パルデンの会

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人心を惑わす野党の面々や、それを十分説明なき与党の面々!


「老後2000万円」は余裕の原資 年金の誤解を解く 「老後に2000万円」をマネーハック(1)

2019/7/1
写真はイメージ=123RF
今月のマネーハックは「老後に2000万円」をテーマに取り上げます。たった1カ月ちょっとで、国民のほとんど全員が知っているキーフレーズとなりました。しかしこれまでの様子を見ると、「誤解」が多いようです。
■大騒ぎになった「老後に2000万円」問題
今回の「老後に2000万円」問題の発端は、金融庁の金融審議会市場ワーキング・グループの報告書です。国が老後の自助努力を促すものとの報道をはじめメディアで数多く取り上げられ、多くの政治家や有識者らが見解を語りました。さらに、国民もインターネット上でたくさんの意見を述べることとなりました。
茶店で仕事をしていると、隣のグループが「老後に2000万円」と話をしていますし、ファミリーレストランや居酒屋でも「2000万円」という言葉がよく聞こえてきます。
議論が深まるのならとてもいいことですが、残念なことに誤解や不信に基づくミスリードな発言やコメントが少なくない印象です。いまだに不信感が解消されていない人もいるようです。
そこで今回は「老後に2000万円」で誤解されている点を指摘し、あなたの将来のために老後資産に対する理解を深めてほしいと思います。
公的年金は破綻しない、老後の主たる収入源
今回の話で、「国の責任放棄だ」「年金がもらえないのか」といった批判がありますが、それらはおおむね間違いです。
なぜなら、公的年金はまず破綻しないからです。今回の報告書もそうした指摘をしたものではありません。給付水準は引き下げられますが、それによりむしろ破綻リスクは回避されます。また平均寿命の延びを勘案すれば「毎月もらう分が減っても、長く受け取る」ことになるので、そうそう不利益な話ばかりではありません。
老後の収入のほとんどを年金が占めています。現状、年金生活している高齢夫婦(夫が65歳以上、妻が60歳以上の夫婦のみの無職世帯)が使っている費用が月26.4万円のところ、公的年金など社会保障からの収入は19.2万円です。
65歳の女性の平均余命が24年であることを踏まえ概算すると、年金は5500万円を超える収入源となります。信じられないかもしれませんが、20年以上にわたり年金を受け取り続ければ、家一軒買える以上の金額を私たちはもらうことになるのです。年金が老後の主たる財源であることは、これからも変わることはないでしょう。
また、そもそも公的年金は老後の全てをまかなうものではありません。そのような時代は過去一度もあったためしがありません。公的年金が確立されるまでは子にすべて扶養してもらう時代が長く続きました。
すると、今回の指摘は「誰も教えてくれないお金の常識」をはっきりさせただけのように思います。つまり「退職金に加えてプラスアルファのお金を多くためておいた人のほうが、リタイア後ラクに暮らせるよ」という事実です。
■老後の「生きがい」「ゆとり」のため
ほとんどの年金生活者は「公的年金収入」と「日常生活費」がほぼ等しくなるように家計をコントロールします。隔月で振り込まれる安定収入以上に生活費を使うのは誰でも不安だからです。
先ほど紹介した報告書における収支状況は総務省の家計調査年報(2017年)を踏まえたものですが、収入が月20.9万円(公的年金以外の収入を含む)で、日常生活費にかかる支出が月21.1万円と、ほぼ同じ額になっています。
では、月5.5万円(=26.4万円-20.9万円)の取り崩しは主に何に用いられているのでしょうか。それは「教養娯楽費」と「交際費」です。これらの合計が月5.2万円であり、毎月の不足額とほぼ等しくなります(支出の合計額が一致しないのは端数処理のため)。
つまり、私たちは老後に食事をする余裕もなくなるから2000万円をためるのではありません。むしろ、映画を見たり、美術展に出かけたり、時々旅行に出かけたり、孫にプレゼントをするような「生きがい」や「ゆとり」のために2000万円を使うのです。
これらは食費や日用品費、被服費ではなく、日常生活費ではありません。だから切り詰めることもできます。しかし、せっかくの長いセカンドライフですから、できれば生きがいを感じられる生活にするためにお金を使いたいものです。2000万円あれば、そうした楽しみにお金を回すことができるというわけです。
■若い頃から備えるほど多くなる老後のお金
皆さんの両親や祖父母、あるいは親戚や町内の顔見知りの方などを見回してみてください。老後に余裕があって暮らしている人たちはみな、退職金にプラスアルファの経済的備えを持ってリタイア生活に入った人であるはずです。
逆にいえば、住宅ローンなどをリタイアまでに完済できず退職金でようやく返済した人、老後に備えて財形年金や社内持ち株会などで何も積みたてていなかった人は、公的年金収入のみで取り崩す財源がなく、きゅうくつな老後生活を暮らしているはずです。
世の中にはきちんと教えてもらうことができないお金の常識がいくつもあります。金融リテラシーなどと呼んでこれを教育しようとする動きもありますが、「老後に2000万円」も私はそのひとつに加えるべき(あるいはもう加わっている)項目だと思います。
貯金ゼロで収入が公的年金だけで老後に突入していいと誰も思っていないはずです。今回の報告書ではっきり言ってもらえることは悪いことではありません。なぜなら、早く気がついた人ほど、長く備える時間を持つことができるからです。
そして長く備えた人ほど、たくさんのお金を老後に残すことができます。10万円ためれば老後の小旅行が1回、100万円ためれば10回行ける、というように考えてがんばってみるのが「老後に2000万円」問題との向き合いかたです。
貯蓄額が増えるたび、あなたの老後の「やりたいことリスト」の中で実現できるものを増やしていくことができる、と考えてみてはいかがでしょうか。そのほうが、自分の老後に備える意欲が高まってくると思います。
マネーハックとは ハックは「術」の意味で、「マネー」と「ライフハック」を合わせた造語。ライフハックはIT(情報技術)スキルを使って仕事を効率よくこなすちょっとしたコツを指し、2004年に米国のテクニカルライターが考案した言葉とされる。マネーハックはライフハックの手法を、マネーの世界に応用して人生を豊かにしようというノウハウや知恵のこと。
山崎俊輔
フィナンシャル・ウィズダム代表。AFP、消費生活アドバイザー。1972年生まれ。中央大学法学部卒。企業年金研究所、FP総研を経て独立。退職金・企業年金制度と投資教育が専門。著書に「読んだら必ず『もっと早く教えてくれよ』と叫ぶお金の増やし方」(日経BP)、「スマホ1台で1000万円得する! マネーアプリ超活用術」(PHP研究所)など。http://financialwisdom.jp