中国:ウルムチ暴動2カ月 漢族とウイグル族、募る不信と不安
◇漢族、通り魔事件で敵意/ウイグル族、連日のデモおびえ
毎日 【ウルムチ(中国新疆(しんきょう)ウイグル自治区)鈴木玲子】中国新疆ウイグル自治区ウルムチで起きた大規模暴動から5日で丸2カ月となった。 注射針とみられる針で住民を襲う通り魔事件をきっかけに漢族の抗議デモが今月3日と4日に起きたことから、治安当局は警官隊を大量に投入してデモ再発を警 戒している。通り魔事件は5日も市内で発生し、漢族とウイグル族の相互不信と不安は募るばかりだ。
「もうこんな緊張した生活はこりごり。家族の安全を考えると不安で眠れない」。市中心部で、家族連れでバスを待っていた漢族の男性(50)は声を 潜めた。運行が一部再開したとはいえ、デモが起きた南湖広場付近に向かうバスは1時間に1本程度。待ちくたびれる市民の前に武装警察の装甲車が並ぶ。
市中心部では多くの商店が閉まったままで、ATM(現金自動受払機)で現金の引き出しができないなど市民生活に影響が及ぶ。今も市内では国際電話がかけられず、インターネットも制限されたままだ。街頭では、数人の漢族が集まるだけで警官が注意する。
地元当局によると、通り魔事件による被害者は500人を超え、大半が漢族だった。このため漢族の間ではウイグル族への敵意が強まっている。漢族の 男性は「子供や女性を狙うなんてウイグル族は絶対に許せない」と憤った。ウイグル族の女性や子供を金で雇って襲わせているといううわさも飛び交う。
当局は通り魔事件で容疑者25人を拘束したが、5日も再び事件が起きた。目撃者によると、抗議デモがあった人民広場の近くで男の子が針で刺されて負傷し、当局はウイグル族とみられる男3人を拘束したという。
一方、連日の漢族によるデモでウイグル族の不安も募る。ウイグル族居住区一帯の道路が封鎖され、各所で数百人の警官隊がバリケードを張る。
「おれたちが何したって言うんだ。ウイグル族とみれば犯罪人扱いだ。街に漢族が来ることはすっかりなくなった」。薬局を営むウイグル族の男性はつぶやいた。治安のためという理由で住民の身元確認が相次ぎ、今も当局によるウイグル族の拘束が続くという。
外国メディアの取材も厳しさを増す。4日には警官隊とデモ隊の衝突を取材していた香港メディアの記者ら3人が警察に殴打されて頭部などを負傷し、一時拘束された。