沖縄戦の沈没米軍艦でポーズ写真 「冒涜」、ダイビング店謝罪
旧日本軍機の特攻を受け沖縄県沖の海底に沈む米軍掃海艦「エモンズ」の砲身に、日本のダイビング客らが座ってポーズを取る写真が6月下旬にインターネット上に公開され、同艦の元乗組員らでつくる米団体メンバーが、客を案内した那覇市のダイビング店に「戦死者への冒涜だ」と抗議していたことが30日、関係者への取材で分かった。店側は謝罪し、公開した写真を削除。再発防止を約束したという。 同艦の発見当初から調査や慰霊に携わる県内のダイビングインストラクターの男性は、「日米の犠牲者が眠る船。単なる観光スポットでないと知ってほしい」と訴える。
3万人超の健康観察…連日深夜まで「限界に近い」 感染爆発の沖縄、コロナ対策本部のいま
入院・宿泊調整などの業務をこなす県新型コロナウイルス対策本部の職員ら=29日午前、県庁(大城直也撮影)
新型コロナウイルスの感染急拡大で医療や介護現場が逼迫(ひっぱく)している現状を多くの県民に伝えるため、沖縄県対策本部は29日、那覇市の県庁内にある感染症総務課、感染症医療確保課、ワクチン検査・推進課の業務を報道陣に公開した。陽性者の入院調整や、3万人を超える自宅療養者の健康観察など多忙を極めている。約370人の職員が対応に当たる。新規感染者数の増加に比例し業務も膨大となり、連日深夜まで残業が続いているという。 【グラフで見る】かつてない増え方…感染爆発の沖縄
入院調整
県対策本部内の大型スクリーンには、コロナ患者を受け入れる重点医療機関の入院患者数や入院調整枠が表示されている。7月中旬からは入院調整枠も数人程度の空きしかない日々が続く。 入院調整を担う医療コーディネーターの医師には、病院や福祉施設から患者の転院要請が入るが、対応できる医療機関はなかなか見つからない。そのため、コロナ入院患者の対応は県全域の総力戦の様相だ。
自宅療養者の管理
県庁地下1階にある健康管理センターでは看護師や県庁職員など約140人体制で患者に電話などで健康状態を確認する。7月は新規感染者が4、5千人の日が続く。連日深夜まで作業が続いており、昼休憩も十分に取れないという。 県感染症医療確保課患者管理班の本永誠治班長は「今の人員体制では限界に近い。(他部署からの)増員も厳しい」と語った。
訪問看護の派遣調整
重点医療機関が診療制限を続けている影響で、高齢者福祉施設などで感染した利用者は施設内療養を余儀なくされている。感染症医療確保課が設置したホワイトボードには、訪問看護が必要な患者の氏名や対応施設が列記されていた。患者数の増加に対応が追い付かず、担当者は「受診が必要な高齢者などに訪問看護を割り当てられないほど、厳しい状態だ」と語った。
自己責任の沖縄旅行…コロナ感染したら島から出られない!
感染者数は人口比で全国一
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沖縄県の新型コロナ感染者数は7月23日にも5000人超を確認、過去最多を更新し続けている。23日昼現在の同県の病床使用率は約77%で、このままだと医療崩壊が起きかねない。 【写真】安室奈美恵、MAX、SPEEDの生みの親…沖縄アクターズスクール校長復活 同県の直近1週間の新規感染者数を人口100万人当たりに換算すると、1万8000人超(7月22日現在)。これは東京都を超える数字であり、実は今年4月以降、全国でも突出している多さなのだ。 感染拡大を受けて、沖縄県は新たな対処方針を決定した。7月22日からは沖縄県が認定した店でも「4人以下、2時間以内」の会食制限が再び設けられることになった。 「感染状況をみながら県独自の方針に基づいて対策をしていきます。今後、国からの緊急事態宣言やまん延防止等重点措置などが出て要請があれば、それに基づいた感染症対策を一層強化していきます」(沖縄県の担当者) 今回の方針はこれまでの対策と異なる点がある。これまでのように飲食店ばかりに時短や営業自粛を求めるのではなく、イベントや店舗などで『密』を避けるようにシフトして呼び掛けているという。 「現在の感染経路は飲食店に限らず人が多い場所。そのため、イベントの開催時期の変更や会場でのアルコール飲料提供の制限などをお願いしています」(前同) 離島の沖縄県。県内で感染爆発が起きれば最悪の事態も招きかねない――。 「これからの季節、熱中症やビーチでのトラブルなどで搬送される人も増えてきます。そのうえ新型コロナの感染が増えれば、医療機関がひっ迫します。病院スタッフや救急隊の中でクラスターが起きてしまえば、搬送先も限られていきます。 救急車を呼んでも来ない、足りない、ということになれば、沖縄県民の生活には多大な影響を及ぼすのです」
