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2016年8月1日号。
<小池さん、増田寛也副知事というのは絶妙の一手だと思うのですが>。
3時起床。
池上彰大明神にははるかに及ばないが、都知事選を巡る、昨日のこの日記の分析はだいたい当たっていたでしょう(笑)。安倍晋三首相が出てこない段階で「勝負あった」なのである。
<東京都知事に大差で小池氏 初の女性/ 得票290万票超える>
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG29HBB_R30C16A7MM8000/
<舛添要一前知事の辞職に伴う東京都知事選挙が31日、投開票され、元防衛相の小池百合子氏(64)が初当選を決めた。所属する自民党の支援を得られないまま出馬。「都政の透明化」などを掲げ、元総務相の増田寛也氏(64・自民、公明、日本のこころ推薦)、ジャーナリストの鳥越俊太郎氏(76・共産、社民、生活推薦)らを大差で破った。初の女性都知事になる。>
大マスコミは「組織固め」をしたはずの増田寛也元総務省との意外な大差に驚いているが、私と、この日記を今朝も確実に配信作業をしてくれている世論社の高橋ヨロン社長にとってもおそらく、意外でも何でもない。え?ヨロンさん、俺に聞かずに決めるなって?いや、昔話なので許して。田中康夫さんの最初の選挙の時を思い出したのである。相手は副知事で県内のあらゆる談合組織の支持をとりつけた。もちろん怪文書もバラまいた。今回の増田陣営のやり方そっくりだった。
まだこんなことをしているのかと知って私は仰天し、都議会の体質の古さと腐敗を思ったし、それを御しきれない自民党の都連の握力の弱さに驚いた。しきりに「都議会のドン」を週刊誌が書き始めたというのは、やっとそうしたことが表沙汰になったわけだ。あの信州の選挙戦のとき、途中から「安曇野の軍師」と呼ばれるようになったヨロンさんと私は、投げ込まれる怪文書をサイトに徹底的にアップした。どういう下劣で卑劣な連中が相手側にいるのかを、人々は知った。今回も、命取りになったのはこれだ。
<親族が応援でも除名/自民都連の通告文は憲法を完全無視>
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/185670
<文書は11日付。都連会長の石原伸晃経済再生担当相、幹事長の内田茂都議らの連名で、「都知事選挙における党紀の保持について」と題し、〈党公認、推薦候補者以外の者を応援してはならない〉とある。まあ、ここまでは仕方ないとしても、問題は次のくだりだ。「各級議員(親族等含む)が非推薦の候補を応援した場合は(略)除名等の処分の対象となります」。
これは仰天だ。この書面通りなら、親族に1人でも自民党員がいれば、一族郎党すべてが党紀に拘束されるということだ。憲法19条は「思想・良心の自由」を保障しているが、完全無視である。>
そう。これが報じられた瞬間、私は増田さんは負ける、それも大負けをすると推測した。田中さんの選挙の時は、私たちはこういうような旧態依然の馬鹿がやらかすことをコツコツとネットであげていったが、今はこのようにメディアがあっという間に報じてくれる。二つのことが起きただろう。ひとつは「判官贔屓」であって、ここまでイジめられるなら小池百合子さんを応援しようではないか、という有権者の動きだ。
『バイキング』でも取り上げられたが15年の総選挙の時に「策士」橋下徹さんは自分の党について投票前に「敗北宣言」をした。「それはあかんやないか」と投票に行かなかった人々が出かけていった。今回もそうだろう。投票率あがった部分のかなりが「小池を落してはいけない」という無党派層からの応援票であって「当日はしかし遊びに行きたいなあ。梅雨もあけるだろうし」で、
<都知事選の期日前投票、過去最高>
http://www.yomiuri.co.jp/election/local/20160730-OYT1T50106.html
<告示翌日の今月15日から29日までの15日間の投票者数は131万7584人に上り、過去の都知事選の同期間と比べると、最も多かった2012年の93万8278人を大幅に更新した。>
ということになったのである。
もうひとつは先の記事が触れているように「憲法」だ。そこまで深く考えなくとも左巻き、もとい権利に敏感な方々はこういう「統制」を極端に嫌う。朝日新聞的に書くと「戦前の軍靴の響きが聞こえて」きちゃうのである。本来なら鳥越俊太郎さんに投票するところだが、エロ爺さんはもう何が何やらわからないし、東京五輪に時にご存命かどうかも不明だ。だったら「増田を落してやろう」ということで、そちらから小池さんに流れた票も多かったのではないか。
後付けみたいで嫌なのだが、選挙の結果が出るまでに予想屋のようなことをするのは私はもっと嫌だ。だから書かないで来たけれども、増田陣営のこの文書、期日前投票の異様な伸び、そして何よりも「首相動静」をあわせ見て、私は小池さんの大勝を確信していたのである。そしてこれは安倍晋三首相にとって、どうせ小池さんが勝つならそうでなければいけなかった。
さあ、ここから怖い話になる。あくまでも私の推測ですよ。将来的に安倍さんに叱られるかも知れない(笑)。小池さんのことを安倍さんが嫌っているとしきりに大マスコミは書いてきた。安倍さんの周囲は嫌っている。しかし、実は安倍さんは「どうでもいい」という程度なのである。それよりも、実は石原伸晃東京都連会長のことの方が、安倍さんは苦手なのではないか。私は彼はそんな能力はないと思うが「ポスト安倍」を以前から狙ってきたことは間違いない。小池さんは石破茂さんの陣営に乗っかった程度の「反逆」だったが、思い出してみよう。12年の自民党総裁選挙では石原さんは候補者として安倍さんに直接、弓を引いたのである。この時の石原さんの行動は党内から批判を浴びた。
