パルデンの会

チベット独立と支那共産党に物言う人々の声です 転載はご自由に  HPは http://palden.org

中国でなぜ「カルト」がはびこるのか


共産党もカルトであるが 宗教を禁じている中国に対して
欧米のキリスト教チベット仏教、日本の新興宗教が興味を見せている。
特に中国においてカルトとされている 創価学会が池田会長の一言で
中国進出を進めているのも 会長自らの支那共産党幹部との裏の付き合いの
結果であろう。 50年以上心の教育が行われていないシナに 利己の得ではなく
利他すなわち他人への心がけであると言っても まったく興味をもたれないだろう。
新興宗教が言う 喜捨をすれば この世でも、あの世でも 幸せが来るなど
目先にしか興味のないシナ人には 飛びつくものであろう。

中国でなぜ「カルト」がはびこるのか

「5.28山東マクドナルドの惨劇」の裏側

2014年6月4日(水)  福島 香織  
 5月28日。その惨劇は山東省招遠市のマクドナルド店内でおきていた。一人の女性が禿げ頭のいかつい男にモップの柄のようなもので滅多打ちにされ ている。「この悪魔め!」「永遠に生まれ変われないぞ!」という罵倒と、断末魔のような悲鳴が店内に響き渡る。だが、他の客たちは誰も男を止めることはで きない。「お前ら、誰が死のうと気にしないんだろう!」という男のあざけりに、ただ身を固くするだけだ。床に広がる鮮血の海の中に横たわる女性は虫の息と なった。やがて警察が駆けつけ男を制圧、彼女が病院に搬送された時にはすでにこと切れていたという。
「悪魔め!」と罵倒、滅多打ちする「全能神教」信者
  この様子を誰かが震える手で携帯電話のビデオに収め、動画サイトにアップしていた。不鮮明なビデオの最後は、撮影者がつれの女性とともに外の駐車場らしい ところまで逃げたあと、女性が恐怖のあまり泣き出すところで終わっている。衆人環視の中で堂々と行われる殺人と、それを携帯電話撮影する以外、何もできな い他の客の恐怖の生々しさが、揺れる映像から伝わっていた。
 後に、その殺害犯たちが「全能神教」のメンバーであるとの警察発表があった。 以前、このコラムでも紹介した、大紅竜(共産党)を倒して新国家を樹立することを教義とする異端的新興宗教・カルトだ。2012年12月に中国共産党の徹 底弾圧にあって、一時は壊滅状態だと思われていた。あれから一年あまり。全能教はずいぶん物騒な噂とともに、以前にまして中国で存在感を発揮している。こ れはなぜなのか。
 北京青年報を参考に事件の概要をもう一度整理しておく。
 警察にマクドナルド店内でケンカが起きていると 通報があったのは5月28日午後9時19分。23分に警官が現場に到着し、容疑者を確保。被害者女性・呉さんを病院に搬送。48分に呉さんの死亡が確認さ れた。現場で加害者として拘束されたのは少年1人を含む男2人女性4人の計6人。少年を除く5人が殺人で逮捕された。主犯のはげ頭の男は張立冬と名乗って いる。
 呉さんは37歳、まもなく7歳になる男の子の母親だ。マクドナルドが入っているビルの上階の商店に勤務し、仕事が終わったあと夫と店内で待ち合わせて一緒に帰る予定だった。そこへ、犯行グループの中の若い女性が近寄り、話しかけた。
  「こんにちは。あなたとは縁があるような気がします。ぜひ携帯電話の番号を教えてください。決して悪意はありません…」。彼女は店内のテーブルを一つ一つ 回って、客たちから携帯電話番号を集めていた。だが呉さんは、機嫌が悪かったのか、「向こうにいって遊んでな!」と言葉を投げつけた。
 す ると、犯行グループの別の30歳くらいの強面の女が大声を上げた。「あんたが携帯電話番号を教えてくれないんじゃ、あんたが遊んでやるしかないじゃな い」。女はやがて立ち上がり呉さんに近づくと、いきなり椅子を振り上げて、二度、三度、呉さんの頭上に振り下ろした。倒れた呉さんが立ち上がろうとする と、さらに椅子を打ち下ろす。マクドナルドの制服を着た女性副経理が彼女らを止めようとしたが、ヘルメットのようなものを投げつけられて反撃された。続い て、女のつれであった禿げ頭の張立冬が金属製のモップで、呉さんを滅多打ちにし始めた。呉さんが倒れると、飛び上がって頭の上を踏みつける。さらにモップ で頭を打ち続けた。警察が駆けつけるまでの4分、暴行が続いた。警察が来るぞ、とわかっていても、一向に構わないようだった。
目的は悪魔撲殺。法律は恐れない。神を信じているから
