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中国人 四川地震でなぜか韓国人非難、韓流グループも標的


中国で占める韓流の大きさがあり、中国で韓流ブームが拡大すればするほど、今後も突如、韓国人バッシングが巻き起こる現象は避けられそうにない。

【桜井紀雄の劇的半島、熱烈大陸】四川地震でなぜか韓国人非難、韓流グループも標的

2013.5.6 07:00

 中国四川省雅安市で4月20日に起きた地震をめぐり、中国のインターネットの一部で、「日本人の多くが同情しているのに韓国人は不幸を喜んでいる」との書き込みが現れ、韓国人批判が起きた。地震当日、韓流アイドルグループのメンバーの誕生日を祝ったとしてネットユーザーとファンとの間で非難合戦も発生。なぜ、地震とは縁もゆかりもない韓国人が突如、中国人の怒りの標的に挙がったのか。

「領土で争う日本人は同情しているのに…」
 地震発生直後から中国の複数のコミュニティーサイトにこんな書き込みが目につき始めた。
 「韓国人は世界で最も醜悪な民族だ。もともと中国の属国で、いまは米国の属国。主権もない」「韓国人が嫌いだ。(北)朝鮮がよっぽどましだ」「(韓国を)中国の朝鮮省にしてしまえ」
 韓国人を蔑称の「棒子(パンズ)」と呼んで非難する複数のスレッドが立ち上がったのだ。韓国のサイトから引用したという韓国語で書かれた四川地震を受けた次のような書き込みが原因だという。
 「あまりに痛快だ。中国のやつらがやられて気分がいい」「中国人が絶滅してこそ地球が長続きする…万歳、万歳、万歳」
 これら四川地震を揶揄(やゆ)する韓国語の書き込みをわざわざ中国語に翻訳したものが転載されて一部に広がり、中国ネットユーザーの怒りを買ったようだ。
 一方、地震を受けた日本語の書き込みと韓国語の書き込みの翻訳を対比するスレッドも複数見られた。

 韓国語サイトからは、不幸を喜ぶような書き込みが抽出される一方、日本語サイトからは、「たとえ嫌いな国でも震災があれば支援すべきだ」「中国人が大嫌いだが、日本は迅速な対応で一人でも多くの人を助けてあげて」といった「嫌いだが、助けるべきだ」との趣旨の書き込みが抜き出されている。

 その結果、「日本とは(尖閣問題で)領土を争っているが、そうでない棒子がなんでこうなんだ」と火に油を注いでいる。
 なんだか韓国憎しの意図的な抽出と思えなくもない。
 「不幸を喜ぶ者はどの国にもいる」とのツッコミも見られたが、何を根拠にしてか「四川地震のニュースに対する韓国人の書き込みの3分の1が不幸を喜んでいる」との主張まであった。
ファンの自殺騒動まで
 中国でも人気の韓流アイドルグループ「EXO(エクソ)」もバッシングにさらされた。

 EXOは韓国人8人と中国出身の4人からなる男性グループで中韓両国に分かれ、活動している。このうち中国で活動するメンバー1人の誕生日が地震が起きた4月20日だった。ファンらが祝福するメッセージを送るなどしたところ、中国のネットで「不謹慎だ」と非難が巻き起こった。

 誕生日のメンバーは中国籍だったが、韓国人メンバーも十把一からげにして「EXOは全員死んでしまえ。ファンが葬儀に送り出してくれるよ」と中傷する書き込みが現れた。
 これに対してファンの一人が「死ぬのを見たいなら」とリストカットした跡のある腕の写真をネットに掲載。ほかのファンらも「まだEXOの悪口を言うなら私たち全員リストカットしてやる」と極端な書き込みに走った。
 さすがにやり過ぎだとバッシングの自制を求める声が上がったが、「親に申し訳ないと思わないのか」とファンへの批判も出た。
5年前もあった韓国人バッシング
 韓国人非難は2008年5月の四川大地震でも起きた。韓国のサイトに「ざまを見ろ」と書き込まれたとして中国のネットが炎上した。
 その後の北京五輪では中国側が秘匿していた開会式のリハーサルのもようを韓国のテレビ局がスクープし、「平気で盗撮する恥知らずの国民だ」と嫌韓感情を増幅。五輪の野球日韓戦では、「棒子をやっつけろ」と一斉に日本を応援する現象が起きた。
 一方、日本に対しては、日本政府が当時、救助隊を送ったことに「日本は嫌いだったが、心から感謝したい」と好印象を表明する中国人が相次いだ。
 今回の地震でも「震災対策先進国の日本に学べ」「今回も日本の救助隊を受け入れるべきだった」との書き込みが目についた。こと地震に関しては、日本に対して好印象が持たれることが少なくない。
 日本では「同情論が多い」と決め付ける背景にもこうした経験があるようだ。
 ただ、「不幸を喜ぶ」といった韓国の書き込みもわざわざ韓国サイトから翻訳して抜き出しており、地震をきっかけに突然、火がついたというより、もともと土壌として“嫌韓”があると言わざるを得ない。
韓流あるかぎり…
 地震をめぐる韓国批判の書き込みには、「棒子は、遼東半島高句麗時代からの固有の領土だ、漢方医学は自分のものだとみなし、孔子まで(自分の祖先だと言って)奪おうとする」と非難の理由が挙げられているものがある。
 「韓国人は祖先が活字印刷術を発明した。韓国人の祖先には老子もいる。韓国女性がきれいなのは、(中国古代の絶世の美女とされる)西施も彼女らの祖先だから。甲骨文字も韓国人が発明した…」と羅列した書き込みもある。
 東洋文化の多くが韓国人が起源だとする韓国の強弁は日本でも知られているが、これら列挙されたものは、ネットを通じて中国に拡散し、中国人の怒りのタネになっている典型例だ。
 そもそも、これら文化衝突から来る嫌感意識があり、サイトで中国の不幸を喜ぶような書き込みを見つけようものなら「つるし上げるぞ」という素地があった。
 証拠に、不幸を喜ぶ書き込みを見つけて「好きだった韓国が急に嫌いになった」との声はなく、いずれも「韓国がいっそう嫌いになった」と記されている。
 さらには、韓国語の不幸を喜ぶ翻訳文を添付した後に「それでもあなたは韓国の追っかけをするのか」と韓流ファンに突き付ける書き込みもある。
 「韓国はドラマばかり撮っている暇人だ」といった中傷のほか、「韓国を神のようにあがめるやつばかりだ」と韓流アイドルやドラマのファンをあげつらうものも複数見られる。
 つまり非難は直接、韓国人にぶつけているというよりむしろ「哈韓族」(ハーハンズー)と呼ぶ韓流追っかけの中国人たちに向けられているともいえる。EXOバッシングも、EXOメンバーらに対してというより、ファンの行動を非難した波にEXOが巻き込まれたようなものだ。
 韓流ドラマやアイドルは日本に勝るとも劣らないほど中国を席巻している。一連の韓国人非難は、そのような韓流ブームをつね日頃快く思っていないネットユーザーが引っ張り出した騒動だと考えられなくもない。
 裏返せば、中国で占める韓流の大きさがあり、中国で韓流ブームが拡大すればするほど、今後も突如、韓国人バッシングが巻き起こる現象は避けられそうにない。(外信部記者)
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