<自民・石原を襲う「谷垣の怨念」!謀反と長老支配復活への逆風/「伸晃許すまじ」で一致結束>
http://www.asyura2.com/12/senkyo135/msg/622.html
<谷垣禎一総裁(67)を出馬断念に追い込んだ手法は、永田町に新たな怨念を生んだ。石原氏に対する「平成の明智光秀」という異名も定着し、「長老支配の復活」に対する党内の抵抗感も根強い。次期衆院選をにらみ、石原氏には逆風も吹き始めている。>
長老支配の打破といえば聞こえはいいが、ただの権力欲だと周囲はずっと見ていた。石原さんを大臣などに安倍さんが起用したのは、能力に見合わない地位を与えて自滅させる「位打ち」だと私は何度か書いてきている。石原さんは谷垣さんを裏切った。ここからは三文作家の想像なのだが、ずっと自分を、誠心誠意支えてくれていたその谷垣禎一さんが倒れていることも、ひょっとすると安倍さんの感情的な部分のどこかにあったのではないか。増田さんが勝てば、石原さんの手柄である。「嫌だなあ」と安倍さんが思ったかどうか。繰り返すが、あくまでも私の想像だ。だが、結果はこうなった。石原さんの力はまた削がれたというべきであろう。
<「完敗だった」と釈明した石原伸晃・自民党都連会長に都連幹部は「執行部は総退陣だ」>
http://www.sankei.com/politics/news/160801/plt1608010012-n1.html
<安倍晋三総裁(首相)の下で国政選挙4連勝中の自民党は、保守分裂の首都決戦で手痛い黒星を喫した。閣僚らを投入する国政選挙並みの総力戦を展開したが、小池百合子氏に完敗。党都連会長の石原伸晃経済再生担当相の責任が問われるのは必至だが、石原氏は党推薦の増田寛也氏の事務所で敗戦の弁を述べただけで、早々に「逃走」した。>
そういうヒトなのである。今はじめて読んだのだが、この記事の後半には、私がまったく別のルートからさきほどのように見立ててきたのとほぼ同じことが書かれている。おおっ。記者クラブの偉い方々と推測が一致したぞ(笑)。
知事に必要だと私が考える要件として昨日「哲学と教養と勇気」と書いた。田中康夫さんから早速メールを頂戴したが、内緒。私ごときが言わなくとも、良民常民の有権者の方々は、本能的にこれがわかっているように思われる。小池さんを存じあげないのでわからないが、少なくとも「勇気」は「崖から飛び下りる」ことで示した。これは大きかった。次の「勇気」は都議会との対決だが、ここでは「蛮勇」ではなく「話し合うことこそが手間がかかる勇気」であることを示して欲しい。「哲学と教養」についてもみんなで広い心で見守っていこうじゃないですか。
ちなみに。増田寛也筆頭副知事というのはありですよ。行政官としては卓越している。都議会対策に彼を矢面に立てれば、推したヒトたちなんだから文句を言いにくい(笑)。とったコマを使うこれこそが、日本的な将棋の戦法というものである。
後略
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勝谷誠彦、
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発行:株式会社 世論社
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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成28年(2016)8月1日(月曜日)
通算第4975号 <臨時増刊>
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都知事選挙の結果は日本人特有の判官贔屓が鮮明にでたためである。
無党派の勝利などと単純明快な説明は耳に凧。それより鳥越惨敗の背景を政治的にさぐる必要がある。
改憲阻止、野党結集を呼びかけて、野党四党が結束したにもかかわらず敗退してしまった。公約なし、出遅れ、週刊誌などと敗因が語られているが、肝心のことを忘れていないか。
すなわちレーニン以来の左翼戦術が敗退したことである。
共産党の鉄壁の組織票さえ、二割前後が小池候補に流れたというのは、組織的締め付けが弛緩し、革命組織の紀律が破裂している事実を示唆してあまりある。
レーニンは少数派ボルシェビキ率いて、「野党共闘」により革命を成功に導く。メンシェビキ(多数派)の壁を破り、かれらが実権を握るには、議会を長引かせ、徹夜も厭わず、議論に疲れた多数派が退場したと見るや、採決を強行し、主導権を握る。これがレーニンの組織論であり、のちに毛沢東が援用する。
日本でも左翼暴力団といわれた全学連が自治会選挙で、よく使った手段である。
自治会の一割にも満たなくても「組織された」党員が、多数派と連立を組んだかに見せ、議会を出席議員数でクリアし、多数派が退場したところで、居残った「組織された」メンバーが投票を行い、トンデモナイ議案も突如成立する。
その決議は合法となる。
鉄の組織は、日本では弱体化した。野党四党の連立パターンは化けの皮が剥がれ、ついに左翼退潮の明確な兆しをしめしたのではないのか。
レーニンの連術は死に絶えつつあり、トルコのクーデタ失敗や米国のトランプ現象のように、新しい武器はツィッター。このハッカー戦争を主導できる者が、これからの政治の中枢に躍り出てくるだろう。
第三位の上杉、四位に食い込んだ桜井各候補も、組織票の宗教団体を超える得票を示している。何かが壊れ、従来になかった政治手法が、これから本格的に登場する契機となったのが、こんかいの都知事選挙だったように思える。
△◎◎ミ□◇▽ヤ□◎○ザ◎□○キ○□◇
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