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天安門事件のリーダー、ウアルカイシ氏「日本は誤ったシグナルを中国に出している」




天安門事件のリーダー、ウアルカイシ氏「日本は誤ったシグナルを中国に出している」

産経新聞 6月8日(日)20時11分配信
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 中国で民主化運動が武力弾圧された天安門事件から6月4日で25年を迎えた。中国の言論空間において天安門事件を表す用語「六四(リュースー)」は最大 のタブーの一つだ。当時の学生運動のリーダー、ウアルカイシ氏(46)が民主化運動の集会やデモに参加するため来日し、東京都内で産経新聞の取材に応じ た。同氏へのインタビューを詳報する。

 ■25年間、両親と会えないまま

 《ウアルカイシ氏は天安門事件後、中国当局から反革命宣伝扇動罪で指名手配され、香港に亡命。現在は台湾で生活している。“世界最大の専制国家への挑戦者”を自任する同氏に、事件後の四半世紀を振り返ってもらった》

 --あなたにとって、この25年間はどのような日々だったのか

 「非常に長い時間だった。私個人としてもそうだし、事件で子を亡くした親の会『天安門の母』メンバーにとっても長い日々だったに違いない。彼女らは毎 日、愛する子供たちが平穏を得られる日を、指折り数えながら待っている。国家的な視野でみても、いまだに共産党は下野せず中国の執政党であり続けている」

 《天安門事件の犠牲者遺族や民主活動家らは、犠牲者の名誉回復を求め続けているが、中国政府は当時の民主化運動を「政治風波(騒ぎ)」と位置付け、再評価を拒否している》

 「私の父母は(中国・新疆ウイグル自治区の)ウルムチで暮らしている。共産党は両親が国外に出ることも禁じており、私は25年間、自分の父母と会うことができない」

 《ウアルカイシ氏はこれまで、中国側に何度か“出頭”を試みた。2009年に中国特別行政区マカオで入境を拒否され、12年には米ワシントンの中国大使 館に出頭したものの、大使館側は対応を拒否。中国側は知名度の高い反体制活動家を国内から排除するため、事実上の追放処分としている》

 ■現代の若者も自由を渇望

 --習近平体制は天安門事件の再評価を行わず、逆に言論統制を強めている

 「共産党天安門事件を人々の記憶や歴史から抹殺しようとしてきたが、私は、彼らがその努力をすでに放棄したと感じている。中国において彼らは完全に情 報と出版をコントロールしており、天安門事件民主化運動に関する用語が現在、公の場で出てくることはない。しかし自ら事件を経験した人たちや、中国の知 識人たち、また共産党体制の内部にいる人間も、事件を記憶しているのだ。共産党はただ、この話題が人目につかないようにしているだけだ」

 --当時と違って、現在の中国の若者の多くは、民主化や政治参加などに興味がないように見えるが、これは表面上の現象か

 「それは実際その通りだ。政治参加ということに関して責任感を持っていたわれわれとは違う。しかし彼らは個人主義と自己表現の世代であり、自由を追求する大きなモチベーションがある。われわれの世代と彼ら若者世代は違うが、自由への渇望は同じだ」

 ■中国が世界に従うか、世界が横暴なルールに屈するか

 --天安門事件が起きた1989年以降、中国は経済大国となり、国際環境も変化した

 「今日の世界経済は中国を必要としている。これは事実だ。中国の巨大な市場の開放と私有財産を認める流れは、大きな経済のエネルギーを解き放ち、中国は 世界経済の動力となった。世界は中国を必要としているが、ただし、中国も世界を必要としている。中国と世界は共通のゲームのルールに従う必要がある。中国 政府は専制国家であり、そのルールは横暴で筋の通らないものだ。自国の国民に対して銃を撃ち、世界に対しても道理をわきまえない政府なのだ。中国が世界の ルールに従うのか、世界が中国の横暴なルールに屈するのか。ここが重要な問題だ」

 --中国では政府がウイグル族による「テロ」と断定する暴力事件が相次ぎ、ウイグル族の間で抑圧的な政策に反発が強まっている

 「中国の民主化運動は、絶えず後に続く者が出てきている。この運動は過去二十数年間、ずっと抑圧を受けながらも、困難にめげずに邁進してきた。なぜなら われわれは共産党が下野し、中国が民主化されることに大きな希望を持っているからだ。最も苦難に満ちた時でも、この希望が消えたことはなかった」

