台風21号の被害を受けた
関西国際空港は8日、国内線に続いて国際線の運航を再開した。運営会社の
関西エアポートは早期の完全復旧を目指し、発着便の大阪国際(伊丹)空港などへの臨時移管計画も浮上しているが、当面は大幅な減便を迫られる。
訪日外国人客の3割弱が関空から入国する。関空の機能低下が長引けば、日本のインバウンド消費を失速させかねない。
運航を再開した国際線の搭乗手続きをする訪日客ら(8日午前、
関西空港)
全日本空輸と格安航空会社(LCC)の
ピーチ・アビエーションが上海線や香港線など、合計14便を発着させた。
関空は台風による浸水被害などのため4日に閉鎖した。国際線は4日ぶりの運航となり、搭乗ゲートには早朝から帰国する訪日客らが集まった。
関空では2017年度に1日平均334便の国際線(旅客)が発着した。8日はその4.2%にとどまる。再開したとはいえ、本来の状況にはほど遠い。17年の
関空の外国人入国者は716万人と、成田空港(764万人)に次ぐ日本の空の玄関。完全復旧が遅れれば、訪日客の誘致に水を差す可能性がある。
地元の大阪市ではすでに顕在化している。鮮魚店や青果店などが軒を連ね、普段は食べ歩きする訪日客らでにぎわう人気スポット、黒門市場を7日に訪ねるとひっそりとしていた。台風通過前に比べ、売上高が5割減った店舗もある。
日本経済新聞が7日に実施した、訪日客に支持される小売りや外食など30社・店の聞きとり調査によると、8割が台風通過後に減収となったと回答した。フグ料理店「玄品」を運営する
関門海の担当者は「
黒門市場の店舗の売り上げは半分近く落ちこんでいる」と話す。
関西エアポートは被害の少なかった第2ターミナルとB滑走路を使い、国内線や国際線の運航を再開した。正常化には第1ターミナルとA滑走路の復旧が欠かせない。浸水したA滑走路は9月中旬、タンカーが衝突した連絡橋を走る鉄道は10月上旬の再開をそれぞれ目指している。
ただ、
全日空や
日本航空などが利用していた第1ターミナルは、浸水による変圧器の故障で停電が続く。7日にようやく排水をほぼ終えたため、状況把握の段階にある。
関西エアポートの山谷佳之社長は8日、同社が運営する
伊丹空港に40便、
神戸空港に30便の発着を一時的に移管する余地があると明らかにした。国内線や国際線の区別はしていない。実現には課題もあるため、
関空の減便は当面、続くとみられる。
8日には国際貨物便の運航も再開した。エマヌエル・ムノント副社長は「第1ターミナルの貨物エリアは影響の大きかった場所の1つ。補修会社が損害状況を評価している」と話し、旅客便と同じく減便が続く見通しを示した。
関西エアポートにとっては経営への影響も懸念される。同社幹部は「当社が施設の復旧費用を負担することになりそう。ただ、保険金である程度はまかなえる見通し」と説明する。同社は
関空で免税店を運営しており、訪日客の旺盛な購買需要の恩恵を受けてきた。
関空の欠航は日本のインバウンド消費だけでなく、
関西エアポートの業績にも影響するかもしれない。
同社内では「大規模な自然災害が起こると、旅客は減る傾向にある。
関空が再開しても、台風通過前の訪日客のにぎわいを取り戻すには数カ月かかるかもしれない」との意見も出ている。
(大阪経済部 岡田江美)