「中国による弾圧、無視しないで」ウイグル族の叫び、北京五輪目前に
北京冬季五輪・パラリンピックの開幕を目前に控え、深刻な人権侵害が懸念される中国新疆ウイグル自治区をめぐり、ウイグル族らが実情に目を向けて欲しいと叫んでいる。多くの亡命者がいるトルコでは、習近平(シーチンピン)国家主席らに「司法の裁き」を求める動きも出ている。 【写真】行方不明になっている家族らについて説明する、ウイグル族のヌール・ムハンマドさん=2022年1月21日、イスタンブール、高野裕介撮影 「北京五輪はボイコットされるべきだ!」「中国よ、ジェノサイド(集団殺害)をやめろ! 収容所を閉じろ!」 1月23日午前、トルコの最大都市イスタンブールで、100人以上のウイグル族らが集まった。手元の気温計が1度を指す寒さのなか、中国による同胞への弾圧を無視したまま五輪を開催すべきでないと、声を上げた。 6年前からトルコに住み、ウイグル自治区に残した両親らと連絡が取れないというアブドゥルセミ・ホテンさん(31)は、「私の故郷で起きていることを隠すために中国は五輪を開催する。絶対に許せない」と声を震わせた。主催者によると、開幕日の2月4日にも中国総領事館近くでデモを予定するなど、抗議活動を続けるという。 米国のバイデン政権は、少数民族のウイグル族が弾圧されているとして、北京五輪に政府当局者を派遣しない「外交ボイコット」を決めている。これにカナダやオーストラリア、英国も同調した。フランスは「スポーツは政治的干渉から最大限守られなければならない」としたが、ウイグル族の境遇は「スポーツの祭典」に暗い影を落としている。 トルコはウイグル族の「第2の故郷」とも呼ばれ、中国共産党が支配を強めた1950年ごろから亡命者の受け皿となってきた。市民権を取得する人もおり、イスタンブールにはウイグル料理の店やコミュニティーもある。今では数万人規模がトルコに暮らすとされ、世論もトルコ系民族のウイグル族に同情的だ。 五輪開幕を1カ月後に控えた1月4日には、トルコに暮らす19人のウイグル族らが、「ジェノサイド」などの人権侵害に関与したとして、習国家主席や治安当局者ら112人をトルコ検察に刑事告発した。