 「しかし、ウイグル人チベット人と同様に、民族の未来に絶望している。文化や伝統などを維持できないと考えている。チベット人が130回以上も焼身自 殺を図ったのは、彼らの絶望の証しだ。われわれウイグル人チベット人と同様に絶望している。もし、近年発生している暴力事件がウイグル人による『テロ』 であるなら、そこには一つの民族が絶望に直面しているという背景がある。これは共産党が宣伝しているような、外部の勢力に影響を受けた極端な宗教思想とい うものではない。ウイグル人が行っているのは反植民地主義闘争だ」

 ■民族問題の解決には民主化が第一歩

 --もし中国で民主化が実現すれば、こうした民族問題は解決されるのか

 「一般的にウイグル人民主化を期待してはいない。なぜなら多くのウイグル人にとって、独立こそが唯一の問題解決の道と考えているからだ。しかし私は民 主活動家としてこう理解している。ウイグル人が独立への道を歩むにせよ、民族自決権が必要になる。そして民族自決権は民主制度からもたらされる。また、も しウイグル人が将来独立したとしても、依然として漢族との和解という問題が残る。民主化によって得られる言論の自由が、ウイグルと漢族の両民族の和解の基 礎となるのだ。だから人権の保障にしても、民族文化の保護にしても、あるいは地域の安定にしても、ウイグル人の問題の解決には民主化が必須の第一歩なの だ」

 《現在78歳の父親は著名な翻訳家で、ウアルカイシ氏は北京で出生した。ウイグル文化に関して父親から受けた薫陶の影響は大きいという》

 「私は北京生まれだが、私のウイグル語の水準はウルムチで育ったウイグル族より高いと思う。家庭内ではいつもウイグル語で会話していたし、生活習慣もウイグルのものだ。私はウイグル文化の人間だ」

 --あなたの父母は、現在のあなたの状況をどう感じているのか

 「ひどく苦しんでいる。二十数年間、自分の子供に会えない状況が続いているのだ。ただ両親とはいつも電話などで話をしている。彼らは私が当時行ったことを非常に理解してくれているし、誇りに感じてくれている」

 ■日本は誤ったシグナルを中国に出している

 --民主活動家として今後、日本にどのようなことを期待するか

 「まず民主活動家は自らの責任を明確に理解しておかなければいけない。(ノーベル平和賞受賞者の)劉暁波は私の先生だが、彼は身をもって範を示した。体制への反対者として、恐れず勇敢に、この歴史段階において自らの責任を果たしたのだ」

 「特に日本のようなアジアの民主国家は、中国共産党と直接対話することが可能であり、より大きな責任がある。しかしながら、過去、日本が中国に対して とった立場は、われわれを非常に失望させた。遠慮なく言わせてもらうと、自由と民主という普遍的価値への裏切りだったと認識している。過去二十数年間、日 本政府は中国との交渉においてほとんど人権問題を提起してこなかった。日本は中国の人権状況を気にかけておらず、関心があるのは経済や貿易だけだという 誤ったシグナルを出している」

 「現在、中日関係は緊張しているが、主な責任は当然、道理をわきまえない側(中国)にある。中国は専制政府であり、私個人が中国に対して道理を説くこと はできるが、それほどの効果は期待できない。しかし日本は民主国家であり、日本政府には大きな期待がかかっている。中日関係は、たんなる両民族間の関係で はなく、民主国家と専制共産国家の関係だ。もし普遍的価値を持つ国と専制独裁国家の間で衝突が起きれば、日本は当然有利な側にいる」

 ■生き残りとしての罪悪感

 --天安門事件当時の様子を今でも思い出すことはあるのか

 「いつもそうだ。私は大虐殺事件の生き残りだ。この生き残りとしての罪悪感はずっと私の中にあり、おそらく一生消えないだろう。いつの日か、犠牲者たち の理想が、われわれの努力によって実現する日がくるという希望が、私にとっての唯一の救いだ。私は、かつてわれわれを支持してくれた日本の人々に対して、 引き続き支援を呼びかけたい」(西見由章)