パルデンの会

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新興宗教への弾圧強める中国指導部


宗教から見た中国の内情
【国際情勢分析 矢板明夫の目】新興宗教への弾圧強める中国指導部
2012.12.30 12:00
 11月中旬に発足した中国の習(しゅう)近(きん)平(ぺい)指導部は、新興宗教への弾圧を強め、27日までに内陸 部を中心に活動するキリスト教系組織「全能神」の関係者1300人以上を拘束した。中国国営新華社通信などが伝えた。拘束理由は「世界終末論を流布し、社 会秩序を乱した」としているが、貧困層を中心に組織の影響力が拡大することに対し、共産党政権が危機感を持ち始めたのが原因と指摘する声もある。
「全能神」を大量拘束
 12月になってから、国営中央テレビ(CCTV)などの官製メディアは、青海省福建省重慶市内モンゴル自治区など全国各地で全能神の拠点が 次々と摘発され、公安当局が布教活動のための横断幕、パンフレット、書籍を大量に押収、教団幹部を拘束したニュースを大きく伝えている。同時に、政府系イ ンターネットのニュースサイトなども特集を組み、「全能神の教祖は精神疾患の患者」「教団内部の男女関係は大変乱れている」「多くの詐欺事件に関与した」 などと喧伝し、全能神のネガティブキャンペーンを展開している。
 江(こう)沢(たく)民(みん)時代の1999年に全国で展開する気功団体の「法輪功」が邪教と指定され、関係者が大量逮捕されたことがあったが、今回の全能神への弾圧は法輪功の時と非常に似ていると指摘する宗教関係者が多い。
 今回の1300人を超える大量拘束者の中には、末端の信者も多く含まれるとみられる。「全員の犯罪証拠を固めたとは思えない。公安当局のやり方は中国の国内法に違反している可能性がある」と指摘する人権活動家もいる。
宗教を求める貧困層
 全能神は80年代末に中国北東部の黒竜江省で生まれた新興宗教で、イエス・キリストを信仰するほか、共産党を「大紅竜(大きな赤い竜)」という隠 語で表現し、「大紅竜を殺して全能神が統治する国家をつくろう」などと主張している。90年代に「邪教」に指定されたが、全能神の主要幹部らは2001年 に米国へ亡命し、ニューヨークに本部を置いて中国国内向けの布教活動を続けている。
 今秋以降、全能神は古代マヤ文明の暦から「1221日に世界の終末日が訪れる」との噂が中国国内で広がっていることを利用し、「信教すれば助かる」などと布教活動を活発化させ、信者数を急速に増やしたという。
 中国国内では、貧富の差の拡大や将来への不安などから貧困層を中心に宗教を信仰する人が急速に増えているが、政府の厳しい管理下にある仏教、キリスト教など伝統宗教への入信は制限が多いため、多くの新興宗教が生まれた。
江沢民時代の再来
 無神論を唱道する共産党は宗教に対し非常に厳しい政策をとってきたため、中国における新興宗教はほとんど邪教と認定された。1989年から2002年まで13年間続いた江沢民政権は宗教弾圧に最も熱心で、10以上の宗教団体を邪教と指定し厳しく取り締まった。
 その後に登場した胡(こ)錦(きん)濤(とう)政権は、弾圧の手を若干緩めた。共産党関係者によれば、チベット自治区書記の経験を持つ胡錦濤氏 (70)は「宗教は弾圧すればするほど、その影響力は逆に大きくなる恐れがある」との考えを持っているという。党総書記在任期間の10年間、胡氏はチベッ ト仏教やイスラム教に対して厳しい政策をとり続けたが、新しい「邪教」の指定を見送り、大量逮捕もしなかった。
 今回の全能神の全国一斉取り締まりは、習近平総書記(59)の指示によるものとみられる。共産党の求心力低下への危機感から、国民に対し思想教育 を再び強化したいとされる習氏は、まず、共産党の教えと矛盾する「邪教」の一掃から着手したようだ。宗教関係者の間では「江沢民時代の再来」と危惧する声 が出始めている。(やいた・あきお 中国総局)
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