わずか33分でヘリコプターが移植用の肺を患者のもとへ届けた。報道が流れるや否や、ネットではレシピエントの特権的待遇と臓器の提供元を疑う声が飛び交った。専門家は、中国臓器移植産業の背後には深い闇があると指摘する。
深センメディアは16日、14日の午前中に深セン市人民病院で73歳の「楊さん」が肺移植を行い、その際にヘリコプターによる臓器輸送が行われたと報じた。移植のための肺は広州市から深セン市までわずか33分で輸送され、ネットでは、臓器の提供元やレシピエントの身分をめぐって議論が巻き起こった。
深セン市衛生健康委員会の担当者は22日に政府系メディアで、「全く問題はない。臓器獲得機関(OPO)を通じて行われ、すべてルールに則った臓器移植だ」と説明した。
当局は、今回の臓器移植は「中国人体臓器分配・共有システム」による自動マッチングで行われ、ヘリコプターによる輸送は阻血時間(血液が移植臓器に流れていない時間)を大幅に短縮するためだったと説明している。
報道によれば、2人のレシピエントはそれぞれ73歳の楊さんと64歳の殷さんで、ともに定年後の一般人だ。楊さんは製紙工場を退職したのち妻とともに深セン市へ移ったが、現役中の劣悪な労働環境が原因で慢性的な肺炎を患っていた。殷さんもすでに定年を迎え、妻と娘は一般社員として働いている。
長年、中国共産党(中共)による強制的な臓器収奪の問題を注視してきた秦鵬氏はエポックタイムズの取材に対して「中国当局は患者2人とも一般市民だと弁解しているが、これはありえない。肺の移植手術をする場合、入院費用を加えると費用は約40万~50万元(約800万〜1千万円)にのぼる。深センに移住してきたサラリーマン家庭が医療保険や補助金なしに自己負担することは不可能だ」
「移植後、拒絶反応を防ぐのに毎年数万元の追加免疫薬が必要となる。当局による説明は事態をかえって露呈させ、背後に潜む闇を示唆している」と語る。
また中共による強制的な臓器収奪の闇はあまりにも深いと指摘し、「中国の臓器移植業界は、1999年の法輪功弾圧開始後に生まれたものだ。中共は、実際は法輪功学習者の臓器を利用して医療技術の向上を実現してきた」と語った。
中国共産党による法輪功学習者に対する強制臓器収奪(臓器狩り)は2006年から暴露され始め、国際社会の強烈な非難を浴びた。秦鵬氏によれば、臓器獲得機関は臓器狩りに対する国際社会からの批判を浴びた中国共産党が臓器移植産業を「クリーン」にするために設立した組織で、中国での違法な臓器摘出は現在も依然として続いている。
昨年、中国のある大学院生が不可解な脳死宣告をされた。今年6月にも、中国共産党衛生健康委員会直轄の三甲病院で脳死宣告を利用した違法な臓器摘出が行われている疑いがある、と暴露する動画がネット上に流れた。
「中共の臓器供給源は、死刑囚から法輪功学習者に対する臓器狩りへと切り替わり、さらに家庭教会(キリスト教集会の一種)や陳情に来た市民などへと標的が拡大している。おそらく臓器の供給が間に合わなくなってきたのだろう。彼ら(中共)は誰でもドナーにしており、大学生も標的になっている。中国では臓器移植がすべての国民に対する脅威となっており、市民は強い反感を抱いている」
今年6月、米国議会で「法輪功保護法案」が通過し、中国共産党による組織犯罪「臓器狩り」に関与したものに制裁を科すことが定められた。米国は超党派で中国共産党による犯罪を非難している。