パルデンの会

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「ズーム疲れ」はなぜ? 大きな負担、脳にかかる  そして「ズーム」データを中国に送信

 

ナショナルジオ・グラフィック より引用

 
パンデミックをきっかけにさまざまなビデオ会議ツールが使われるようになり、思いがけない社会実験がスタートしている(PHOTOGRAPH BY BENJAMIN RASMUSSEN)

2020年4月15日、米リーハイ大学の宗教学教授、ジョディ・アイクラー=レヴァイン氏はビデオ会議アプリ「ズーム(Zoom)」での講義を終えると、そのまま仕事場として使っている客用寝室で眠りに落ちた。以前から講義は疲れるものではあったが、こんな「昏倒」するように寝入ってしまったのは初めてだという。

つい最近まで、アイクラー=レヴァイン氏は、実際の教室で大勢の学生を相手に講義を行っていた。そこでは、学生たちがどう感じているかを容易に把握できた。だが、新型コロナウイルス感染症COVID-19のパンデミック(世界的な大流行)によって、その環境は一変した。

世界の人たちと同じように、彼女の生活はバーチャル空間に追いやられた。リモート講義のほかにも、週に一度の学部懇親会、友人たちと芸術について語り合う会、ユダヤ教の「過越(すぎこし)の祭り」など、さまざまな会合にズームを通して参加することになった。その代償が今、彼女に大きくのしかかっている。

 

ビデオ会議はなぜ疲れるのか

人間は、何も話していないときにも情報のやりとりを行っている。直接の対話においては、脳は話されている言葉に注意を払うと同時に、非言語的な手がかりからもさまざまな意味を読み取っている。たとえば、相手が自分にまっすぐ向いているのか、それとも少し斜めなのか、話をしながらそわそわと体を動かしているのか、話をさえぎろうとすばやく息を吸い込んだのか、といったことだ。(PHOTOGRAPH BY BENJAMIN RASMUSSEN)

 

そうした手がかりは、話し手が何を伝えようとしているのか、また聞き手にはどんな反応が期待されているのかといった全体像を把握するうえで役に立つ。人間は社会的動物として進化してきたため、大半の人はそうした手がかりの意味を自然に読み取り、感情的な親密さの基礎を築くことができる。

一方、ビデオ会議では、言葉に対して継続的に強い注意を向けることが要求される。たとえば、ある人の肩から上だけしか画面に映っていなければ、その人の手の仕草やボディランゲージを見る機会は失われる。またビデオの画質が低い場合は、ちょっとした表情から何かを読み取ることは不可能だ。

「そうした非言語的な手がかりに強く依存している人にとって、それが見られないというのは大きな消耗につながります」と、フランクリン氏は言う。

ギャラリービューによる消耗はさらに深刻だ。ギャラリービューでは会議の参加者全員が同じ大きさで画面に映し出されるため、脳はいやおうなしに、たくさんの人の表情をいっぺんに解読することになる。その結果、だれからも意味のある内容を読み取れないこともある。(PHOTOGRAPH BY BENJAMIN RASMUSSEN)

 
 

「現代人は特定のことに完全に集中することがなく、常にいくつもの活動に従事しています」と、フランクリン氏は言う。心理学者はこうした状態を「継続的な注意力の断片化」と呼んでおり、これはバーチャルな環境にも、リアルな環境にも当てはまる。グループでのビデオチャットの多くが失敗に終わるのは、たとえば料理と読書を同時に行うような、非常に難しいマルチタスクを同時にこなそうとするからだ。

 

また、グループでのビデオチャットでは共同作業性は低下し、一度に話すのは2人だけで、残りの人たちがそれを聞いているという状態になりやすい。すべての声が参加者全員に届くため、同時に別の会話をすることができないからだ。そして話をしているだれかを注視すると、声を出さない参加者がどんな態度を取っているかは把握しにくい。一方、通常の会議であれば、そうした情報を周辺視野にとらえることができるだろう。

人によっては、長時間にわたって注意力が分散された状態が続くと、何もやり終えていないのに消耗したという奇妙な感覚を覚えることもある。脳が、非言語的な手がかりを求めて過剰に集中し、慣れない刺激を過度に受けることによって、くたくたに疲れてしまうのだ。

昔ながらの電話の方が脳への負担が少ない理由はそこにあるのかもしれないと、フランクリン氏は言う。なぜなら電話が果たす役割は、一人の声だけを届けるというささやかなものだからだ。

一方で恩恵も

一方で、ビデオ会議への急激な移行は、複数の人が話している状態にストレスを感じる自閉症の人など、対面でのやりとりに困難を抱える人にとっては恩恵となっている。

ニュージャージー州の報道機関「クライメート・セントラル」の編集者、ジョン・アプトン氏は、最近になって自らが自閉症であることを知った。昨年末、アプトン氏は、人が大勢集まる会合に出席したり、対面での会議に参加したり、職場で交わされる世間話をしたりといったことから生じる「おぼろげな緊張感や不安」といった精神的な負担に悩まされていた。もし自分が人からの評価を気にしすぎている、あるいは過剰な刺激を受けていると感じたときには、カメラをオフにして自分のエネルギーを節約しよう(PHOTOGRAPH BY BENJAMIN RASMUSSEN)

 

