米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設計画をめぐり、石井啓一国土交通相は26日、前沖縄県知事による同県名護市辺野古の埋め立て承認を取り消した同県の翁長雄志(たけし)知事による処分の効力を、いったん止める方針を固めた。石井氏は防衛省が行政不服審査法に基づく不服審査請求と同時に行った執行停止の申し立てを、27日に承認する。
執行停止が認められれば、不服審査の裁決を待たずに、現在停止しているボーリング調査の再開が可能となる。政府は11月中にも、辺野古で埋め立ての本体工事に着手する構えだ。
翁長氏は今月13日、「今後も辺野古に新基地は造らせないという公約の実現に向け、全力で取り組む」として、辺野古の埋め立て承認を取り消した。取り消しの理由について、同県は「普天間飛行場が他の都道府県に移転したとしても、沖縄には依然として米軍基地や自衛隊基地があり、抑止力が許容できない程度まで低下することはない」などとする通知書を、沖縄防衛局に提出した。
国交省 辺野古の承認取り消しを“効力停止”へ
沖縄県の翁長知事は13日、普天間基地移設のための辺野古の埋め立て承認を取り消しました。これに対し、沖縄防衛局は行政不服審査法に基づき、国土交通省に対して承認取り消しの無効と効力の一時停止を求めていました。国土交通省は、沖縄防衛局の主張を認め、承認取り消しの効力を停止する方針を固めました。埋め立て承認の無効を求める審査は続きますが、今後、沖縄防衛局は、辺野古沖での作業を再開することができます。
辺野古埋め立て承認取り消しは違法 住民が県提訴
- 2015/10/20 13:26 日経新聞
【東京】石井啓一国土交通相は26日、名護市辺野古の新基地建設をめぐり辺野古沿岸部の埋め立て承認を取り消した翁長雄志知事による処分の効力を停止する方針を固めた。27日にも石井国交相が公表するとみられる。沖縄防衛局が行政不服審査法に基づく執行停止を申し立てることへの適格性を認め、作業中断は普天間飛行場の危険性除去が遅れるとする防衛局の主張を妥当と判断した。
執行停止を受け、県が強く反発するのは必至。県は国の第三者機関「国地方係争処理委員会」へ不服審査を申し出る方針だ。
一方、効力の停止を受け、防衛局は中断しているボーリング調査などの作業を早急に再開させる構えで、11月にも本体工事に着手する考えだ。
国交相は、防衛局が執行停止と同時に申し立てていた承認取り消しを無効とする審査請求の審査を継続する。今年3月、防衛局が農林水産相へ請求した翁長氏による作業停止指示への審査請求の裁決もいまだ出ておらず、結論には時間を要するとみられる。
翁長氏は13日、仲井真弘多前知事による埋め立て承認には瑕疵(かし)があるとして取り消した。防衛局は翌14日に審査請求と執行停止を請求。県は「防衛局が同じ内閣の一員である国交相に審査請求したのは不当」と訴えていた。