全国初、10万人当たりの陽性者100人超、医療体制も逼迫
県の不適切対策に批判集中
ゴールデンウイークの連休を境に、沖縄県では新型コロナウイルスの陽性者が増え続けている。5月29日には新規感染者は過去最多となる335人を記録した。5月31日現在、直近1週間の人口10万人当たり新規感染者は124・83人で全国最多。100人の大台を超えたのは全国で沖縄県のみだ。
医療体制も逼迫(ひっぱく)し、自宅療養者が1100人を超えるなど、危機的な状況にある。また、10代、20代の青少年の感染が急拡大している。県は適切な対策を講じてきたのか、大型連休の前にやるべきことはあったのではないかと、各方面から疑念の声が噴出している。
政府は感染拡大地域などに対し、飲食店における酒類提供の停止を促してきたが、県は飲食業界の強い反発のため、緊急事態宣言が発令される5月23日まで停止しなかった。県飲食業組合の幹部は、「ほとんどの飲食店は時短要請を守っていて、クラスターは起きてない。守っていない店への指導を強化することが先だ」と不満を示した。
危機的状況も玉城デニー知事は基地・予算要請で2度上京
上京の予定について説明する玉城デニー知事=5月14日、沖縄県庁(豊田剛撮影)
玉城知事の言動にも批判が集まる。大型連休の期間に、県が同居家族以外との会食自粛を呼び掛ける中、玉城知事はツイッターで同居以外の家族も含めバーベキューをしていたと投稿し、批判を浴びた。その後の釈明会見でも、非を認めなかったことで、火に油を注ぐ形になった。
県議会は26日、新型コロナ対策として総額27億円超の本年度第7次補正予算を全会一致で可決した。ただ、採決時に玉城知事の姿はなかった。これに県政野党の自民党会派が反発し、議会は一時空転した。「いくら知事に出席する義務がないといっても県の医療体制は危機的状況にある。緊急事態宣言が発出されている中、知事が現場で陣頭指揮を執るのが筋だ」。野党県議の一人は憤った。
この日、玉城知事は在沖米軍の基地負担軽減の要請で上京していた。知事が5月に入って2度も上京したことについても、「タイミング的にどうかと言われれば…」と、与党県議の一人も擁護し切れない様子だった。18日から19日にかけては、沖縄振興関連の要請で上京した。沖縄県を緊急事態宣言の対象に追加するよう政府に要請することを決めた日だった。
緊急事態で知事のリーダーシップが期待できないとし、県政野党の自民、公明両会派と赤嶺昇議長は26日、県のコロナ対策本部長を玉城知事から謝花(じゃはな)喜一郎副知事に交代するよう要請した。赤嶺氏は玉城県政のコロナ対策について、「人災」「失政」という強い言葉で批判している。
自民党本部も県の対応を冷ややかに見ている。「県こそ独自の政策を取るべきだ。(中略)国の政策に頼るなんて、沖縄県民らしくない」。自民党の細田博之元官房長官は5月19日、党の沖縄振興調査会役員会でこう苦言を呈した。
観光客向けの広告にも批判、知事は強いリーダーシップを
三つの新聞に掲載された沖縄県の全面広告(豊田剛撮影)
さらに、県が今年3月25日、観光客向けに感染症対策を呼び掛けた上での来県を求める新聞広告を出したことも問題視されている。広告は読売新聞と朝日新聞、日本経済新聞にカラーで全面を使って掲載された。3紙合計2275万2千円を計上した。観光客が安心して旅するための取り組みを紹介する目的で、「新しいおもてなしの沖縄へ~笑顔でお迎えするために~」という大見出しで、文中では「沖縄は全国に先駆けて夏を迎えようとしており、季節の花々も皆様をお待ちしています」とある。まるで、県外の旅行者を積極的に誘致しているような文言だ。
沖縄県でまん延防止等重点措置の適用を検討されたのはそのわずか5日後だった。県議会2月定例会の冒頭では「こんな時期に税金の支出として適当か」「今の時期にやることか」など批判が噴出した。
緊急事態宣言が適用されてから1週間以上過ぎた現在も、新規感染者がピークを越える兆しがない。玉城知事は31日、記者会見で、「なお強い措置を皆さんにお願いしなければいけない可能性もある」と述べた。ただ、措置の具体的な内容については言及しなかった。感染拡大に歯止めをかけるには、知事の強いリーダーシップが必要だ。