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20兆米ドルに及ぶ習近平政権の「隠し資産」とは?


こうなれば 戦前を通じて 支那人とはこんなもの、
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チャイナ・ウォッチャーの視点

20兆米ドルに及ぶ習近平政権の「隠し資産」とは?

2018/12/27
樋泉克夫 (愛知県立大学名誉教授)

写真:新華社/アフロ
習近平政権は、貿易・ハイテク・通信問題を主戦場とする米中覇権争いに世界各国の華僑華人社会に扶植した組織を動員し、トランプ政権に対し搦め手で揺さ振りを掛けようとしているようだ。
12月22日、アフリカのソマリアにある中国和平統一促進会や東部アフリカ中国和平統一促進会などが全世界の華僑華人社会に向けて、「覇権・迫害・ニセ人権に反対し、カナダ政府に対し孟晩舟女士の無条件釈放を要求する共同宣言」への署名を呼びかけた。「孟晩舟女士」とは、もちろん米中貿易・ハイテク戦争に絡んで12月初めにカナダで身柄を拘束された華為(ホワウエイ)の孟晩舟CFOである。
「米中覇権争い」に対する習近平の本気度
「人権擁護を謳うカナダによる不当逮捕は、中国公民の合法で正当な権利を不当に侵す極めて卑劣な行為である。本件は通常の司法事案ではなく政治的陰謀であり、中国の企業と公民に対する政治的迫害である」と強い調子で書き出された「共同宣言」にはソマリアスーダンタンザニアザンビアアンゴラジンバブエ赤道ギニア、ナビビア、レソト南スーダンコンゴケニアナミビアルアンダなどアフリカ諸国を中心に、アラブ首長国連邦、エジプト、デンマークスウェーデンブルガリアルーマニアパナマ、ロシア、アメリカ、アルゼンチン、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、タイ、マレーシア、インドネシア、韓国などの中国和平統一促進会や関係者が署名している。(タイの華字紙『中華日報』電子版は、12月22日から23日にかけての24時間ほどで86を数える団体と個人が署名したと伝える)。
日本においては耳慣れない名前の団体だが、中国和平統一促進会は1988年に鄧小平の提唱によって組織され、台湾との統一促進を目指す非共産党人士を中心とした民間組織とされる。当初は台湾独立反対を目的にしていたが、現在ではチベットウイグルの独立反対も掲げ4952万100人(2013年9月16日現在)を数える全世界の華僑華人社会に根を張り影響を拡大している。

これまで華僑にせよ華人にせよ、漢族をルーツとする海外在住者と看做されてきた。中国では「華僑」を国外在住の中国公民(=国籍保有者)、「華人」あるいは「外籍華人」を元中国公民の外国国籍保持者及びその後裔(=外国人)と規定してきた。だが、『華僑華人与西南辺疆社会穏定』(石維有・張堅社会科学文献出版社2015年9月)が示すところでは、最近では中国の領内から海外に移住した少数民族であっても――極端にいうなら「逃亡藏人(逃亡チベット人)」ですら華僑華人と看做そうとする動きが見られる。

これを敷衍するなら、海外で反中・独立活動を展開するチベットウイグルの出身者も華僑華人に組み込まれることになり、台湾・チベットウイグル独立運動は国内問題として取り扱うことができる。そこで一連の独立運動の国際問題化を阻止するリクツが成り立つというのが、おそらく中国の狙いだろう。
現在、中国和平統一促進会トップを占める汪洋は習近平政権中枢(党中央政治局委員=チャイナ・セブン)の一員であり、全国人民政治協商会議全国委員会主席(参議院議長に相当)を務める。ということは、中国和平統一促進会は非共産党人士による民間組織というより、やはり共産党政権傘下の統一戦線工作機関と考えて間違いはないはずだ。
今回の署名運動は共産党伝統の統一戦線工作の一環であり、カナダ政府に対する華僑華人社会を背景にしての揺さぶりと考えられる。だが、この程度の抗議活動でカナダ政府が孟晩舟CFOの釈放に応ずるわけも、ましてやトランプ米大統領が中国の巨大先端産業への追及の手を緩めるはずもないだろう。であるなら今回のカナダ政府糾弾を求めた署名活動は米中覇権争いに対する習近平政権の“本気度”を示し、世界各国の4952万100人の糾合を狙っているようにも思える。
バンコクで行われた前代未聞の「指導工作」
中国和平統一促進会と同じような性格を持つ組織に、「僑聯」の略称で知られる中華全国帰国華僑聯合会がある。共に華僑華人を活動対象とするが、民間組織を掲げている前者に対し、全国人民政治協商会議を構成するだけに後者は公的機関の権能を持つ。
僑聯の前身は共産党が根拠地としていた延安で組織された延安華僑救国聯合会で、当時は1000万人を数えられていた在外華僑を抗日戦争に取り込むことを狙ったものだ。抗日戦争への参戦を目指し帰国した若者を中心に組織された華僑聯合会などを基礎に、1940年9月にはシンガポール、イギリス、フランス、アメリカ、インドネシアなどからの帰国者が合流し延安華僑救国聯合会が結成され、主として海外における抗日闘争を展開する任務を帯びていた。
その後、1956年になって関連団体を束ねる形で僑聯が組織され、帰僑(帰国した華僑)や僑眷(海外華人社会に親族を持つ者)を介し、共産党・政府と在外在住者とを結ぶ役割を担うことになる。
「無数の帰僑・僑眷と在外同胞は中国の特色ある社会主義建設における貴重な資源」であり、「中華民族の偉大な復興を実現する重要な力」であると位置づけ、「中華民族の偉大な復興という夢を実現させるために内外の中華民族の一層の共同奮闘を必要としている」と訴える習近平政権は、国内に住む帰僑や僑眷と海外の華僑華人社会との結びつきを強化し、僑聯を「中国の夢」の実現するために活用する――いわば僑聯は多くの華僑華人を糾合し、彼らを「愛国同胞」に仕立て上げ、一帯一路に組み込む――ことを狙っているといえるだろう。
2017年6月、日本の東北大学に留学し博士号を取得した万立駿(1957年生まれ/大連出身)が僑聯主席に就任した。僑聯党書記を兼任することから、彼は習近平政権における華僑華人社会対策の現場トップに位置することになる。
そんな万立駿が12月6日、バンコクで活動を続ける泰国和平統一促進会総会を訪れ、会長以下の会員を前に「中華民族の核心的利益」を実現させるために奮闘するよう「指導工作」を行った。これまで30年以上に亘って華僑華人社会の動きを見続けてきたが、僑聯トップが海外に出向き、ここまで明確な形で「指導工作」を行った例は聞いたことがない。ということは今回の「指導工作」を機に、僑聯によるテコ入れが本格化するとも考えられる。
「在外華僑華人」は中国ソフトパワー戦略の柱

