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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成28年(2016)3月1日(火曜日)弐
通算第4835号
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中国人民解放軍の南部戦区司令が初会見
****************************************2月27日からアセアン外相会議がラオスの首都ビエンチャンで開催され、議長国ラオスにしては珍しく中国の軍事的脅威を示唆する議長声明を読み上げた。
「南シナ海での航行と航空の自由の重要性について確認する」という文言がはいった。
しかし声明で中国を名指ししているのではなく、この表現では一般論でしかない。親中派ラオスとしては、加盟国全般に配慮した、政治的打算の産物といえるが、そもそもラオスへの経済投資でトップは中国(53億9600万ドル。89年~2014年の累計、ジェトロ調べ。以下同じ)。二位は隣国タイの44億5500万ドル。三位がベトナムで、33億9300万ドル。四位以下はぐっと金額がおちて韓国(7・5億)、フランス(4・9億ドル)。そして六位が日本で4億3800万ドルである。
これだけをみても、ラオスがいかに中国に経済を依存しているかがわかる。
このアセアン外相会議の前に、米国で動きがあった。
まず2月23日にケリー国務長官が王毅外相と米中外相会談を行ったが、対北朝鮮制裁で歩み寄りがみられたものの、南シナ海の中国軍事力展開に関して、中国は「あそこは中国領土、とやかく言われる筋合いはない」と強行な態度を崩さなかった。
これをうけて2月24日、下院軍事委員会公聴会で証言したハリー・ハリス米太平洋艦隊司令官は「南シナ海の中国軍の建築は地域の安全航行を脅かす軍事的脅威である」と発言した。
南シナ海の軍事拠点化を抑止するために米軍は空母弐隻を配備し、最新鋭のズムワルト級ステルス潜水艦の前方展開などを検討しているとした。
豪政府も25日に発表した国防白書で、潜水艦を12隻調達する方針が明らかにされたほか、日本は海上自衛隊艦船をフィリピンに貸与する。
これらの動きを牽制するかのように中国人民解放軍の新設部隊、「南部戦区」の王教成司令員は、『人民日報』(2月27日)の初めての会見に応じ、言い放った。
「南シナ海の中国の主権をいかなる脅威からも守り抜く能力があり、あらゆる挑発にも対応し、主権を守護する準備は出来ている」。
『海域の安全を確保し、海上の防衛を守る』という王教成は、前の瀋陽軍区からの転任、ここは腕の見せ所、王毅外相が強硬な意見をはき続けるのも、国際社会の反応が硬直化しようが、しまいが、北京中央にむけてのごますり発言であり、王司令員の発言も同様である。
王はこう付け足している。「軍の党中央への忠誠は絶対であり、情報戦争を勝ち抜き、あらゆるシナリオを想定し、それに対応できる作戦を準備した」
軍システムの改変、とくに七大軍区から五大戦区への改変についても王は続けて発言している。
「前のシステムでは人民解放軍が戦争に勝つためには整合性という文脈で、システム上の障害があった。今度の改変により、軍の統合的な作戦の推進がしやすくなった」
こうした中国軍の硬直姿勢、いつまで持続できるか。或いは対外矛盾と体内矛盾をすり替えるため戦争の打って出るか。
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