パルデンの会

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ロケット軍のトップ2人が同時に交代するという「異例の人事」である。背景には汚職や機密漏洩問題が取りざたされているが構造的には軍内の権力闘争である。

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 「宮崎正弘の国際情勢解題」 
    令和五年(2023)8月3日(木曜日)
        通巻第7847号 
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軍の汚職は中国伝統であり驚くに値しないがロケット軍トップが突如失脚。
   やっぱり大量のミサイルは「張り子の虎」なのだ
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中国人民解放軍戦略ミサイル部隊「ロケット軍」の司令官に王厚斌上将(大将)が、「政治委員」に徐西盛上将が就任した。突然、ケット軍のトップ2人が同時に交代するという「異例の人事」である。背景には汚職や機密漏洩問題が取りざたされているが構造的には軍内の権力闘争である。

 前任の李玉超は2022年1月に上将に昇進したばかりで僅か1年半で交代。新任の王は海軍出身、徐は空軍出身で、ロケット軍の生え抜きではなく、専門外からトップに据えるという異例な人事となった。習近平の「独断」による。ロケット軍のなかに新風を吹かせ、粛清をもって機能的組織にしたいのであろう。

 軍の汚職は中国伝統であり驚くに値しない。
しかしロケット軍は待遇や序列で優遇されていた部署のため、とくに軍歴がないのに理工系出身とか、およそ伝統的な軍のメンタリティを持ち合わないエンジニアの出世に嫉妬が渦巻いていた。
ロケット軍はふんだんな予算を与えられていた。汚職の源泉となるのは当然だろう。香港の『星島日報』は、「ロケット軍の元高官が7月上旬に自殺した」と伝えていた。

 事実上の「解任」となった李玉超は汚職に関与していたばかりか、米国にロケット軍の組織情報を漏洩した疑惑があるとされ、『明報』は、ロケット軍だけでなく、宇宙やサイバー戦担当の「戦略支援部隊」司令官も一連の疑惑に関連していると報じた。

 振り返れば習近平がトップとなって以来、軍のトップの失脚、裁判による無期懲役が相次ぎ、将クラスで失脚左遷、裁判有罪、自殺などは無数にのぼる。

象徴的な失脚事件は2014年六月の徐才厚(軍事委員会副主任=当時)の拘束と病死、16年7月の郭伯雄・拘束、無期懲役。17年11月には取り調べを受けた張陽が自殺した。
 これら一連の事例は、江沢民派の排除にあった。とくに徐と郭は江沢民時代から軍のトップの位置にあった。

 ついで2018年11月に参謀長の房峰輝が失脚、無期懲役となった。参謀長というのは、実際に軍を動かすポストである。

 23年4月には理論家として知られた劉亜州が所在不明となった。劉は反日強硬派で軍事論文をよく発表したため日本ではしられた軍人である。しかも劉亜州は李先念の娘婿。太子党の重鎮として軍内に重きをなし、ついでに反日を煽った。軍事論文にくわえて、劉は小説を多数執筆しており、軍部内で人気が高かった。

 軍の中で高いポストにあれば、懐も潤沢になり『上納金』がたまった。構造的な問題であり、中国軍の宿痾である。劉亜州もまた巨額の不正蓄財をなしたために、「執行猶予付き死刑判決」の可能性もあるとされる。

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