習近平政権の基盤が確立される前後の2015年7月、『華僑華人在中国軟実力建設中的作用研究RESERCH ON EFFECTS OF OVERSEAS CHINESE IN CHINESE SOFTPOWERBUILDING』(経済科学出版社)が、在外華僑華人と「中華民族の偉大な発展」の関係を国家レベルで研究した成果として出版された。

「改革開放以来30有余年、中国の経済と社会は驚天動地の変化を遂げ、貧しく遅れた国家から瞠目すべき現代的大国へと発展し、経済力は世界第2位に躍り出た。財政収入は100兆元の大台を突破し、総合国力は明らかに強化され、社会の調和は進み、国際的な影響力と発言権は飛躍的に高まった。だが、中国が発展するほどに、西側の大国でも『中国脅威論』『中国責任論』などの不協和音が愈々撒き散らされようになった。このような環境において、中国ではソフトパワーの早期確立が論議されねばならなくなった」と冒頭に記し、世界各国に根を張っている在外華僑華人を、世界覇権を目指す中国にとってのソフトパワー戦略の有力な柱として位置づけた。
また在外華僑華人に「中華優秀文化の伝え手」、「中国発展モデルの実践者」、「中国とグローバル経済とを結ぶ要」、「中国伝統文化の創新者」という多面的な働きを求め、「中華民族への帰属意識アイデンティティーは華僑華人を団結させる“磁石”」であると捉えた後、「中華民族への帰属意識こそが、彼らと血の繋がる大地への奉仕と祖先への感謝を促す原動力である」と説く。
これを要するに、習近平政権は在外華人を中国と一体化させることで、同政権が目指す世界戦略を海外から積極的に支援・補完させようというのだろう。
この本では在外居住者を華僑(中国国籍保有者)、華人(中国以外の国籍保有者)、大陸新移民(対外開放後の移住者)と分けている。たとえばアフリカ21カ国を見ると、最多の南アフリカには16万人の華僑と14万人の華人が住み、そのうち10万人が大陸新移民である。最少のトーゴでは華僑が123人、華人が7人、そのうちの大陸新移民が125人を占める。伝統的な相互扶助組織の同郷会や同業会の活動が認められるばかりでなく、南アフリカを含め各国で圧倒的多数を占める大陸新移民によって中国和平統一促進会が続々と組織化されていることが判る。
20兆米ドルに及ぶ習近平政権の「隠し資産」とは?
冒頭に示したカナダ政府に対する抗議の署名活動がソマリアの中国和平統一促進会などアフリカを中心に進められているのも、なにやら納得ができそうだ。ここからも習近平政権の世界戦略に占めるアフリカの重要性が浮かんでくるようだ。
中国から「中国とグローバル経済とを結ぶ要」と見做される4952万100人の経済力に関し、この本では陳雲・青華大学教授の2007年段階における分析を援用して彼らの資本総額は「既に2万億美元に達している」と試算する。「2万億美元」、つまり20兆米ドルという数字が現状を的確に反映しているか判断する術はないものの、これが中国の国家財政の統計には計上されないことはもちろんだが、習近平政権にとっては“隠し資産”といえないこともないだろう。
日中戦争から国共内戦までの長い戦乱期を経て国庫が底を尽いていた建国当初、経済社会建設に多大な働きをしたのは「僑匯」と呼ばれる海外在住者からの送金だった。これが建国期の苦しい国家財政を救った歴史を振り返るなら、「2万億美元」は“21世紀の僑匯”ともいえる。
カナダ政府批判の署名活動、アフリカを軸に世界各地に展開する中国和平統一促進会、それを北京から「指導工作」する僑聯、チベットウイグル出身者を含め国外在住の少数民族までをも華僑華人に組み込んでしまおうとする動き――中国が備えた独自の“戦略資源”を、今後、習近平政権はどのように使おうとするのか。米中戦争の行方に対する判断を日本的常識で一刀両断に下すことは、やはり危険過ぎると言わざるをえない。