朝日新聞の現実は ネット情報から記事を作る 小説家であった。
朝日新聞が今から約2年前に、任天堂株式会社の岩田聡社長のインタビューを捏造していたことが、週刊文春の取材で明らかになった。
捏造インタビューが掲載されたのは、2012年6月8日付(東京版)経済面の「ソーシャル時代、どう対応?」と題された記事。当時、米ロサンゼルスで開かれていた世界最大のゲーム見本市「E3」を取材した同記事の中で、「各社の責任者に話を聞いた」とした上で、任天堂の岩田社長の顔写真とともに、インタビュー記事を掲載した。
だが今回、週刊文春に対し、朝日新聞関係者が内幕を明かした。
「その当時、岩田社長は朝日の記者のインタビューを受けていません。取材ができないことに記者が焦ったのか、任天堂公式HP上で岩田社長が語ったコメントなどを勝手につなぎあわせ、インタビューに仕立て上げてしまったのです」
これが事実であれば完全な捏造記事である。
今回、週刊文春があらためて任天堂に「2012年6月当時、朝日新聞記者が岩田社長にインタビューした事実はあるか」と聞いたところ、任天堂株式会社広報室は「(当時)岩田聡は日本のマスコミの記者様の取材はお受けしておりません」と回答した。
一方、朝日新聞広報部は同様の質問に「当時、任天堂の社長への取材を申し込みましたが、了解が得られなかったため、任天堂に動画の発言内容をまとめて記事にしたいと伝え、了解を得られたと思い込み、記事にしました。任天堂から『インタビューは受けていない』と抗議を受けたことなどから、おわびをいたしました」と回答した。
誰しもが見られる任天堂公式HPの動画内容を、さも記者が取材したかのように見せかけて掲載し、しかも任天堂から抗議を受けたにもかかわらず、読者に対して2年以上もの間、訂正もせずに放置していた事実は重い。
木村伊量社長の今後の対応が注目される。
<週刊文春WEB『スクープ速報』より>
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「吉田調書」報道を取り消し謝罪したという見出しがメインの9月12日朝日新聞朝刊 |
朝日新聞の木村伊量社長が9月11日、「吉田調書」報道に関して、あっさり謝罪したことは何とも不可解だ。「従軍慰安婦検証報道」で過去の誤報を認めながら謝罪から逃げていたうえ、朝日の姿勢を批判したジャーナリスト・池上彰氏のコラム掲載見合わせ問題でも謝らなかったのに、「吉田調書」では急にお詫びの姿勢に転じたからだ。
朝日の記者会見の主眼は、「吉田調書」報道に関しての謝罪に置かれていた。むしろ世間の批判、特に木村社長に対する経営責任を問う声は、過去の誤報を潔く謝罪しなかったことやコラム掲載見合わせ問題についての方が多く、「吉田調書」については、政府や東京電力が隠していたことを暴き出した意義があるといった一定の評価もあったのに、である。
朝日新聞がスクープした「吉田調書」は、原子力発電所が想定外の大きな事故や災害に見舞われると、作業に慣れた電力会社の社員の手でも制御不能となることを当事者が克明に語った生々しい記録であり、その中身を公開することで、国民的な議論を喚起し、原発再稼働の是非を問うことに報道の意義があったはずだ。
と同時に「吉田調書」をジャーナリズムの手で白日の下に晒すことは、なし崩し的に原発再稼働に動く現政権に大きな「戦い」を挑む意味もあったのではないか。
だから「命令違反」があったのか否か、東電社員たちが逃げたのかどうか、頑張った東電社員たちを貶めるものなかどうかは、本質的な問題ではない。自分の命を懸けて働いた「美しい日本人たち」がいたかどうかも同様だ。
「吉田調書」や他の資料・証言などと照らし合わせて、あの時、政府や東電はどのような判断を下し、何が起こっていたのかあぶり出し、問題提起していくことに意義があるのではないか。
また、原発を再稼働させるならば、東電や政権がやるべきことは、「吉田調書」などを参考にしながら、国民的議論も踏まえて、原発が事故や災害などで不慮の事態に陥った際に、被害を最小限に食い止めるためにはどのような準備を怠りなくすべきなのかを考えたり、原発を再稼働させても本当に大丈夫なのかを真摯に考えたりすることであるはずだ。
政府や東京電力が隠している情報を、調査報道によって記者が自分の足で見つけてきたことにも大きな意義があった。調査報道とは概ね、本来有権者が知るべきなのに、放っておけば権力者が隠してしまうようなことを、記者が自分の足で調べて暴くことである。かつて朝日新聞が掘り出した、未公開株が賄賂として政治家や官僚に渡っていた「リクルート事件」は調査報道の典型的なケースと言えよう。
