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インターネットオークションに出品された「SL人吉」の指定席券(通常価格1680円)。ラストランの3月23日分は20万円や5万6000円など高値が付いている

転売ヤーのせいで…SL人吉の指定席、沿線住民は手を出せず落胆

スクープ城島勇人
毎日新聞2024/2/27 20:33(最終更新 2/27 21:27)998文字
2024年3月で引退するJR九州の観光列車「SL人吉」=佐賀県鳥栖市で2023年4月8日、城島勇人撮影
2024年3月で引退するJR九州の観光列車「SL人吉」=佐賀県鳥栖市で2023年4月8日、城島勇人撮影

 3月24日にラストランを迎えるJR九州の人気観光列車「SL人吉」の指定席券が、インターネット上で高値で転売されている。最後の営業運転となる3月23日の指定席券は通常の100倍以上の価格に跳ね上がった。希少価値の高い商品などを転売して稼ぐ「転売ヤー」が争奪戦に加わり、別れを惜しむ沿線住民が指定席券を購入できない事態になっている。

 オークションサイト「ヤフーオークション」では2月24日夜、営業運転最終日の指定席券が20万円で落札された。通常の指定席券料金は乗車区間に関わらず大人一律1680円(乗車券は別)で、本来の価格の約120倍だった。最終日以外の指定席券も、1万7500円や1万5500円など10倍近くの値段が付くケースが相次いでいる。

 SL人吉は2009年にJR鹿児島線肥薩線の熊本(熊本市)―人吉(熊本県人吉市)間で運行を開始。20年の九州豪雨で肥薩線が不通となって以降は鳥栖佐賀県鳥栖市)―熊本間で週末を中心に1日1往復している。運行開始以来約40万人が乗車し高い人気を誇ってきたが、けん引する1922年製造の蒸気機関車「8620形・58654号機」の老朽化に伴い、3月23日が最後の営業運転、翌24日は招待客を乗せた最終運行となる。

インターネットオークションに出品された「SL人吉」の指定席券(通常価格1680円)。ラストランの3月23日分は20万円や5万6000円など高値が付いている=福岡市中央区で2024年2月4日、城島勇人撮影
インターネットオークションに出品された「SL人吉」の指定席券(通常価格1680円)。ラストランの3月23日分は20万円や5万6000円など高値が付いている=福岡市中央区で2024年2月4日、城島勇人撮影

 JR九州によると、SL人吉は全席(132席)指定で、指定席券は運行1カ月前からインターネットサイトや駅の「みどりの窓口」で購入できるが、最終日までほぼ満席。最後の営業運転となる3月23日の指定席券は2月23日午前10時の販売開始から数秒で上下線とも売り切れたという。

 ところが、ネットでは売り切れたはずの指定席券が高値で取引されていることが判明。転売を巡っては、2019年にチケット不正転売禁止法が施行され、コンサートやスポーツなどのチケットの高額転売が禁止されたが、鉄道の切符は対象外となっている。

沿線住民「手が出せない」

 「転売ヤー」の介在で、乗車を希望する人が指定席券を入手しづらい状況になっており、肥薩線球泉洞駅熊本県球磨村)の名誉駅長を務めた母親を豪雨で亡くした、平野みきさん(52)は「母が愛したSLにもう一度乗りたかったが、これだけ高額なら手が出せない。せっかくのラストランなのに」と残念がる。

 JR九州の担当者は「乗りたいという強い思いを持ったお客様に切符が行き渡らないのは本意ではない。残念だ」としている。【城島勇人】