建造物侵入:ウアルカイシ容疑者を釈放 警視庁
東京都港区の中国大使館に侵入し建造物侵入容疑で現行犯逮捕された天安門事件の学生運動指導者、ウアルカイシ容疑者(42)が6日午後、釈放された。弁護人によると、今後は在宅で東京地検の捜査に応じるという。
ウアルカイシ容疑者は89年の天安門事件後、中国当局から指名手配され、現在は台湾に亡命中。2日に来日し、3日に成田空港から中国に向かおうとして搭乗を拒否されたという。4日午後、中国大使館前で抗議活動をした際、正門前のパイプ柵(高さ約70センチ)を乗り越え敷地内に数メートル侵入し、警戒中の警察官に現行犯逮捕された。
警視庁は6日午前、ウアルカイシ容疑者を同容疑で送検、午後3時半に留置先の東京湾岸署から釈放した。同容疑者は釈放直後に報道陣に対し、「自首という方法で帰国したいと在日中国大使館に伝えた。しかし回答は得られず、中国の領土(大使館)に侵入することを決意した」と説明。「たとえ牢屋(ろうや)の中ででも、帰国して21年間会っていない両親に会いたい」と訴えた。さらに、天安門事件の風化が進む中で、「国内外にいる民主活動家たちの心情を表したかった。中国では民主主義を求めるには対話が重要。今後もそれを求めていく」と話した。【村上尊一、工藤哲、隅俊之】
中国:温家宝首相 胡耀邦氏への追悼文を寄稿 極めて異例
【北京・浦松丈二】中国の温家宝首相は15日付の中国共産党機関紙・人民日報に胡耀邦元党総書記の追悼文を寄稿した。15日は胡氏の命日。胡氏は1986年に学生らの民主化要求に同情的な態度を取って失脚し、89年4月の死去は、同年6月の天安門事件につながった。中国指導者が党機関紙で胡氏の業績をたたえるのは極めて異例だ。
追悼文は「興義を再訪し耀邦をしのぶ」と題したもの。今月初めに干ばつ被害視察のため貴州省興義市を訪問した温首相が、党中央弁公庁副主任だった24年前に当時の総書記だった胡氏に同行した思い出を振り返っている。
温首相は当時、胡氏が39度の高熱を押して貧困地区の視察を続けたことにふれて「大衆の苦しみに心を寄せ、仕事に全力を投じる姿を目の当たりにした」と回想。胡氏の思い出が「勤勉に仕事をせよと私を励ましてくれる」とたたえた。
中国共産党は2005年の生誕90周年で胡氏を再評価したが、温首相がその前から一貫して評価を変えていなかったと受け取れる文章を発表したことは注目される。