チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世(88)の後継問題に国際的な関心が集まるなか、チベット仏教の化身認定をテーマとした講演会が4日、東京都中央区の築地本願寺であり、インド在住の高僧テンジン・トゥプテン・ラプギャル師(40)が「ダライ・ラマとパンチェン・ラマは16世紀からそれぞれの後継者を互いに認定する関係にあったが、ダライ・ラマ14世が認めた正統なパンチェン・ラマ11世は誘拐されて29年後の今も消息不明のままだ」と述べた。次位の指導者パンチェン・ラマの重要性を語る一方、中国国務院(政府)が決めたパンチェン・ラマ11世の正統性を否定し、化身認定に中国の介入を拒否する姿勢を強調した。
テンジン師はチベット難民2世で、3歳の時に高僧シギャップ・リンポチェの5代目の化身と認定された。インド南部に再興されたタシルンポ寺で宗教教育を受け、2018年に座主に任命された。ダライ・ラマ法王日本代表部事務所(東京)の招きで初来日した。
タシルンポ寺は15世紀に創建されたチベット仏教ゲルク派最大規模の寺院で、パンチェン・ラマが歴代の座主を務める。パンチェン・ラマ10世はチベット動乱(1959年)後も中国にとどまったが、寺は文化大革命(66~76年)前後に破壊され、亡命した少数の僧侶が72年、インド・カルナータカ州に同名の寺を再興した。パンチェン・ラマ10世は89年に50歳で急死。95年、チベット側と中国政府側がそれぞれに「11世」を公表し、チベット側の11世は公表直後に失踪した。
テンジン師は7日、衆院議員会館(東京都千代田区)で「チベットにおける中国の継続的な人権と信教の自由の侵害についての勉強会」として特別講演する。【藤田祐子】