自民党の古屋圭司元国家公安委員長は7日、中国チベット自治区などでチベット仏教に対する中国当局の干渉や人権侵害行為を非難する国会決議の採択の必要性に言及した。「改めて人権侵害という言葉でもう一度チャレンジできないか」と述べた。ダライ・ラマ法王日本代表部事務所を交えた国会内での勉強会で語った。
「状況証拠はそろっている」
チベットや香港での人権問題に関する決議を巡っては、古屋氏が主導する形で令和4年2月に衆院、同年12月に参院でそれぞれ採択された。ただ、人権弾圧を重ねる中国政府に対する非難を表明するはずだったが、決議文には「人権侵害」の文言も「中国」の国名も「非難」も重要な表現が消える結果となった。
古屋氏は会合で「国会決議は全党のハンコが必要と決まっている。『人権状況を懸念する』文言で決議しているが、私としては非常に不本意」と振り返りつつ、「(人権侵害を示す)客観的な状況証拠が(当時)ないために、こうなったが(2年以上が経ち)状況証拠はそろっている」とも語った。
勉強会はインド南部の寺院、タシルンポ僧院のシギャップ・リンポチェ僧院長らが出席し、行方不明のままのチベット仏教第2の高位者であるパンチェン・ラマ11世の解放に向けた支援を出席した自民党や立憲民主党議員らに要請した。同僧院は元々チベットにあり、歴代のパンチェン・ラマの拠点となる。
チベット人の権利と感情を無視
パンチェン・ラマ11世を巡っては、チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世が1995年、6歳の少年をパンチェン・ラマの転生者に指名したが、直後に少年は行方不明に。中国側は独自に別のパンチェン・ラマ11世を認定している。
リンポチェ氏は「中国政府は6歳のパンチェン・ラマ11世を、その権利を無視してチベットの自宅で捕らえ、連れ去った。中国政府はチベット人とパンチェン・ラマの信者の権利と感情をあからさまに無視している」とパンチェン・ラマ11世の解放を訴えた。
事務所のアリヤ代表は「チベットはお互いにスパイを強制され、自由な移動は許されず、警察国家になっている」と指摘し、「国際社会の沈黙はチベットやウイグル、南モンゴルなど占領地域の人権や信教の自由を無視する中国を増長させている」と指摘した。(奥原慎平)