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「中国病の病魔の勢い」を  台湾の現状で読み、日本の処方箋に!

「中国病の病魔の勢い」を 
台湾の現状で読み、日本の処方箋に!


宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
 平成22年(2010)9月1日(水曜日)
 通巻3046号 
より転載  中国のタイワン進行の秘密文書を読み込んで日本の現実を読む

熟した柿が落ちてくる。「平和統一」を呼びかけ台湾を飲む込む謀略  中国共産党の機密文書が雄弁に語る台湾をだますテクニックのかずかす  ♪


袁紅氷著、黄牛訳『暴かれた中国の極秘戦略』(まどか出版
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この本は原題が『2012台湾大劫難』。2009年、台湾で出版され大センセーションを
巻き起こした。台北では記者会見が行われ、著者の袁紅氷が亡命先のオーストラリアから飛ん
できた。 ちょうど台湾にいた評者(宮崎)は記者会見の記事をみて、すぐに三軒ほど付近の
書店を回ったが売り切れだった。ようやく重慶南路(台北の神田書店街)の一軒で見つけ、
二冊を買った。一冊を或る出版社に持ち込んで、翻訳版を出そうとしたわけだ。
しかしながら当該出版社が会議・下訳・稟議書などでモタモタしている間に、台北コネクションの
強い「まどか出版」がさきに版元と交渉し、日本語版がでた、という裏面の経緯もあるが、
それは余談。
本書は、そのおどろおどろしい題名からも推察できるように、中国共産党の対台湾謀略の
全貌をえぐりだしている。それも機密文書をもとにしているので迫力がある。
読み進みながら、台湾の政治思想状況の北京化(PEKINGATION)と、
日本のそれとを対比させてゆくと、迫り来る心理的「恐怖」もひとしおになる。

両岸では中国共産党が台湾の国民党を丸め込む「第三次国共合作」が進んでおり、
一方で野党最大勢力の民進党を分裂させ、くわえて北京傀儡政党をでっちあげ、
メディアを中国礼賛組とし、学者ブンカジン、宗教家をして北京寄りに飼い慣らし、
最後は「無血」であんぐりと台湾を乗っ取る謀略が、日々、着々と進捗している。
陳水扁政権の汚職を、針小棒大に告発して、もっと激しい汚職を展開してきた国民党政治家の
ことは棚に上げ、ついには与党政権を敗北に導いた。国民党政治家をつぎつぎと一本釣りし、
連戦(国民党名誉主席)や宋楚諭らは大陸訪問で大歓迎をうける。
年末の台湾五大市長選挙は南部の高雄と台南で民進党が圧勝とみられていたが、国民党に
カネで工作された政治家が民進党を割って出馬するため、いきなり国民党有利の情勢に変わって
いる。台湾で有力な宗教家とされる星雲大師はもともと国民党寄りだったが、
よく大陸へでかけ、偽パンチェンラマと面会したり、台湾のメディアの多くはいまや
人民日報と変わらない論調を掲げて「平和統一」を言い出している。

日本もそうではないか。
自民党であれ、民主党であれ、日本の有力政治家の大半は中国に丸め込まれ、わが領海が
侵されているのに「友愛の海」にしようと言ったり、向こうの方が悪いのに、こちらから謝罪
したり、メディアはNHKまでが北京一色となって偏向報道がつづき、学者ブンカジンに
いたっては「中国批判組」を巧妙に排除し絶対に大新聞の紙面には登場させない。
某大宗教団体の長は、北京詣でが大好き。財界人も中国に理解のある発言をするばかりか、
なかには「日本は中華の一員になれ」という暴言を吐く。その商社出身の商人(あきんど)が、
驚くべし、新北京大使になって、この傾向はますます強くなるだろう。
したがって本書を台湾の事情だけと考えずに日本に照らし合わせて読んでいく方が有益である。

著者の袁紅氷は内蒙古省生まれ、北京大学で教鞭をとっていた知識人で六四天安門事件では
教員の学生支援団体指導者でもあった。くわえて胡錦濤とも面会し、習近平とは飲み友達、
李克強は同級生! 華麗なる人脈だが、自由民主の信念をつらぬいため貴州省に左遷された。
貴州省師範大学法学部長を経て、2004年豪州訪問のチャンスを利用して亡命した。
そのときは数十年にわたって密かに書きためた小説や散文詩思想書を持ち出しに成功し、
華字論壇でいきなり有名な存在となった。
現在、シドニー在住である。


情報源は08年六月に開かれた政治局拡大会議での決定「台湾問題解決のための政治戦略」
など三つの機密文著に基づき、その情報源の一部を著者は「粛正された元幹部家族だ」とあかす
にとどめる。その情報源のひとつを楊尚昆・元国家主席の家族と推定する向きもある。
秘密政治局拡大会議とは北京の西郊外の地下洞窟で開催されたとされ、また持ち出された
機密文書は「台湾問題解決のための政治戦略」「台湾に対する軍事闘争に準備に関する
マニュアル」「台湾統一の政治法律処置対応マニュアル」の三つとされる。
中国の台湾統一は三段階に別けられ、第一段階は経済の統一、そのために北京側が大幅に
譲歩してECFAを締結した(2010年六月末)。つぎは文化統一。このためには台湾に
反日思想を根付かせる一方で、台湾人も大陸の人間も皆おなじ中国人であり「中華民族」である
がゆえに言語を共有し(北京語)、映画、音楽、文学などでも同じ動きが見られる。
現在の台湾の馬英九政権が選択している対中政策は、この基本路線を逸脱したことがない
ではないか。
そして最後の段階が政治統一に目標をおき、それは「中国台湾省」である。
高度の自治を持ち、独自の警察を保有し、しかし外交と防衛は北京が握る。
台湾は香港のように「一国両制度」が認められるという扱いを受ける。そうやって実質的に
台湾は中国の飲み込まれる恐怖のシナリオを克明に本書は叙述している。