 警察に拘留中の張立冬CCTV(中央テレビ)がインタビューしている。
 記者「あなたが信じている宗教は何か?」
 張「全能神だ」
 記者「どのぐらい信仰が続いている?」
 張「7年」
 記者「被害者は顔見知りか?」
 張「他人だ」
 記者「ではなぜ他人を殴ったのだ」
 張「彼女は悪魔で邪霊である。目的は彼女を撲殺することだ」
 記者「法律違反だとは考えないのか」
 張「考えない」
 記者「法律を恐れないのか?」
 張「恐れない。私は神を信じているからな」
 記者「今、あなたの心境は?」
 張「いい気分だよ」…
  警察発表によると、この6人グループは河北籍の家族だという。張立冬、その長女、次女、息子(未成年)、あと河北籍の女と山東籍の女。全員無職。7年前か ら全能神教信徒という。張の自宅からは全能神関連の書籍資料などが押収された。この一家は無職にも関わらず、張はポルシェのカイエンを運転してきていた。 かつて医薬品卸売りの仕事に従事しており、そのたくわえで生活しているという。招遠市内に90平米のマンションと河北省に三階建ての別荘を持つ相当な金持 ちという。一見生活が豊かなこの一家が本当に邪教の信仰にはまっているのか、それとも「邪教信仰による殺人」が中国の法律上、最高懲役7年を越えない(刑 法第300条2款。ただし専門家から法解釈の異論がある。ふつうの故意殺人は最高刑は死刑)ために、邪教信仰を装っているのかは不明だ。だがCCTVで見 せた不敵な張の顔つきは、一般的な犯罪者とは違う異様さをたたえていた。
 いったい全能神とは何なのか、大紅竜との戦いが教義のはずなのに、なぜ一般市民を撲殺したのか。
 このマクドナルドの事件以降、中国メディアは全能神についていろいろ詳細な報道をしている。以前のコラム「神秘宗教の台頭は王朝末期の印」でも取り上げたが、もう一度、全能神についておさらいしておく。
  以前に創始者の趙維山は元物理学教師と紹介したが、その後、半島都市報の周超記者が趙の故郷にまで言って聞き込み取材をしたところ、物理教師だったという のは詐称で、実は元鉄道工であったという。1951年12月12日、黒竜江省永源鎮という片田舎の貧しい鉄道工の家庭に、十人兄弟姉妹の長男として生まれ た。冬は零下数十度の雪の閉ざされた極寒の地。時に樹木の皮で飢えをしのがねばならないどん底生活。15歳のときに文化大革命が始まり紅衛兵となったの で、中学校もきちんと終えていないようだ。
貧困、両親と娘の死、信仰に傾倒、「邪教」広める
 20歳のときに陝西の鉄道 工になったが、そこでの生活も苦しく2年後に故郷に舞い戻る。故郷で駅の修理工となり、退職した父の代わりに一家の大黒柱となる。だが、生活は苦しかった のだろう、次第にキリスト教に傾倒していくようになる。仕事の合間を縫って布教活動にも参加するようになった。1979年に、地元ケーキ工場の女子工員と 結婚。貧しいながらもなんとか、自分の家庭を築いていた。彼はタバコをやらず酒もほとんど飲まず趣味もなく、喜びはキリスト教の集会で讃美歌を歌うこと だった。
 1984年、東北地方独特のオンドル式の暖房による一酸化炭素中毒で両親と4歳になる娘を一度に失ってしまった。この悲しみに耐 えるように、信仰に没頭するようになった。1983年には地元に公認キリスト教の教会が建てられていたが、趙は教会の集会に参加せず、自宅に知り合いの信 者を集めて集会を行った。趙は、党の指導を受ける公認教会をバカにしたところがあったという。
 彼は周辺の農村にでかけては自分で布教活動を行い、1989年についに「永源教会」を設立。自らを「能力主」と名乗るようになった。
  1991年、ハルビンの某駅近くで、趙らが「能力主」に関する宗教書籍を販売しているのを警察が発見。趙らは邪教を広めた容疑でお尋ね者となる。集会の現 場に警察が乗り込んだが、信者らが趙を窓から逃がし、妻を含めた20人あまりが「邪教」を広めたとして逮捕された。この時、漢方薬や粉ミルクなどが押収さ れたが、それは当時の信徒たちが趙に納めた「お布施」だった。逮捕された妻や女性幹部は電気棒などで拷問を受けたが、趙の行方については口を割らなかっ た。妻は3年の労働教養所送りとなり、出所したあと趙と正式離婚している。
 趙はその後、河南省に潜伏、一度、捕まり派出所内に拘留された が、当直の警官が眠っているスキに脱出。1995年11月に、全能神は「邪教指定」された。趙は2000年に仮名でパスポートをとり、東京に脱出したあと 米国に逃亡。2001年に宗教的迫害を理由に政治亡命申請した。その後も信者は増え続け、2007年には信徒は国内外華人300万人以上にのぼったといわ れている。
