラメーカーのハイクビジョンなど、中国企業を国際市場からの締め出す動きを加速させ、さらには動画投稿のTikTokやメッセージ交換のウィーチャットなど中国製アプリを使⽤禁⽌する⽅針を打ち出し、中国への攻撃を強めています。
そして、今度は、基軸通貨ドルを中⼼とする国際通貨システムから中国が締め出される可能性が⾼まりつつあります。
ロイターの記事によれば、「中国がドル決済の枠組みから遮断されたり、⽶政府が中国の膨⼤なドル建て資産の⼀部を凍結ないし差し押さえたりするような最悪シナリオが、中国の当局者やエコノミストの間でここ数カ⽉、公然と論じられるという異例の光景が⾒られるようになった」といいます。


アメリカは7⽉14⽇、⾹港⾃治法を成⽴させました。これは、中国が⾹港に国家安全維持法を強制的に施⾏したことを受けたもので、⾹港の⾃由や⾃治を侵害した個⼈や団体に対して、ドル資産凍結などの制裁を課すことができるというものです。そして、その個⼈や団体と取引がある⾦融機関も、アメリカの制裁対象になります。

● ⽶、ドルで中国締め付け ⾹港巡り8つの⾦融制裁検討
いうまでもなく、国家安全維持法の施⾏にかかわったのは中国共産党の幹部たちであり、とくにアメリカ共和党は制裁対象として、中国共産党・最⾼指導部の韓正副⾸相(⾹港担当)らを視野に⼊れているとされています。
こうした中国共産党幹部らを制裁対象に指定した場合、彼らと取引している銀⾏も、アメリカから制裁対象とみなされるということです。中国共産党の最⾼幹部が指定されたら、ほとんどの中国の銀⾏がアウトになるのは必然でしょう。たとえば、彼らの給与振り込みを扱っている銀⾏などが制裁対象になるわけです。
⾹港⾃治法で定められている具体的な制裁⼿法としては、
1. ⽶銀による融資の禁⽌
2. 外貨取引の禁⽌
3. 貿易決済の禁⽌
4. ⽶国内の資産凍結
5. ⽶国からの投融資の制限
6. ⽶国からの物品輸出の制限
などの8項⽬です。つまり、制裁対象に指定された中国の⼈物や団体も、それらと取引する中国の銀⾏も、アメリカでの資産が凍結され、さらにはドル決済が⼀切できなくなるということです。

中国が恐れるドル経済圏からの永久追放。
1.1兆ドル凍結で共産党消滅も?
中国には中国銀⾏、中国建設銀⾏、中国⼯商銀⾏、中国農業銀⾏という4つのメガバンクがありま
す。記事によればこの4⼤銀⾏が保有するドル資⾦は1兆1,000億ドル(約118兆円)という巨額なも
のです。
4⼤銀⾏がドル決済できなくなれば、これらのドル資⾦は何の意味もなくなります。また、ドルを調達することも不可能になるため、中国企業が海外でドル建てで借りた借⼊⾦も返済不可能になり、デフォルト危機に陥ることになります。
ドル決済から排除されることを懸念して、中国では⼈⺠元の国際化を急いでいます。国際貿易をドル決済ではなく、⼈⺠元決済にすることで、ドル経済圏から脱して、⼈⺠元経済圏を新たに築こうとしているわけです。


● 中国銀、⽶制裁に備えて⼈⺠元決済システムへ移⾏を=報告書
2016年10⽉、中国の⼈⺠元がIMFのSDR(特別引き出し権)の構成通貨になりました。中国は⼈⺠
元を国際通貨にするために、SDRの構成通貨になることを強⼒に推し進めてきた結果です。
しかし、こうして国際通貨となった⼈⺠元ですが、世界での決済シェアは2%程度しかありません。
2019年8⽉時点で2.22%で、⽶ドル、ユーロ、英ポンド、⽇本円に次ぐ5位です。⽇本円よりも決済シェアが低いのです。


