昨年3月、中米のホンジュラスは、長年にわたる台湾(中華民国)との外交関係を解消し、代わりに中国との国交を樹立した。これは、その前年の2022年に同国の大統領に就任したジオラマ・カストロ氏が打ち出した方針である。
そして、台湾との断交から10か月が経った今、ホンジュラスの経済を支える主力の1つであるエビ関係の産業が崩壊の危機に瀕している。
ホンジュラス全国養殖協会(Andah)の責任者は、メディアに対し次のように明かす。
「台湾との国交を断った後、ホンジュラスのエビ輸出産業は、中国市場を開拓することができなかった。今なお、中国へのエビの輸出はゼロに近い。その結果、多くのエビ養殖場がつぶれた。1千人以上が職を失ったうえ、外貨の損失は3900万ドルに上る。現在、我が国のエビ産業は、崩壊の危機に瀕している」
同責任者は、さらにこう述べる。
「国交断絶により、台湾との貿易協定が中止された。その後、台湾は我が国に対する関税優遇政策を取り消した。そのため、我が国のエビを台湾に輸出すれば、以前より関税が20%引き上げられる。一方、中国にエビを輸出しようにも、中国側が我が国に提示するエビの価格は、養殖業者が提示する価格より50%も安い。とてもそんな安値での取引はできない」
また、同責任者は「台湾との国交が断絶された際、中国は、我が国のエビが台湾に輸出する際に上乗せされた関税分の損失をエビ養殖業者に補償する、と約束していた。しかし、現在に至っても、この約束は守られていない」という。
「こうなった今(ホンジュラスは)エビの新たな市場を探さなければならない。しかし、2021年に締結された韓国との貿易協定を再開するにしても、韓国は米国および台湾の同盟国であるため、地政学的な理由から、韓国は我が国のエビの購入を渋る可能性が非常に高い」
そう述べた同責任者は「我々は全てを失った」と困り果てている。
台湾メディア「週刊王(CTWANT )」の17日付は、ホンジュラス産のエビが輸出困難に直面しており、多くのエビ養殖場が潰れているとともに、同国のエビ養殖業者が「中共当局は約束を守らない、と猛烈に批判している」と伝えた。
また同報道によると、中国はホンジュラスと国交樹立するにあたり「北京の中共政府が、ホンジュラス産の農産物の中国市場への参入を積極的に推進し、ホンジュラスの経済・社会の発展をしっかりと支援する、などと約束していた」という。
「週刊王(CTWANT )」は報道の最後に、ホンジュラスが台湾と断交し、中共政府の甘言を信じてしまったことについて「今となっては皮肉な話だ」と評した。
昨年3月中旬、ホンジュラスは台湾に対して、台湾から受ける年間援助額を以前の5千万ドルから1億ドルに倍増するよう要求したが、台湾政府はこれを拒否した。
そのすぐ後に、ホンジュラスは台湾との国交を断絶(3月25日)し、その翌日である26日に「中国共産党の中国」との国交樹立を発表した。
その際、米国務省は3月15日の声明のなかで「ホンジュラス政府は、中国が多くの未履行の約束をしていることに警戒すべきだ」と、ホンジュラスの国名を挙げて警告していた。
ところが、ホンジュラスはその「警戒」を怠った。中共政府の言葉を不用意に信じたことが、ホンジュラスの今日である「我々は全てを失った」につながったことになる。