パルデンの会

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震災がれき処理急進展の真相  やはり民社党に任せたツケはおおきい



消えた震災がれきの謎

2013年3月11日(月) 石渡 正佳 より一部転載
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20130307/244677/?mlp&rt=nocnt
震災がれき処理急進展の真相
 実は処理が進展したのではなく、震災がれき発生推計量が下方修正されたのである。
  東北337市町村の災害廃棄物発生推計量を、震災直後の20116月時点と今年2月時点で比較すると、東北3県合計では2183tから1628万 t(-555t)、岩手県では446tから366t(-80t)、宮城県では1509tから1102t(-407t)、福島県では228万 tから160t(-68t)と、3県平均25%も減少している。
 なぜ、このような大幅な下方修正となったのか。第一の理由は、当初の 発生推計量は航空写真による被災面積に、これまでの災害の経験を踏まえた係数をかけて割り出したものだったが、その後、撤去実績数値に徐々に置き換えられ たのである。昨年中から何度か下方修正されてきたが、年明けの修正は特に大きかった。
 第二の理由は、当初の発生推計量は被災建物の基礎ま で除却することを想定していたが、全滅市街地では基礎を除却してしまうと宅地の境界が不明になることや、撤去工期を短縮する観点から、基礎を除却しない現 場が増えたからである。戸建て住宅の場合、基礎は住宅全体の3割程度の重さにもなるので、基礎を撤去するかしないかでは震災がれき量は大きく違ってくるの である。
最後まで残っていた高田松原のホテル解体
  震災がれき発生推計量はかなり下方修正されたが、現地の未処理がれきがもっと少なく見えたということは、これからさらに分母が下方修正される可能性を示唆 している。撤去に同意しない被災建物もかなりあること、処理施設ができる前から道路や仮設施設の造成などに有効利用されたコンクリートがれきなどの量が処 理量にカウントされていないことなども、震災がれき発生推計量や処理進捗率の誤差となっている。
 震災がれき発生推計量が下方修正された結 果、広域処理協力を中止する動きや、処理終了目標(20143月)を前倒しする動きが出ている。環境省発表の広域処理協力状況は、222日現在、実施 済み、実施中、実施決定済みの自治体が111365件、受け入れ見込み量約62t岩手県分約29t宮城県分約33t)、受け入れ済量約25 tとなっている。このほか協力表明済みが114件、試験処理実施済みが22件ある。環境省は広域処理協力を震災がれき処理の切り札として推進して いたが、結果的にはいまひとつ広がりを見せず、協力表明済みなどを含めても全国で71件にとどまっている。
 岩手・宮城両県とも、広域処理 協力量を含めて処理終了目標を達成する計画なので、広域処理協力はまだ必要だとしている。しかし、これはお願いしておいていまさら要らないとも言えないか ら、表向き必要と言っているにすぎない。岩手、宮城両県で487tも発生推計量が下方修正されたのに、数十万t程度の広域処理協力がまだ必要だというの は意味がない。高い運搬費がかかる広域処理は、本音を言えば全面的に休止し、県内処理に切り替えたいのである。すでに両県とも新規の協力要請は見合わせて おり、宮城県4月から可燃物の広域処理を中止すると発表している。
がれき処理施設が余ってしまった
 震災がれき発生量が当初推計されたほど多くなく、処理が予定より早く終わる見込みとなったのは良いことだと思うかもしれない。だが、過大な推計に基づいて過大な施設を建設し、過剰な人員を雇用したことは税金のムダ遣いである。
宮城県石巻市に建設した全国最大規模の破砕選別施設
  最大の震災がれきが発生した宮城県は、県下の12市町からの震災がれき処理受託量を1107tと見積もって、県下を4ブロック8処理区に分け、処理をゼ ネコンなどで構成されるジョイントベンチャーにプロポーザル(企画提案型入札)で発注し、仮設焼却炉29基(焼却能力14495t)、破砕・選別施設 12カ所を建設した。言葉は悪いが、いわゆる丸投げである。ところが、今年1月の見直しでは受託処理量が582tに下方修正され、減少率は47%にも なってしまった。つまり、単純計算で仮設処理施設の能力は半分でよく、予算も半分で足りたことになるのである。
 国はこれまでに1821 億円の震災廃棄物処理事業費を計上している。震災がれき発生量が下方修正されても、予算は減額されない。すでに過大推計に基づいて施設を建設してしまった からである。筆者も震災直後に、災害廃棄物処理事業費は最大1兆円と予測したことがあるので呵責を感じる。
宮城県石巻市に建設した仮設焼却炉
  現場では過大施設の別の問題が生じている。焼却炉は一定以上の廃棄物がないと定常運転ができず、休止する可能性があるのだ。実際、宮城県では焼却する廃棄 物が不足する処理区が出ており、他地区から廃棄物を融通したり、震災がれき以外も処理しようという案も出ている。また早く処理が終わってしまうと、雇用の 問題が出るので、予定通りの処理期間にするため処理をペースダウンせよという指示が出たとも聞く。声高には言えないことであるが、これが消えた震災がれき の真相である。
 その一方、道路や宅地の嵩上げ工事のため、震災がれきや津波堆積物から再生したグリ(砕石)や土砂は引く手あまたの人気商 品となっている。再生資材の品薄は、今後の復興のスケジュールにも影響を与える問題であり、国土交通省は全国の公共事業から発生する再生資材や残土を東北 地方へと海上運搬する検討に入っている。莫大な震災がれきを前にして茫然自失していた状況から一転して、廃棄物が足らない事態となっているのである。
  それにしても仮設処理施設を着工する前に震災がれきの発生量を見直すチャンスはなかったのだろうか。需要の変化を検証せず、オーバースペックの無用な施設 を既定方針どおりに建設して税金をムダ遣いしたというのは、どこかで聞いた話である。一度計上した予算は減額せず、ムダとわかっても予算を使い切るのが仕 事だと勘違いしている職員は国にも自治体にも少なくない。予算をチェックすべき財務官僚も、一度付けた予算は減額しようとしない。それどころか、予算を余 らせることを厳しくとがめる。予算を減額補正したり、不用額や事故繰越を発生させたりすることは、予算査定が甘かったことになり、財務省の無謬(むびゅ う)主義に傷がつくからだ。この無謬主義という幻想を守るために、どれほどの予算がムダになったことだろう。
 災害廃棄物処理事業と同じような過大見積もりによる復興予算の暴走は、今後の復興工事でも起こるに違いない。それを事前にチェックする機能は行政にはないのである。
石渡 正佳(いしわた・まさよし)