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小林製薬、中国人をつかんだ   「5の神薬」

小林製薬、中国人をつかんだ   「5の神薬」

2016/1/20 5:30 日経新聞

 小林製薬インバウンド銘柄に変身している。訪日観光客は2015年に1973万人と過去最多になった。1人で20個、30個とまとめ買いする中国人の「爆買い」はインバウンド需要の象徴となり、幅広く企業業績を押し上げている。ユニークな商品開発で知られる小林製薬も、実は中国人からの支持が高い。インバウンドを追い風に2016年3月期の純利益は過去最高になる見通しだ。この勢いは続くのだろうか。

 昨年11月末、大阪市心斎橋筋商店街は、買い物をする訪日客でにぎわっていた。ツルハドラッグ戎橋店は、ほぼ半分の客が外国人だ。英語だけでなく中国語の商品説明が目立つ店内では、中国人の客が小林製薬の「熱さまシート」と液体ばんそうこうの「サカムケア」の写真を店員に見せて、商品を求めていた。
 「12の神薬」というリストがある。中国人が日本を訪れた際に必ず買うべき医薬品をまとめたもので、訪日前の情報収集に使うメッセージアプリや短文投稿サイトで広がった。ここに載っているのが熱さまシートとサカムケアだ。

 熱さまシートは冷却効果が長く続く品質の高さが人気の要因だ。サカムケアは現在、購入者の7割が外国人で、中でも水仕事が多い中国で重宝されているという。ネットでは写真や動画で説明され、「日本製なので効果が信頼できる」「中国にない面白いアイデア商品」と高い評価を受けている。

 この2つだけではない。12の神薬のうち5種類は小林製薬の商品が占める。消炎鎮痛剤「アンメルツヨコヨコ」角質軟化剤「ニノキュア」、女性保健薬「命の母A」で、どれも中国には類似品が見当たらず、希少性から人気を集める。

 高まる人気を受けて、小林製薬小林章浩社長は「訪日客の取り込み策を強化する」と意気込む。サカムケアは15年1月に宮城県の工場に専用の生産ラインを設けて増産体制を整備した。商品パッケージも刷新し、アンメルツヨコヨコと熱さまシートでは中国人の好む金色のタイプも用意した。インバウンド需要で15年4~9月期は、およそ23億円の増収効果があったという。

 株式市場での評価も高まっている。従来、小林製薬はニッチ(隙間)市場でユニークな商品を開発する日用品メーカーと位置付けられていたが、「インバウンド銘柄」との評価が加わり株価は騰勢を強めた。15年の年間上昇率は4割に達し、年明けに調整したものの、今も9000円台前半と高い株価水準を維持する。みずほ証券の佐藤和佳子シニアアナリストは「訪日客にも商品力が評価され、着実に利益を伸ばしている」と指摘する。

 ただ、インバウンド需要の先行きは不透明だ。中国経済の減速に加えて人民元安が進み、中国人が日本で買い物をする動機は薄れつつある。日用品を中心に、需要が既にピークを越えたとの見方も出ている。外部環境に左右されるインバウンド頼みの成長では心もとない。

 小林製薬は芳香剤など市場になかった新しい商品を開発して成長してきた。一方で化粧水などのスキンケア商品や栄養補助食品などは顧客層が広がらず販売が伸び悩んでいるようだ。他社と競争になる商品に手を広げるより、ニッチ市場での独自の戦いが小林製薬の強みだ。ユニークな開発力で幅広く顧客をひき付ける商品を生み出せるか。中国人にも認知度が広がった今、小林製薬のヒット商品は海を越える潜在力を持ち始めた。

(加藤彰介)