中国政府がゼロコロナ政策を緩和して2週間が経過した。感染者数が急増し、病院も火葬場も多忙を極めていると中国国内の映像や目撃者らが伝えている。中国当局の通知によれば、緩和後に新型コロナ感染で死亡したのはわずか7人だという。「数千体の遺体が火葬されるのを待つ」との葬儀場の状況とは極めて対照的だ。専門家は、中国の死者の発表数は深刻に過小評価されていると指摘する。
国家衛生健康委員会の12月20日までの最新の感染情報によると、中国全体で感染者は3万7111人で、緩和政策後の累計死者数は7人と発表した。
中国人のネットユーザーは、ツイッターを通じて複数の中国国内の模様を捉えた動画を投稿した。病院の通路や床にさえ横たわる患者の様子や、診察待ちの人たちが外来受付に詰めかける様子、ある病院の遺体安置所とみられる床に、少なくとも50の遺体袋が置かれ、移送を待っているものもあった。
海外メディアの駐北京記者も現地の感染状況を報じている。英BBCの記者は、人口2000万人の北京だけで数万人が感染する恐れがあり、首都で最も整備された医療システムであっても、深刻に麻痺しているとツイートした。
中国では7日以降、大規模なPCR検査が行われなくなっており「完全な感染統計は把握できない」と国家衛生健康委員会も認めている。
緩和後の一桁の死者数と葬儀場に並ぶ長蛇の列のギャップに、中国国内外から死亡者数の正確さにを疑問視する声が絶えない。
20日、北京東部の火葬場の女性職員は、遺体焼却のための行列は来年1月まで続くとボイス・オブ・アメリカ(VOA)に語った。「コロナの遺体を受け入れているが、行列に並ばなければならず、列は12月末まで続く可能性もある」とし、待ち時間は10日以上だと述べた。この職員は具体的な処理数を明かすことを避けた。
ロイター通信やAFP通信などの報道によれば、ある北京の火葬場は最近24時間体制に変わり「オーバーワーク」であるという。1日の業務量は通常30〜40人の焼く処理をしているが「今回は少なく見積もっても毎日200(遺体の数)」と述べた。こうした情報から推計すれば、北京のひとつの火葬場は、少なくとも2000体以上を処理することが窺える。
国際基準と異なる… 「新型コロナによる死亡」
公式の死亡データを疑問視する世論が高まるなか、北京大学第一病院感染病科の王貴強主任は20日の記者会見で、新型コロナ死亡の判断基準について明らかにした。
王氏は、新型コロナウイルス感染でも死因が心筋梗塞など基礎疾患ならばコロナによる死亡に分類せず、呼吸不全または肺炎をそれと分類する方針だという。
これに対し、台湾の元衛生管理者で財団法人バイオテクノロジー開発センター理事長の塗醒哲氏は、基礎疾患の死亡例を除外しているならば、中国当局は国際基準と比較して少なくとも7割から8割は過小評価していると指摘した。
塗醒哲氏は米ニューヨーク州における2020年初期の統計を引用した。これによれば、新型コロナで死亡した1万5230人のうち1万1370人、つまり約75%が基礎疾患を持ち、単純なコロナによる死亡は99人(約0.7%)だったという。
ニューヨーク州のデータは流行初期の統計であり、現在のオミクロン株は比較的致死率も低いが、基礎疾患とコロナ感染症の死亡に関する参考には値すると述べた。例えば、台湾の場合も、今年5月末までのコロナによる死亡例のうち74%は基礎疾患の既往があるという。
中国の感染拡大と死者数の推計について、100万人に達するとの複数の予想が示している。 英科学誌「ネイチャー」は19日、感染が広がる中国の新型コロナによる死亡は、今後数カ月から来年末までの間に100万人前後と推計した。
中国系米国人の疫学者・丁亮(Eric Feigl-Ding)氏は、向こう3カ月で中国人口の60%が感染し、オミクロン株の致死率0.13%で推計すると、死者数は数百万人に達する可能性があると予想している。