調査報道は、権力側との一種の「戦争」である。記事を一つ打てば、権力側からの嫌がらせや圧力など「反撃」が想像されるので、その「反撃」を撃退するためにも、通常、記事は複数用意しているものである。「吉田調書」の全容を朝日新聞が報じていないのも、調書の中は、政権や東電が国民に知られたくないことが多く含まれており、それを小刻みにしつこくキャンペーン的に記事化することで、政権や東電がたやすく再稼働できないようにする狙いがあったのではないか。
しかし、朝日新聞は5月20日に第一報を報じ、その後、デジタル版で連載して以降、続報が出ていない。吉田調書の全容も出ていない。ここが最も不自然だと筆者は感じていたが、その背景には、社会部系幹部が首謀する醜い朝日新聞内の権力闘争が見え隠れしているので、驚くばかりだ。
ずばり言うが、社会部系幹部が画策するのは、吉田調書をすっぱ抜いた特別報道部潰しだ。
社会部では、記者クラブに入って検察や警察など役所に気に入られてネタをもらうことが大切にされる。言ってしまえば、情報リーク依存型の報道である。これに対し、特別報道部は、記者クラブ依存型ではなく、前述した調査報道と呼ばれる権力の監視に主眼を置く。
最近の朝日新聞では特別報道部が力を付けてきて社会部を上回る勢いがあり、2012年、2013年と2年連続で新聞協会賞を取っているが、それが社会部にとって面白くない。社会部系幹部と特別報道部の幹部も内心反目し合っており、仲が悪い。
「命令違反」があったか否かという、本質的ではないことで揚げ足を取ることで、特別報道部の勢いをそぐことができる。社会部系幹部が画策して、社内で「吉田調書は誤報」の流れを作りだした模様だ。そうした意味で、「吉田調書」をスッパ抜いた記者達の「敵」は政府や東電ではなく、「社内」だったのである。
「リクルート報道」を指揮した朝日新聞横浜支局元次長の山本博氏も亡くなる2ヵ月ほど前の昨年4月、「関西ジャーナリズム研究の会」での講演で、調査報道では、リスクを取りたくない社内がまず抵抗してくるといったことを述べていた。
それにしても、あれほど「吉田調書」のスクープを絶賛していた木村社長が態度を豹変させて、記事を取り消し、謝罪の記者会見をしたことは不可解だ。
「従軍慰安婦検証報道」では、過去の誤報を認めながら謝罪がないと批判されながら、記者会見をしなかったのに、「吉田調書」報道ではいとも簡単に記事を取り消し、謝罪した。言論機関のトップが、誤報をした際に謝るのは当然の流れだとしても、権力と戦っている調査報道では、誤報や捏造があったわけではなく、「間違った印象を与えた」程度の話で謝るのはおかしい、と筆者は感じる。
権力を監視する新聞社のトップがあっさり権力に「白旗」を掲げたのも同然ではないか。繰り返すが、「命令違反」があったかどうかは、「吉田調書」の核心ではない。この調書を徹底的に検証するのが調査報道の役割だ。
木村社長は、「命令違反」はなかったと謝罪することで、実は社長の座にしがみつこうとしているのではないか。そこに、社会部系幹部の特別報道部潰しの戦略がぴったり重なったというわけだ。木村社長は自らが主導した「従軍慰安婦検証報道」で誤報を認めながら謝罪がなかったことなどで、多くの批判を浴び窮地に陥っていた。
そこに追い打ちをかけるように、ジャーナリストの池上彰氏が書いたコラムの掲載見合わせ問題が発生、言論の自由を標榜する朝日の信頼は地に堕ちた。「従軍慰安婦検証報道」に関しての朝日批判は、元々朝日と合い入れない「ネット右翼」や右派言論人が中心だったが、「コラム掲載見合わせ」問題では、朝日のコア読者までの信頼を失ってしまった。
木村社長の判断ミスから事態が深刻化していたと言っても過言ではなく、いずれ木村社長は辞任に追い込まれるというのが業界内の見方であった。
そうした局面の中、「起死回生の策」が浮上したと見られる。それは、すでに一部メディアから「命令違反」はなかったなどとする批判が出始めていた「吉田調書」報道を利用することだった。「吉田調書」報道にあたって、木村社長の判断は関与しておらず、報道についての責任は杉浦信之取締役(編集担当)にある。
「吉田調書」報道を全面的にお詫びすることを主眼に謝罪会見をして、その責任を杉浦氏に押し付け、杉浦氏の職を解き、関係者を処分することを言明し、そのついでに「従軍慰安婦検証報道」の際に誤報を認めながら謝罪しなかったことを詫びれば、批判の矛先は木村社長個人から、「吉田調書」報道に向かうと考えた姑息な計算が垣間見える。要は、トカゲのしっぽ切りである。
しかし、世間は甘くない。こんな対応では、ますます木村社長への批判は高まり、いずれ、辞任会見をする羽目に追い込まれるのではないか。
こんなことをしていたら、朝日新聞記者はリスクがある調査報道に誰も挑まなくなるし、ますます朝日新聞の劣化は進む。11日夜の記者会見で木村社長は「改革に道筋がついた段階で速やかに進退を判断する」などと述べ、いずれ退任する可能性を匂わせたが、潔くない。今すぐ混乱の責任を取って辞めるべきだ。