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中国・甘粛省蘭州市の総合病院で、外来患者数の「記録更新」を祝うポスターを公表し、世間の怒りを買っている。 病気に苦しむ人の数を「成果」として祝う姿勢に、医療が本来の使命を失った中国社会の病巣が浮かび上がった

患者が増えて「おめでとう」 中国の病院の「お祝いポスター」に非難殺到

患者が増えて「おめでとう」 中国の病院の「お祝いポスター」に非難殺到
門診患者数「過去最高」を祝う張り紙を掲示した 蘭州蘭石医院、2025年10月中旬、蘭州市。(スクリーンショット
 
2025/10/22 大紀元 
 

中国・甘粛省蘭州市の総合病院で、外来患者数の「記録更新」を祝うポスターを公表し、世間の怒りを買っている。

病気に苦しむ人の数を「成果」として祝う姿勢に、医療が本来の使命を失った中国社会の病巣が浮かび上がった

蘭州蘭石医院は10月中旬、院内やネット上で、赤い背景に金色の文字で飾られたお祝いポスターを公表した。赤と金は中国ではどちらも祝いや繁栄を象徴する色で、結婚式や新年などの場でよく使われる。そのポスターには「再び好成績を達成」「9月の外来患者7577人、手術426件」「10月初日だけで451人を受け入れた」などと記されていた。

しかし、人の健康悪化を示す数字を、まるで吉報のように飾り立て、企業の売上報告のように発表したことは、強い反発を招いた。

SNS上では「患者が増えて喜ぶとは何事か」「病院が商売を自慢している」「患者の痛みを『数字の勲章』に変えるとは、医療の価値が完全にねじ曲がっている」「病院は今や自費運営。上からのノルマ達成のために患者を数として扱っている。人の不幸を成果として祝うとは滑稽で悲しい」といった非難が相次いだ。

 

イメージ画像。中国安徽省の病院。写真は2014年に撮影されたもの( TR/AFP/GettyImages)

 

なかには「明代の詩人・楊慎は『世に病なきことを願う、薬棚の薬がほこりをかぶってもかまわない(但願世上人無病,寧可架上藥生塵)』と詠んでいた。それこそ医徳というものだ。それなのに今の病院は、その理想を金で踏みにじっている」と、深く心を痛める声もあった。

古来、中国では「医は仁術」とされ、貧富を問わず人を救うことこそが医の道とされた。その精神こそが「医徳」である。

しかし現代の中国では、医療は救済ではなく利益を生む産業へと変わり、医師の手は病を治す手ではなく、金を数える手になってしまった。そんな痛烈な批判が広がっている。

 

イメージ写真 (Photo by Ritesh Shukla/Getty Images)

 

実際、こうした「お祝い体質」は、蘭州の一病院だけの話ではない。

湖北省では、手術の必要がない患者にまでメスを入れる「過剰医療」が横行している。ある肛門科専門病院では、軽い痔や便秘で来院しただけの患者にまで「すぐに悪化する」「放置すれば命に関わる」と脅し、全身麻酔での手術を勧めるケースが相次いだ。元職員の証言によると、病院内の掲示板には「手術率90%以上を維持せよ」という内部ノルマが貼り出され、医師たちは日々「売上競争」を強いられていたという。

 



 

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上海では、健康診断に訪れた男性が「がんの疑い」と診断され、治療費として十数万元(約270万円)を請求された。後に他院で再検査したところ、腫瘍どころか影すらなかったことが判明した。被害者は「診察室では白衣を着た3人の医師が囲み、『早く決断しないと手遅れになる』と畳みかけてきた」と語る。医療ではなく営業である。

四川省では、手術室の前で医師が家族に「チップ3千元(約6万円)を現金で渡せ」と要求する映像が拡散された。家族が理由を尋ねると、医師は「これが慣例だ。払わなければ手術の順番が後回しになる」と言い放った。映像では、病院の廊下で現金を手渡す家族の姿と、周囲で見て見ぬふりをする職員たちの表情が映っていた。

広東省のある総合病院では、正月の院内パーティーで掲げられた横断幕に「手術室の中はお金であふれている」と書かれていた。動画には、看護師たちが拍手と笑いの中で乾杯する様子が記録されている。患者の命を預かる現場が、もはや商売の成功を祝う宴会場と化していた。

 

広東省東莞市の東莞康華医院で2022年に開かれた新年会。会場には「手術室の中はお金であふれている」と書かれた横断幕が掲げられていた (スクリーンショット

 

思い出すのは、中国のSNSでたびたびアレンジされる風刺ショートムービーだ。
ある女性がタクシー運転手に「お金を使いたい。この町で一番高いところへ連れて行って」と頼む。
すると運転手は迷わずハンドルを切り、病院の前で車を止める。
車内には沈黙。
やがて女性は苦笑し、運転手は「ここが一番だ」とつぶやく。
視聴者たちは「冗談のようで現実」「笑ったあと、背筋が寒くなった」とコメントを残していた。
 

公立・民間を問わず、病院が「治療の場」から「収益の場」へと変わるなか、人は不信と恨み、嘆きで高まり、医療暴力事件すら珍しくない。実際、患者が担当医師や、そばに居合わせただけの医療関係者を無差別に刺殺する事件が、各地で相次いでいる。

 

 

中国のネットでは「風邪くらいなら病院に行くな、行けば過剰治療されてもっと悪くなる」といった皮肉な警告が日常語となっている。

世論の怒りが噴き上がり、非難の声が広がる中、蘭石医院は世論の圧力に押される形で、「新入社員が規則を知らず、勝手に作成したものだ」と釈明した。この態度に対しても、ネット上では「また下に責任を押しつけて終わりか」「お決まりの責任逃れパターンね」といった批判が相次いだ。

病院が本当に掲げるべきは、「記録更新」の数字ではなく、治せた命と減った患者の数である。
病を商機に変える医療が、人の信頼を失うのは当然だ。