NPO法人による違法な臓器移植あっせん事件を受け、厚生労働省が医療機関に対して行った実態調査では、海外で移植を受けたのち日本の医療機関に通院している患者数は543人で、うち175人が中国で手術を受けていたことがわかった。加藤勝信厚労相が8日の委員会で報告した。
調査は移植学会の協力を得て、4月から5月にかけて日本各地の医療機関(203施設280診療科)を対象に行われた。3月末時点で通院している患者数や渡航先の国、移植した臓器、臓器提供者(ドナー)が生体か死体かなどを調べた。
患者543人が移植手術を受けた国の内訳は、米国が227人、中国が175人、オーストラリアが41人、フィリピンが27人だった。生体からの移植者数は42人、死体からの移植者数は416人、不明は85人だった。移植された臓器の内訳は、心臓が148人、肺が2人、肝臓が143人、腎臓が250人。
この結果を受け、加藤厚労相は「各国は臓器提供と臓器移植の自給自足の達成に努めるべきである」という国際的な原則に基づき、移植手術が「国内で完結」するような体制を構築することに意欲を示した。
調査ではあっせん団体の関与の有無や名称などについても尋ねている。厚労省は調査結果を踏まえ、あっせん業者への規制についても検討する。
海外への渡航移植をめぐっては、人道に対する犯罪に加担する恐れがあると指摘されている。特に中国での移植は「臓器狩り」に加担するリスクが高く、台湾やイギリス、カナダなど複数の国では法的な制限を設けている。
2021年6月、国連人権専門家は声明を発表し、中国の伝統的な修煉法・法輪功の学習者や少数民族に対する「強制臓器摘出」に強い懸念を示した。
日本の国会議員も中国臓器狩り問題に関心を示している。「中国による人権侵害を究明し行動する議員連盟」は4月の会合に臓器狩り調査第一人者のデービット・マタス弁護士を招き、実態把握に動いた。マタス氏は渡航移植の規制に加え、免疫抑制剤を製造する日本企業も無関係ではないと述べ、移植関連技術の譲渡の禁止を訴えた。