注目の東京都知事選挙は、小池百合子氏の圧勝に終わった。この結果は、小池氏にとっても想定以上のものではなかったのかと思う。それほど“みどりの旋風”を巻き起こす選挙だった。最終日の池袋駅前での街頭演説には、5000人の人々が押し寄せ、「百合子コール」が自然にわき上がった。池袋は、衆議院議員としての小池氏の地元だったが、ここまでの経験はなかったのだろう。思わず感涙を流していた。
これが組織動員をかけた結果なら、別段不思議はない。組織動員はゼロ、すべてSNSなどで知った都民が自主的に押し寄せたのだ。こんな選挙戦は、まったく異例だ。かつて小泉純一郎氏が首相時代も、どこに行っても多くの人々が押し寄せた。それでも、かなりは組織動員だった。
都政改革への覚悟を持っていた小池氏
多くの都民がその覚悟を感じたのは小池氏だったということだろう。自民党の支持を得られる保証がまったくないもとで、「崖から飛び降りる覚悟」で立候補を表明し、自民党、公明党が増田寛也氏を担ぐことがほぼ確定した状況でも、「名誉ある撤退こそが、私にとって不名誉」と言い放った。
簡単なことではない。小池氏は環境相、防衛相などを歴任した自民党政治家である。仮に、知事選挙に負けていたなら、自民党から厳しい処分を受け、政界復帰の道は断たれることになったであろう。まさに小池氏が語ったように、退路を断った決断であった。“くそ度胸”と言っても良いぐらいの大決断だ。おそらくこんな決断は、男にはできない。
石原伸晃東京都連会長などは、「11日の会議には小池氏も招いている。そこで増田氏の推薦が決まれば、(小池氏が)立候補を取りやめることもあるのでは」などと語っていた。下村博文衆議院議員も、「なぜ小池氏は来ないのか。この会議で候補者を決めるのだから、来て推薦を求めれば良いではないか」という趣旨の発言を行っていた。小池氏を降ろして、増田氏推薦する会議に、小池氏が参加するはずがないではないか。小池氏をなめ切った対応をしていた。
民進党、共産党などが推薦した鳥越俊太郎氏の場合はどうか。そもそも政治経験がまったくなく、公約すら候補者に決まってから考えるような人物に、誰が都政改革への意欲を感じるのか。実際、選挙戦を見ても、政策論争などまったくできない人物であった。ただニュースキャスターとして名前が売れていたというだけだ。
醜悪だった自民党東京都連
それを端的に示すのが、石原伸晃都連会長と都連幹事長の内田茂都議らの連名で出された「都知事選における党紀の保持について」と題する文書だ。その趣旨は、“自民党所属の各級議員(親族を含む)が、党の非推薦候補を応援した場合は、除名等処分の対象となる”というものだ。
いったい自民党東京都連の時代感覚はどうなっているのか。夫婦であろうと親子であろうと、どの政党、どの候補者を支持するかは、一人ひとりの独立した判断だ。それとも自民党という政党には、家族には政党支持の自由もないということなのか。こんな時代錯誤の文書を出して恥ずかしくない感覚というのは、空恐ろしい。
石原氏の話は、「大年増の厚化粧がいるよな。これは困ったもんでね。私はあの人はウソつきだと思いますよ。厚化粧の女に任せるわけにはいかない」 と小池氏に罵詈雑言を浴びせるだけの低レベルなものでしかなかった。これを知った小池氏に、「今日は、薄化粧できました」と軽くいなされただけだった。息子の石原伸晃氏は、小池氏批判を続けた後、「今日をもって小池氏は自民党の人間ではないと思っている」と 「追放宣言」まで行った。
これに対して、知事選に出馬した山口敏夫元労相が実に的確な批判を選挙中に行っていた。「老いた慎太郎さんに選挙の応援を頼んだのがせがれの石原伸晃。伸晃はもうすぐ60歳。大臣もやってる。それが5歳や10歳の子供じゃあるまいし、『父ちゃん、俺たちの担いだ候補が負けそうだから、ぜひ応援して下さい』と応援ベンチに引っ張り出した」「挙げ句の果てに小池批判をさせた。結果的に小池さんだけでなく、全国の女性を怒らせて、小池さんを応援するようなことになった。慎太郎さんも親バカだから、せがれに頼まれたら引き受けちゃう。しかし、頼むせがれはもっと頭が悪い」
「都議会のドン」などという存在を許してはならない
小池氏の公約の1つに、2020年東京オリンピック、パラリンピックの利権にメスを入れることや、都民の負担を軽減するということがある。大賛成である。もともと東京でオリンピックをすることに、大きな疑念を持ってきた。大阪とか、福岡というのなら、理解はできる。しかし、これほど東京に何もかもが集中している現状のもとで、巨額の資金を投下してオリンピック行う必要があるとは、到底思えないからだ。
この内田氏が監査役を務める東光電気工事という会社が、内田氏の地元である千代田区にある。この会社が、大手建設会社などとジョイントベンチャーを組んで、バレーボール会場の「有明アリーナ」(落札額=約360億円)、水泳の「オリンピックアクアティクスセンター」(約470億円)の施設工事を受注しているというのだ。このほかにも、この会社は豊洲新市場の関連工事など、東京都発注の工事をたびたび受注し、売りあげを急速に伸ばしているというのである。