今ではパンデミックによって同僚たちが皆、リモート勤務となった。ビデオ会議では、通常の会議よりも話をする人数が少なく、会議前後の世間話も短くなった結果、アプトン氏は、自分が感じていた緊張や不安は大幅に軽減されたと述べている。

アプトン氏のこうした経験は研究によって裏付けられていると語るのは、発達障害者や知的障害者のオンラインにおける交流を研究している、カナダ、ケベック大学ウタウエ校のクロード・ノルマン氏だ。氏によると、自閉症の人たちは、会話の中で自分がいつ話すべきなのかを理解しづらい傾向にあるという。そのため、ビデオ会議で頻繁に生じる発言と発言の間のタイムラグが、一部の自閉症の人にとって有利に働いていると考えられる。「ズームを使っているときには、次に話すべきはだれなのかが明確ですから」と、ノルマン氏は言う。

 

いずれにせよ、ビデオ会議は、わずか数年前には不可能だった方法で、人と人とを結びつけてくれている。

ビデオ会議が引き起こす精神的な混乱に、人々がうまく対処することを覚えれば、いずれはズーム疲れを軽減することができるようになるかもしれない。もし自分が人からどう見られているか気にしすぎている、あるいは過剰な刺激を受けていると感じたときには、カメラをオフにするようにと、ノルマン氏は勧めている。可能であれば電話で会議を行い、それを歩きながらやってみるのもいいだろう。

「歩きながら話をすることは、創造性を向上させ、ストレス軽減にも寄与することがわかっています」と、ノルマン氏は言う。

(文 JULIA SKLAR、訳=北村京子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2020年5月6日付]

 

 

ビデオ会議アプリ「ズーム」データを中国に送信 株主は集団提訴

台湾政府は最近、セキュリティ上の懸念が指摘されているビデオ会議アプリ「ズーム(Zoom)」を公務で使用することを禁止すると通知した。米連邦捜査局(FBI)もズームの安全性に警戒が必要だと呼び掛けていた。

台湾の行政院は4月7日、ウイルス肺炎の流行が国内で進行していることを受け、各機関は遠隔テレビ会議システムの利用も可能だとした。しかし、ズームなどセキュリティの懸念が指摘されるソフトを使用しないよう通知した。

FBIは3月30日、在宅会議や授業が増加するなかズームの利用者が増えているが、不審者の映像に繋がったり、ポルノが流れたりするなどのトラブルが報告されているとして、利用について注意するよう警告した。これを受けて、ニューヨーク市は6日、情報セキュリティ上の懸念から、市内のすべての学校が遠隔教育活動にズームを使用することを禁止する通知を出した。

ズームを運営するズーム・ビデオ・コミュニケーションズ社によれば、2019年12月には1日当たり約1000万人だった利用者が、今年3月には約2億人に急増した。同社の株価は、1月3日~3月18日までの間に倍増し、自社株の46%を保有するエリック・ユアン(袁征)創業者兼最高経営責任者(CEO)の保有資産額は55億ドル(約6000億円)となった。ユアンCEOは、2020年の「フォーブス」誌の長者番付にランクインした。

しかし、セキュリティ問題が浮き彫りになり、4月8日、株主は同社を証券詐欺で提訴した。ブルームバーグによると、訴状は7日、サンフランシスコの連邦地裁に提出された。投資家のマイケル・ドリュー氏らを含む株主は、ズームと同社の経営幹部は、ハッカーに対する脆弱(ぜいじゃく)性などアプリの暗号化ソフトの欠陥や、ソーシャルサイトを含む第三者に個人情報を無許可で開示していた事実を隠していたと主張した。

ズーム、中国にデータ送信

カナダのトロント大学のインターネット研究機関シチズン・ラボ(Citizen Lab)の調査報告によると、ズームは、標準外の暗号化方式を使用しており、中国にデータを送信していると指摘した。

報告書によると、「北米での複数回のテスト通話では、会議の暗号化と復号化のキーが中国北京のサーバーに転送されているのが確認された」とした。

ズームは、米カリフォルニア州サンノゼに本社を置くが、中国の3つの支社で合計約700人の従業員がアプリの開発に携わっている。 

米国戦略国際問題研究センターの非常勤研究員であるジェイコブ・ヘルバーグ氏は先週、「ズームの技術チームのほとんどは中国にある」とツイートした。また、「企業や政府の機密を保護することについて懸念している人たちは、機密性の高い会話をすることはやめるべきだ」とズームの利用に警戒を呼び掛けた。

中国サイバーセキュリティ法によると、官民および国内・海外企業問わず、企業や組織は政府の要請に応じてデータを提供する義務がある。

ズームのユアンCEOは3日、一部のビデオ会議データが「誤って」中国に送信されていたことを認めた。

しかし、オーストラリアの情報専門家・呉楽宝氏は7日、米ボイス・オブ・アメリカ(VOA)に対し、「誤り」だとは思わないと語った。「これほど大きな技術企業が、誤って中国に送ったという愚かなミスを犯すとは考えられない」

米ペンシルベニア州西部地区のスコット・W・ブレイディ連邦検事と同州のジョシュ・シャピロ司法長官は7日、全米で利用が増加しているズームなどのビデオソフトのハッキング問題に対応し、厳しく処罰する意向を明らかにした。

(翻訳編集・佐渡道世)