「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成26(2014)年 3月19日(水曜日)弐
通巻第4188号
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ミャンマーの化学兵器(毒ガス)工場に中国人がいた
『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』がすっぱ抜いた
****************************************香港の英字紙『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』(2014年3月19日)が衝撃のニュースをすっぱ抜いた。
ミャンマーの化学兵器工場で中国人が毒ガス兵器の製造を指導していた、というのである。首都ネーピードから北西へ300キロの山岳地帯に、化学兵器工場(およそ3000ヘクタール)があり、中国人の出入りが確認された。
少数民族との戦闘で、ミャンマー政府軍はしばしば毒ガス兵器を使用しているとする噂は前からあった。げんにミッチーナ周辺はいまも外国人の立ち入りが禁止されている。
ちなみにミャンマーは化学兵器禁止条約に署名しているが批准していない。
軍政から民政移管したミャンマーは「報道の自由」を大幅に認め、いくつかの新聞が誕生した。2013年春からは日刊新聞の発行が許可され、2014年3月18日には、「検閲」が廃止された。驚くべき迅速な変貌をとげている。
新興メディアの一つ、『ユナイト・ジャーナル』が、上の情報を現場工場の写真入りでつたえたところ、これは「国家機密」を漏らした罪として、五人のジャーナリストを逮捕し、軍事法廷にかけた。言論の自由と国家機密は微妙な問題、ウィキリークスのアサンジ被告やスノーデンをみよ。
言論の自由化、国家機密保護が優先か、ミャンマーで初めての法廷はヤンゴンから山岳地帯に移された。
第一に従来まったく情報の無かった軍事法廷を公開したことがミャンマーの民政移管後の変化である。
第二にフリーな新聞が登場していることも驚きであり、アウンサー・スーチーもこの問題で『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』の取材に応じ、「プレスは国民のために真実の情報を知らせるべきだ」と同裁判へのコメントを寄せるほどに、軍事政権時代の環境が変わっている。
ティン・セィン大統領の補佐官は、この裁判の行方に関して「これはあくまでも国家機密漏洩をさばくものであり、米国とてスノーデンの国家機密漏洩を許さないように、犯罪は犯罪である」として、新聞記者拘束の合法性を語っている。
しかし裁判のことより、化学兵器製造工場に中国人がいたという問題が、もっと深刻な事実ではないのか。