それでも観光客はやってくる
夏休みに入り、沖縄県は観光シーズンの真っただ中だ。 現在、県をまたぐ移動制限が出ていないことから、全国各地から観光客が続々と来沖している。週末ともなれば国際通りは人であふれ、県内のあちらこちらをレンタカーが走り回っている。 もとより沖縄県では新型コロナ禍で低迷した地元経済を立て直すためにも、今シーズンの観光客の存在は欠かせない。 観光客の中には、東京・大阪での窮屈なマスク生活を「解禁」し、南国気分を満喫している人もいるようだ。しかし、旅行で沖縄を訪れる観光客にも感染と発症のリスクが伴っていることを忘れてはいけない。 前出の沖縄県の担当者が説明する。 「沖縄旅行中に新型コロナを発症した場合、現在は県内にある療養施設での宿泊療養をお願いしております」 発症したら飛行機には乗れない。島から出られなくなるため、症状が改善するまでの間は当然、自宅に帰ることができない。 「今後感染者が増え、旅行中に発症する人が増えて施設が満杯になってしまった場合、観光客はその時泊まっていた滞在先で療養してもらうことになります。その際の費用は自己負担になります」 持病の薬など旅行日程分しか持ってこなかった場合は、その確保も難しくなるだろう。 さらに規模の小さな離島は、医療体制が脆弱。観光客だけでなく、島民への影響も計り知れないのだ。
沖縄県民の危機感
沖縄県の感染拡大の原因は、当然観光客ばかりではない。 「県民の問題だ」と県内在住の女性(50代)は憤る。 「危機感の持ち方は家庭によってさまざま。コロナになってから内地(沖縄県外)に行った子どもたちやきょうだいを帰省させない家もあれば、友だちでも誰でも知り合いが帰ってくると再会を祝してすぐに飲みに行ってしまう人もいます」 そこには沖縄独自の事情も絡み合う。前出の女性が説明する。 「模合(もあい。気の合う仲間たちが毎月、決まった金額を集めてそれを順番にメンバーの誰かがもらう集まり。食事や酒の席とともに行われることも多い)や親戚づきあいです。 私の知り合いの中にも、普段、感染症対策は人一倍気にしているのに、模合や高齢の親戚には会いに行く人がいます……。それはいいのか、と尋ねると、“みんな知り合いだから大丈夫さー”って笑うんです。そうした県民の危機感の乏しさも問題だと思います」 おおらかな県民性は、時としてマイナスに働くこともあるようだ。
ナンクルナイサーじゃすまされない
この女性が続ける。 「PCR検査を受けない人も多いと思いますよ。コロナに感染したお子さんを持つ知人は、濃厚接触者になったはずなのに、その子が回復したらすぐ仕事に復帰していました。検査したのか尋ねると”ちょっと喉が痛かったけど大丈夫”って言っていました。そういう問題じゃないと思ったのですが、これはもうナンクルナイサーじゃ済まされません」 前出の女性の知人のように、無症状や潜在的な感染者数はかなりいるみられている。 人口比当たりの人数でいえば東京よりも沖縄の感染者のほうが多いのに、気軽に訪れることができるため、沖縄のことを「東京24区」と呼ぶ人もいるとか。 沖縄県の担当者も頭を抱える。 「沖縄は全国的に見ても感染状況が悪い。これは県民一人ひとりの意識の問題でもあるんです。長引くコロナ禍、気持ちも緩んできてマスクなし、感染症対策もせずに過ごしている県民も増えています。 人が集まる場所は感染のリスクがあることをあらためて共有する必要があります。お盆やエイサーなど沖縄の文化に欠かせない行事もこの夏はありますが、対策はする必要があります」 コロナ禍3年目の夏を迎えたいま、感染症対策か観光対策か、それとも伝統文化か――沖縄のジレンマは続く。 マスク「解禁」&やりたい放題の観光客に、地元の人たちも実は激怒していた。後編記事「深夜の騒音に漂う異臭…身勝手観光客に沖縄県民がキレていた!」では、その実態をお伝えする。