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中国「臓器狩り」の実態 デービッド・マタス氏 生きた囚人から強制摘出 法輪功の次はウイグル人

中国「臓器狩り」の実態 デービッド・マタス氏

  早川 俊行  2022/10/28(金)

 Viewpoint

 

 

カナダの国際人権弁護士 デービッド・マタス氏

 中国当局が気功集団「法輪功」学習者や新疆ウイグル自治区ウイグル人に対して行う弾圧の中でも、とりわけ残虐性が高いのが強制的に臓器を摘出する「臓器狩り」だ。この問題を長年調査してきたカナダの国際人権弁護士デービッド・マタス氏がこのほど来日し、本紙のインタビューでその実態を語った。
(聞き手=早川俊行、村松澄恵)

 

生きた囚人から強制摘出
法輪功の次はウイグル人

 

中国で「臓器狩り」が行われるようになった経緯は。

カナダの国際人権弁護士 デービッド・マタス氏

 David Matas 1943年、カナダ生まれ。英オックスフォード大卒。2006年に故デービッド・キルガー氏と共に「中国における法輪功学習者を対象とした『臓器狩り』調査報告書」を発表。この調査が評価され、09年にドイツに本拠を置く国際人権協会(IGFM)から人権賞を受賞。10年にはノーベル平和賞候補に。

 

 

 中国政府による臓器の収奪は、1980年代に死刑判決を受けた囚人から臓器を調達することから始った。当初は死刑執行直後に臓器を摘出していたが、その後、臓器摘出による処刑へと変わった。これが最初のシステムだ。だが、90年代終わりにかけて幾つかの変化があった。

 一つ目は、死刑の減少だ。死刑を宣告する裁判所のレベルが上がったことで、死刑の数が減った。また中国政府は「死刑囚は罪滅ぼしで自発的に臓器を提供している」と主張していたが、外部から批判が出た。中国政府は最終的に死刑囚からの臓器摘出をやめると発表した。

 二つ目は、中国が社会主義から資本主義にシフトし、医療システムに政府の資金が来なくなったことだ。それにより病院は新たな収入源が必要になった。そこで臓器には中国だけでなく世界中から無限の需要があることに目を付けた。

 三つ目は、法輪功学習者の大量拘束だ。92年に発足した法輪功は当初、健康に役立つ体操として、共産党も奨励していた。だが、99年には学習者が党の推定で7000万人以上に増加し、当時6000万人だった共産党員を上回った。危険を感じた共産党法輪功を禁止したところ、大規模な抗議運動が起こり、それが大量拘束へとつながった。

 この三つの出来事が重なり、臓器を供給する新たなシステムが構築された。つまり、臓器の供給源が死刑囚から法輪功学習者に置き換わったのだ。共産党は学習者を人間以下の存在とみなして恣意(しい)的かつ無期限に拘束するため、臓器を大量に供給することが可能になった。

 当初は法輪功学習者は死刑囚の代替だったが、臓器は莫大(ばくだい)な利益をもたらすことが分かると、病院は新たな移植施設の建設など投資を開始した。これにより、臓器売買は中国で全く新しい産業になったのだ。

現在はウイグル人臓器狩りの標的になっている。

 2000年代前半は数十万人の法輪功学習者が拘束されていたため、臓器は無限にあるかのように思われた。だが、今は逮捕される学習者が少なくなり、臓器の供給源が大幅に減った。そこで17年からウイグル人の大量拘束が始まった。完全にではないが、実質的にウイグル人法輪功に代わる臓器の供給源となったのだ。

臓器を希望する患者は普通、適合するドナーが現れるのを待たなければならないが、中国では数週間または数日で見つかると聞く。

天津第一中央病院東方臓器移植センターの17階建て臓器移植病棟(中国臓器収奪リサーチセンターのウェブサイトより)

天津第一中央病院東方臓器移植センターの17階建て臓器移植病棟(中国臓器収奪リサーチセンターのウェブサイトより)

