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「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和七年(2025年)5月28日(水曜日)
通巻第8799号 <前日発行>
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「借金の罠」から『貸しはがし』に転じた中国の“一帯一路”
25年中に220億ドル、26年は350億ドルの貸しはがしを予定
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豪州のロゥリー研究所はチャイナウオッチャーがつねに注目するレポートを発表する。このたびは「一帯一路」の実態を数字で明確に示した。「『資金供給者』から中国は『借金取り立て』に変貌した。とくに最貧国や政治経済的に脆弱で安定しない国々に集中している」と結論づけている。中国はまさに阿漕な高利貸しだった。パナマが脱退し、ついでG7で唯一の「覚え書き」締結国だったイタリアも脱退した。日米欧豪で加盟国はゼロだ。
もともと習近平総書記の目玉として、2013年9月7日、カザフスタンのナザルバエフ大学における演説で「シルクロード経済ベルト」構築を提案したのが嚆矢となった。
2014年11月に北京で開催されたAPEC首脳会議で、この構想を習総書記が獅子吼した。
中国からユーラシア大陸を経由してヨーロッパにつながる「陸のシルクロード」、中国沿岸部から東南アジア、南アジア、アラビア半島、アフリカ東岸を結ぶ「海のシルクロード」。そして北極圏を潜る「氷のシルクロード」の三つがセットとなって、各地のインフラストラクチャー整備、貿易促進、人とカネの往来促進をめざした。
中国は一方で多角的外交を展開し、資金提供によるプロジェクトを展開してきたが、他方では西側の制裁と国内経済の頓挫により手元資金が欠乏するに到った。
債権残高合計はたぶん6000億ドル前後にのぼるだろう。明らかなようにこれらは『不良債権』である。
75ケ国が資金に苦しむ発展途上国である。公式的な数字は中国輸出入銀行と中国発展銀行からの貸し出しくらいしかない。発展途上国に於いては中国への返済という負担が増えると、保健衛生、教育予算を成立しにくくする。貧困から最貧への転落となって、これは「人権」に五月蠅い西側の批判を招く。
とはいっても、これら債務国のIMFへの報告は杜撰で信頼できる数字ではない。あらかたは賄賂、汚職に消えた国もある。
2000年代の中国は海外投資も少なく、まして資金援助などはできる立場にはなかった。米欧は経済成長がいずれ民主化をうむだろうという幻想に拘泥して中国に投資し工場を移転し、世界の工場という望外の地位を確保した中国は2008年の北京五輪成功ですっかり自信を得た。
2011年にはGDPで日本を抜き、習近平は2013年に「一帯一路構想」をぶち上げる。資金供給のピークは2014年一年だけで、じつに500億ドル以上を世界の発展途上国にプロジェクトを持ちかけて貸し付けた。
▲カネに目がくらんで台湾断行い走る国々
やがて「借金の罠だ」として世界で批判がおこり、2019年には180億ドルに激減し、ついでコロナ禍を挟んで、資金供給者としての中国は貸し付けサービスの継続が出来なくなった。
それでも今日まで中国が「二国間協定」で貸し込んだ総額は、パリクラブの規模を凌駕し、発展途上国120ヶ国の内、54ヶ国が債務超過、支払い不能状態になる。
パリクラブは安定的に継続的な資金供給をつづけているが、中国は貸し出し条件として三年~五年の据え置きのあと、返済が始まる。もちろん金利つきである。
2016年からパンデミックの収まる2023年まで、中国の資金供給は年間平均で70億ドルへと減少していた。いくつかの国ではプロジェクトが中止となった。インドネシア新幹線などは、日本から横取りしたプロジェクトだったが、予算の30%高となって、工事は四年遅れた。
パキスタンへの貸し付けは公式的に620億ドル、担保はグアダール港の租借、スリランカはハンバントタ港が既に中国の軍港に化けた。
2025年中に目標としている取り立て(リスケ、あるいは担保権行使)は350億ドルに達し、対象となるのはパキスタン、カザフスタン、モンゴルなどの近隣諸国と、資源の多いブラジル、アルゼンチン、今後、インドネシアである。
リスケ、債務積み挙げなどに応じたのはガーナ、スリナム、ザンビアの三ヶ国くらいで、のこりの債務国状況も金額も条件も不透明である。
つまり2016年からリスケが開始去れ、世銀・IMF同様に、免除やリスケの協議が行われるが、これらは中国との「二国間協定」のため、非公開である。
しかし中国は一方でG20の「DSSI」(債務サービス中断イニシャチィブ)に参加し、これまでの債務免除額は42億ドルだという。
中国は貸し付け政策のスタンスを政治的に変更し、外交を搦め「ひとつの中国」を強要した。これに呼応して2018年にはブルギナファソとドミニカが、2019年にはソロモン諸島が、2021年にはニカラグア、そしてホンジュラアスが2023年に台湾と断交した。札束でひったたく外交である。
▲『台湾断交』か、資源利権確保か、露骨な融資条件
つぎに中国はEV用電池の原料確保の戦略をからめてコンゴ、モザンビーク、ナミビアなどへ一帯一路プロジェクトを持ち掛けた。コンゴのコバルト鉱山、ラオス、ザンビア、そしてアフガニスタンの銅鉱山の権益を確保した
4月25日、ベッセント財務長官はアジア開発銀行(ADB)の神田真人総裁と会談し、「中国をADBの融資対象国から外す具体的な措置を講じよ」と求めた。ADBは「開発途上加盟国に対する資金の貸付・株式投資を主眼として、開発プロジェクト・開発プログラムの準備・執行のための技術支援及び助言をなす。くわえて開発目的のための公的・民間支援の促進、加盟国の開発政策調整支援を行っている。
GDP世界二位という経済大国となった中国が、WTOでは特権をフルに利用して「発展途上国」の立場を、都合よく使い分けることに米国は我慢の限界を示した。日本も二年前から、ADB経由の対中融資打ち切りを「検討する」と表明してきた。
日本政府は「新興国向け融資」の対象から中国を外すよう求めている。ADBは日本が最大の出資国で、歴代総裁も日本人が務めてきた。本部はマニラにある。日本は、ADB創設当初からの加盟国で、222億3,000万ドルを出資。 特別基金を通じて159億8,000万ドルを拠出している。
中国開発銀行などからの融資は枯渇気味、自ら設立したAIIB(アジアインフラ投資銀行)は、巧妙にADBとの協調融資というかたちをとって名目を保っているが、事実上AIIBの機能は不全に陥ったと推測されている。
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