● ⼈⺠元の国際決済シェア、3年半ぶりに過去最⾼を更新
そのため、中国はデジタル⼈⺠元を発⾏し、もっと使い勝⼿を良くして国際的な決済シェアの拡⼤を⽬論んでいます。
とはいえ、中国はこれまで厳しい資本移動の規制を⾏ってきました。海外への外貨持ち出しが制限され、そのために中国⼈による「爆買い」も沈静化したわけです。そうした資本移動の規制が、⼈
⺠元の普及を遅らせてきたのもたしかです。
資本移動を⾃由にすると、中国からキャピタルフライトが起こる可能性が⾼く、そうなれば⼈⺠元の価値は暴落します。経済的な統制が取れなくなることが、中国共産党がもっとも恐れることです。
⺠意によって選ばれたわけではない中国共産党の⼀党独裁に、正当性を与えるのが「絶対無謬性」です。中国共産党は絶対に間違えない。だから中国の憲法前⽂には「国家は党の指導を仰ぐ」とされており、最⾼法規よりも中国共産党の指導のほうが上なのです。
その中国共産党の無謬性が揺らぐとなると、⼀党独裁の正当性を失うことになります。だから中国共産党にとって、資本移動の⾃由は絶対に認められず、いつまでも統制経済を続けなくてはならないわけです。
加えて、デジタル⼈⺠元についてですが、ファーウェイやTikTokでも問題になったように、すべての情報が中国共産党に握られる危険性があるため、どこまで導⼊する国が増えるかという疑問もあります。
インドなどは、多くの中国製アプリを使⽤禁⽌にしました。国家の安全保障にかかわる問題だからです。デジタル⼈⺠元を使⽤することで、中国にさまざまな機密情報が流れてしまう可能性が否定できません。そうなれば、中国に弱みを握られ、意のままに操られてしまう危険性も否定できないでしょう。


● インド、中国製アプリ使⽤禁⽌をTikTok以外にも対象拡⼤そもそも通貨というものは、国家の信⽤⼒によって成り⽴つものです。イギリスとの国際公約を破って⾹港の「⼀国⼆制度」を実質的に破棄した中国が発⾏するデジタル⼈⺠元に、どれだけの信⽤⼒があるというのでしょうか。

2015年6月から始まった中国の株式大暴落では、中国政府は大株主が株を売却することを禁止し、違反者は逮捕すると脅しました。これは資本主義国では考えられないような措置ですが、これも共産党支配の正当性を守るためです。中国共産党一党独裁体制を守るためには、何でもするというのが、中国なのです。

 

だから、中国共産党にとって不利な事態になるようなことがあれば、100%間違いなく、市場原理などは無視して、なりふり構わずさまざまな規制をかけてきます。それはデジタル人民元にしても同じです。現在の中国においては、中国共産党の存続こそが最大の目的だからです。

ドル経済圏から中国が排除されれば、人民元は再びローカルカレンシーに後戻りです。基軸通貨のドルと交換できなくなれば暴落するしかなく、中国国内の外資は逃げ、他国との貿易も大幅に縮小せざるをえなくなります。そういう時代がもう目の前に迫っているのです。

昔の周人は黄土高原のステップ(草原)地帯にたどり着いた時点から、資源と居住環境問題に直面しましたが、それはここ数千年来、ほとんど変わっていません。

 

今では毛沢東時代の「自力更生」の時代とはまったく異なり、ヒトからモノ、カネまですべてが他力本願の時代になっています。現在の中国最大の弱みは、他力本願以外には、存立不可能だということです。

そのような中国が、ドル基軸体制から切り離されれば、それは経済的にも中国共産党としても、死を迎えるしかないということになるのです。

 

 

 

⾹港への国家安全維持法導⼊により中国が払う代償は、予想以上に⼤きなものとなりそうです。今回のメルマガ『⻩⽂雄の「⽇本⼈に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では台湾出⾝の評
論家・⻩⽂雄さんが、⽶国が定めた⾹港⾃治法により中国がドル基軸体制から締め出される可能性
を⽰唆。その事態が現実となった⽇には、「中国は死を迎えるしかない」と断⾔しています。
※本記事は有料メルマガ『⻩⽂雄の「⽇本⼈に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2020年8
⽉19⽇号の⼀部抜粋です。ご興味をお持ちの⽅はぜひこの機会に初⽉無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:⻩⽂雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾⽣まれ。1964年来⽇。早稲⽥⼤学商学部卒業、明治⼤学⼤学院修⼠課程修了。『中国
の没落』(台湾・前衛出版社)が⼤反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとな
った『⽇本⼈はなぜ中国⼈、韓国⼈とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。