パルデンの会

チベット独立と支那共産党に物言う人々の声です 転載はご自由に  HPは http://palden.org

4年前から改革を進める東京国際映画祭の方向性がはっきりしてきた アジア勢が席巻 チベット映画に最高賞

東京国際映画祭

アジア勢が席巻 チベット映画に最高賞

東京国際映画祭リポート㊤

 [会員限定記事]

 

 

 

 
東京グランプリのペマ・ツェテン監督「雪豹」
 

アジア映画の世界への窓へ――。4年前から改革を進める東京国際映画祭の方向性がはっきりしてきた。1日閉幕した第36回のコンペの受賞結果もそれを反映していた。

受賞した5作品が全てアジア作品かアジア系監督の作品であることを記者会見で指摘されたヴィム・ヴェンダース審査委員長はこう答えた。「指摘を受けて、今初めて気づいた。我々は国籍を見るのでなく、質を見て、説得力のある高水準の作品を選んだ」。受賞作が単にエキゾチックなものでなく、世界水準の作品であることを裏付けた。

東京グランプリは中国映画「雪豹(ゆきひょう)」。5月に53歳の若さで急逝したチベット映画の先駆者ペマ・ツェテン監督が残した。

チベットの村で羊を襲ったユキヒョウが捕らえられる。殺すか、逃がすか。人々の意見が対立する。役人は希少生物を捕らえているだけで違法だと言う。激高した羊飼いは「補償が先だ」と主張する。弟の僧侶は修行中の山でのユキヒョウとの出合いを思い出す……。

野生生物による被害はチベットだけでなく、欧米でも日本でも頻発している。そんな身近な題材をグローバルなルールと地域の生活様式の摩擦という現代に普遍的な問題として描く。チベットから世界が見えるのだ。CGを駆使しながらも、雄大な自然の中に人間たちをとらえる映画言語の力強さは傑出していた。

「タルロ」「羊飼いと風船」などで名声を得たペマ・ツェテンを、市山尚三プログラミング・ディレクターは早くから東京フィルメックスで紹介してきた。その成果だ。

「世界は燃えている。イランもパレスチナイスラエルも。無実の人々が不正により血を流し、混乱の中で無力になっている。しかし私たちは映画を作った。憎み合うよう育てられた者同士の奇跡的な組み合わせで」

審査委員特別賞と最優秀女優賞を得た「タタミ」のザル・アミール監督のビデオメッセージは痛切だった。「聖地には蜘蛛(くも)が巣を張る」でカンヌ映画祭女優賞を受けたイラン系フランス人。共同監督のガイ・ナッティヴはイスラエル人。ジョージアと米国の合作だ。

ジョージアでの女子柔道選手権。イラン代表選手が勝ち抜くと、イスラエル代表選手と対戦するかもしれない。イランの柔道連盟会長はコーチに棄権を指示する。メダルを目指す選手と国家の板挟みになったコーチの苦闘が白黒画面でスリリングに描かれる。アミールは「彼女は自由を得ながら大きな代償を払う。この女優賞はイランの女性たちにささげたい。畳の上、路上、家庭の中でひっそりと虐げられている女性たちへ」と語った。

最優秀芸術貢献賞のガオ・ポン監督「ロングショット」は1990年代に経営不振に陥った中国東北部の工場を舞台にした活劇。初監督作ながら社会性と娯楽性を併せもち、中国の若手監督の層の厚さを感じさせた。その日暮らしのイラン青年の災難を描く「ロクサナ」は最優秀男優賞。97年ヤングシネマ最高賞を受けたパルヴィズ・シャーバズィ監督が帰ってきた。「正欲」の岸善幸監督は最優秀監督賞を射止めた。

市山氏のセレクションは大胆だった。中国映画を3本入れる一方、フランスやイタリア作品はない。「地域バランスより作品の質を重視した。有名監督のそこそこの映画より挑戦する映画をとった」。結果としてアジア系監督の作品も含めアジア色は濃くなった。「スペインのサンセバスチャン映画祭は中南米映画のパノラマとして成功した。東京で面白いアジア映画がたくさん見られるようにしたい」と語った。