パルデンの会

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クレムリンの報道官ドミトリー・ペスコフは米国を「敵」と呼びはじめた。同報道官は以前、『敵』という語彙を選ぶのはプーチン大統領だけだと主張していた。

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 「宮崎正弘の国際情勢解題」 
     令和六年(2024年)6月7日(金曜日)
      通巻第8282号  
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 クレムリン、米欧を初めて『敵』と呼び始めた
  これまでのレトリックは「非友好国」とか「反対者」だった
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 2024年6月5日、プーチン大統領サンクトペテルブルクで開催中の「国際経済会議」にあわせて、日本や欧米、中国などの通信社代表と会見した。
プーチン大統領は、日本との間で中断されている北方領土問題を含む平和条約交渉について「現在、平和条約に関する日本との対話を継続するための条件が整っていない。われわれは再開を拒否しないが、必要な条件が整えばの話だ」と述べた。

「日本の立ち位置は平和条約に関する対話継続の障害にならないのか」と、ウクライナへの軍事侵攻以降、欧米に強調してロシアに制裁に加わっている日本に強硬な姿勢を示した。
 プーチン自身の北方領土訪問は「将来必ず行くつもりだ。これらの島々を訪問しない理由はないが、正直なところ別の問題で忙しくまだ計画はない」と述べた。

問題はこのあとである。
クレムリンの報道官ドミトリー・ペスコフは米国を「敵」と呼びはじめた。同報道官は以前、『敵』という語彙を選ぶのはプーチン統領だけだと主張していた。
これまでクレムリンウクライナを支援し武器を供給し、モスクワに制裁を課してきた米国やその他の西側諸国を「非友好国」あるいは 「反対者」と呼んできた。

 言葉のエスカレーションに留意すべきである。3月時点でペスコフは「モスクワはプーチン大統領を侮辱する米国当局者に反対しているが、一般的にロシアには反米感情はない。遅かれ早かれ、米国とロシアの国民は敵ではないという認識が最終的に訪れるだろう」と期待を表明していた。
 その2ケ月前にプーチン「西側のエリート層がロシアの真の敵であり、ウクライナは彼らの手先に過ぎない」と述べていた。西側諸国が敵ではなく、そのエリート層に限定して敵という言葉を使っていた。バイデンがプーチンを「人殺し」と読んだが反発を示さなかった。

 メドベージェフ元ロシア大統領などは過去2年間にわたり、ウクライナ支援国を「敵」と繰り返し非難してきた。だがペスコフ報道官は「プーチン大統領だけがロシアの公式外交政策の立場を策定し、表明できる」とし、ほかの発言は非公式なものと述べていた。

 プーチンはこう言ったのだ。
「モスクワとキエフの紛争はロシアを倒そうとする西側エリート層によって仕組まれたものだ。しかし西側は目標を達成できず、その失敗は紛争に関するレトリックの変化に表れている。つい昨日までロシアに『戦略的敗北』を与える必要性について語っていた人たちが、今では紛争を迅速に終わらせる方法についての言葉を探しているではないか」。

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