「中国は最悪の人権侵害国」…米国務省、報告書発表 厳しい制裁措置も
米国務省は15日、世界の信教の自由に関する2022年版報告書を発表した。同省高官は記者会見で中国共産党は「世界で最悪の人権と信教の自由侵害国の一つ」と非難し、あらゆる制裁措置を視野に入れていると述べた。
国務省高官は中国共産党によるウイグル人やチベット仏教徒、カトリック教徒、法輪功学習者らへの人権弾圧は悪化の一途をたどっていると指摘。「弾圧に直面している中国の人々を救うため」金融制裁やビザ制限、同盟国やパートナー国と連携しつつ、あらゆる措置を講じると強調した。
報告書は、中国共産党が国家の利益を脅かすと見なす信仰者などに対して、拷問や身体的虐待、拘束、思想統制を行っていると指摘している。
その例として2022年3月、中国当局が湖南省衡陽市で路上などで福音を説いたクリスチャンの陳文勝氏を逮捕したことなどを挙げた。薬物中毒患者だった同氏は信仰により改心し母親と布教活動をしていた。2021年にも信仰を堅持したため6回逮捕されている。
人権NGO「国境なき人権」の推計によると、中国当局が昨年信仰を理由に投獄した人数は、精神修養法である法輪学習者2100人以上やキリスト教徒40人を含む2649人に上る。一方で、中国では宗教迫害に関する正確な情報を得ることが難しいため、この数字は氷山の一角に過ぎないと指摘した。
米国務省の報告は法輪功情報サイト「明慧ネット」のデータを引用した。それによると昨年、172人の法輪功学習者が迫害によって死亡し、446人が信仰を理由に半年から15年の判決を受けた。法輪功は、道徳的な教えを含む気功として1990年台に人気を博した。これを体制の脅威とみなした江沢民主席(当時)は1999年、弾圧を開始した。
報告書はその一例として北京冬季オリンピック開会式の3日前に逮捕された法輪功学習者の季雲芝さんを挙げた。不当に収容されていた牢獄では、数時間にわたる電気棒での感電や強制給餌、拷問などを受け、同年3月に亡くなった。拷問の証拠隠滅のため、警察は家族の意向に反して遺体を火葬したという。
こうした中国共産党の徹底した人道・人権軽視の国家的姿勢に対し複数の米議員からも非難の声が上がっている。
マルコ・ルビオ上院議員は声明で「法輪功学習者に対する執拗な嫌がらせを続けている」と非難した上で、中国共産党がオンライン宗教コンテンツを禁止するなど信教の自由を踏みにじっていると述べた。
国務省のベダント・パテル首席副報道官は記者会見でエポックタイムズの質問に対し「米国は人権侵害に加担する者の責任を追及する歴史的な措置を取ってきた。今後も依然として中国共産党による人権弾圧に対して懸念をもって注視していく」と強調した。
米国は、中国政府による「現在進行中の大量虐殺と人道に対する罪」を理由に、北京冬季オリンピックへの外交的ボイコットを表明した最初の国でもある。
昨年12月には国務省がチベットでの人権侵害と法輪功学習者に対する迫害に関与したとして、中国高官とその親族に制裁を科したと発表した。
「人権は、私たちが二国間関係において定期的に提起していることであり、今後もそうしていく」とパテル氏は述べた。