 信者の増やし方はカルトそのもの。趙の情婦だったとされる未婚女性を神の化身「女キリスト」と祭り上げ、ネットを使って、自分は「大祭司」を名乗ってその女性を操り、七人の幹部・七長老によって七つの中国全土を七つの教区に分けて支配する。
色仕掛けで近づき、甘言で取り込み、2000元を徴収
  勧誘のやり方はまず若い女性が色仕掛けで近づき、甘言で取り込む。組織内には心理学の研修を受けたことのある「洗脳員」がいて、彼らが新人の洗脳教育を担 当。入信時には2000元の入会費が徴収されるほか、「奉献」「恩典」「平安」を得るために事あるごとに金銭を要求され、「聖水」「聖物」なども売りつけ られる。組織は厳密なピラミッド式のヒエラルキーが築かれ、これらの金は、勧誘ノルマ、洗脳ノルマをこなした信者にその数に応じてピラミッドの上層部に上 納される仕組みになっている。幹部ともなると相当な収入になったとも言うので張立冬のリッチぶりも、信者から吸い上げた金のおかげかもしれない。
  ちなみに洗脳、布教の際には台湾のアイドルユニットS.H.Eの音楽を流したという。入会を渋ったり、途中で脱会しようとしたりすると、「護法隊」と呼ば れる男信者が暴力による制裁をあたえた。この「護法隊」による暴力事件、殺人事件が全国各地で起きているという。河南省唐河県では1998年10月30日 から11月10日までの12日間で8件の脱会に対するリンチ事件を起こしたそうだが、その中には四肢切断、耳そぎといった凄惨なものもあった。中国社会科 学院の「中国宗教報告2013」は、全国で急増している自殺、他殺事件にこの宗教が関係していることが多いと指摘している。
 以上の情報 は、公安発表であったり、社会科学院であったり、当局側の発表がベースなので、そのまま鵜呑みにしていいかという意見はあるのだが、伝統宗教はもとより他 の地下宗教からも全能神は異端視されている。もう一つの中国に邪教指定されている法輪功は全能神に比べればまだ平和的といえる。
 この全能 神は2012年以降、当局によって千数百人の信者大摘発が行われ、幹部も相当捕まえられた。当時、中国当局は全能神に大打撃を与えたと、高らかに宣言して いた。だが、いまだこのように、活発に活動している。そういえば法輪功も徹底弾圧されたはずだが、弾圧以前よりも存在感を発揮している。すでに昔話となっ た日本のオウム真理教と比べると、なんとしぶといことか。オウムと違って「教祖」が米国に逃亡してしまったことも大きいが、中国は「邪教」がはびこりやす い土壌があるのではないだろうか。
時代の変わり目に反体制的宗教結社、さて共産党は?
 土地が広い、自然が厳しい、人口 が多い、不条理に虐げられる貧しい人々が奇跡の救いを求めている…。いろいろ理由はあろうが、中国ほど民間に広がった神秘宗教が反体制結社化し大衆運動を 起こして、王朝が倒れるトリガーの役割を果たす歴史を繰り返した国があるだろうか。太平道、白蓮教、羅教、太平天国…。近代は宗教の流を組む秘密結社が革 命を推進した。こうなると、時代の変わり目に反体制的宗教結社が登場するというのは中国のお国柄としか思えない。
 中国当局はこういう歴史 を踏まえたうえで、宗教問題を特に警戒し、取り締まりを徹底しているのだが、「邪教」側がその暴力性をあらわにしても、人心が離れずに、その信仰が何十年 も存続、拡大していることがすごいのである。それはなぜだと思うか、と素朴な疑問を周辺の在日中国人にぶつけてみる。するとこんな答えを言う人がいた。 「中国共産党邪教批判しても、みんなあまり信じない。それは中国共産党自身がカルトだから」。
 共産主義という教義をもった厳密なヒエラ ルキー、末端の構成員(人民)から吸い上げた金銭で上層部が肥え太る構造。擦り寄るものには庇護を与えるが、背いたり異を唱えたりすると、暴力的な制裁を 加える。法を恐れず市場経済ルール、国際ルールまでも党がコントロールできるという奇跡を信じる強い「信仰」は、そういえば神秘宗教的な特色を備えてい る。だからかつては農民労働者の支持をあれほど集めて、この王国を建てることができた。
 中国共産党が本気で「邪教」を殲滅したいと願うのなら、まず自らの中の「カルトの部分」を排除することが先なのかもしれない。


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