 中国では「患者がドナーを待つ」のではない。その逆だ。「ドナーが患者を待つ」のだ。もしあなたが中国で臓器移植を受けたければ、いつでも予約できる。それに合わせて血液型や組織型、臓器の大きさが一致する囚人が殺されるだけだ。

 囚人たちは既に血液や臓器の検査を受けさせられており、移植に必要なデータがリスト化されている。患者が到着すると、医師はリストに基づいて患者と囚人をマッチングする。

 患者に適合した臓器を持つ囚人の刑務所にはバンが送られる。囚人は薬漬けにされ、バンの中で臓器が摘出される。臓器は病院に運ばれて患者に移植される一方、遺体は刑務所に残され、火葬される。

 

将来は香港・台湾も標的に

 

これまでに臓器狩りはどのくらい行われたのか。

 われわれは個々の病院のウェブサイトや出版物、メディアの報道、病床数などを調べ、病院ごとに移植件数を推計した。その結果、年によって異なるが、年間6万~10万件の移植が行われていることが分かった。6万件から10万件へと次第に増えているのが実情だ。

 一人の囚人から心臓、肺、肝臓、腎臓、角膜と複数の臓器を摘出できるが、すべて使うことができるわけではない。このため、10万個の臓器は約3万人から摘出されたというのがわれわれの見積もりだ。

 移植件数は病院ごとの統計を足したものであり、単なる推測ではない。だが、移植された人数に関してはあくまで推測だ。

中国では臓器移植が産業になっているとのことだが、その規模は。

 われわれが調査を始めた当初は、臓器の価格表が仲介業者のウェブサイトなどに公開されていた。しかし、報告書でそれを引用するたびに消えていき、今はもう見つからない。だが、2006年の価格リストを基に、現在の移植件数やインフレ率で計算すると、おそらく100億㌦(約1兆5000億円)規模に上ると思われる。

海外からの移植希望者はどの国が多いか。

 われわれはさまざまな国に行き、中国の移植施設を訪れた人たちから話を聞いたが、日本、韓国、台湾が多い。台湾は禁止になったため、今は減った。中東やドイツも多い。米国やカナダはそれほど多くない。臓器移植に関するウェブサイトには、日本語や韓国語、アラビア語もある。

 日本から中国で臓器移植を受けた人の数を日本政府に質問しても、分からないと言うだろう。だが、その数は集計できる。移植を受けた人は皆、免疫拒絶反応を抑えるために免疫抑制剤が必要だからだ。台湾は海外での臓器移植を報告するシステムを構築したが、日本にはない。

この問題に対する国際社会の反応は。

 国連機関が懸念を表明したり、欧州議会が決議を採択したりするといった動きがある。だが、十分ではない。日本からは決議を採択するなどの動きは何もないようだ。

国際心肺移植学会が今年、中国から臓器移植に関する研究論文は受け付けないと発表したが。

 海外から影響を与えることができるのは政府だけではない。研究・教育機関もそうだ。中国の専門家たちは国際的な評価を気にしている。国際的な研究機関や学術誌はこの問題を見て見ぬふりをするのではなく、協力関係を利用して問題提起することが重要だ。同学会が行ったことは良い例であり、他の組織や学術誌も追随すべきだ。

法輪功学習者、ウイグル人の次に臓器狩りの標的になる可能性があるのは。

 人権侵害はウイルスのように拡散する。止めない限り、ウイルスは次から次へと人々を汚染する。現在の中国の医療システムは資金を維持するために、新たな臓器摘出のターゲット集団が必要となるだろう。

 次の大量虐殺のターゲットになる可能性が最も高いのは、すでに狙われているチベット人と地下教会のキリスト教徒だ。さらに、南モンゴル人や香港人のほか、中国が台湾を侵略・占領した場合は台湾人も標的になる可能性がある。特に台湾には法輪功学習者が数十万人いる。