「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成27年(2015)8月19日(水曜日)
通算第4631号
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米国に逃亡した令完成は中国政界を震撼させる機密情報の爆弾を保持 中国は百名ちかい秘密工作員を派遣し、米国内で「無許可捜査」をしていた
*****************************ニューヨークタイムズが報じた(8月16日)。
中国が百名ちかい秘密工作員を米国委派遣し、米国内で「無許可捜査」をしている、と。
中国は米国で雲隠れしている令完成の隠れ家を暴き、拉致するなどして中国へ連れ帰る特殊工作のために中央紀律委、公安部、検察などからなる百名近いチームを密かに米国へ派遣し、無許可捜査をしていると在米華字紙「博訊新聞」が報じた内容の追跡記事だが、国務省のカーリー報道官が「不快感」を表明したことにより、動かぬ事実として表沙汰となった。
令完成は失脚した胡錦涛の右腕、令計画(元中央弁事処トップ)の末弟。
かつて薄煕来(元重慶特別市党書記)の右腕だった王立軍(重慶市公安局長、副市長)が、いくたの証拠書類、ヴィデオ、録音テープなどとともに四川省成都の米国領事館へ駆け込んで政治庇護を求めた事件が起きた。
これによって薄煕来の犯罪、とりわけ夫人の英国人殺害事件が明るみに出て薄煕来は失脚した。
そればかりか、以後の周永康一派への取り調べと失脚に繋がるのである。
こんかいの令完成の米国逃亡に対して、中国がこれほどの執念をもって秘密工作を米国内で展開していたことは、冷戦時代ならともかく、米中関係の複雑な状況下においては考えられない。
台湾は蒋介石独裁時代にヤクザのヒットマンを送り込んで在米中国人作家を殺害したことがあった。
ソ連は秘密工作員を外国へ送り込んで裏切りスパイや政敵を粛清することがあったが、中国は昔ながらの時代感覚で秘密工作を外国でも展開するという並外れた、独裁的な神経を持ち合わせていることになる。
いずれにしても令完成が持ち出した2700件の機密は、何をこれからの中国政界にもたらすか。
また令完成の米国亡命が、「中国版スノーデン事件」のような性格の外交機密などを含むとすれば、裨益する米国と、その後の米中関係がいかなる展開になるか。まさに興味津々である。