パルデンの会

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バイデン米政権の対中政策

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拓殖大学国際日本文化研究所教授 ペマ・ギャルポ

 

当面は強硬姿勢を継続か
日本は米国の頼れる同盟国に

 

ペマ・ギャルポ氏

拓殖大学国際日本文化研究所教授
ペマ・ギャルポ

 アメリカの大統領選は難産であったがジョー・バイデン氏が第46代大統領として1月20日正式に誕生した。日本国内では私を含め彼の副大統領時代の言動などから、もしかしたら中国に対し軟弱ではないかという心配があった。ただし今回の大統領就任から今日までの彼の政策や発言などを総合的に見ると、中国に対して手法はともかくトランプ政権の対中政策を多く変えるような様子がなく、むしろ継続的に強硬な対中政策を維持し、現在はロシアよりも中国が脅威であるという認識を、彼自身も、また彼の閣僚も明確に示している。

台湾問題に素早く対応

 例えば台湾問題に関し、大統領の就任式に台湾の駐米代表を招き、さらにその数日後の23、24日に中国が台湾の防空識別圏内に侵入したことにも素早く強い批判とともに対応した。またブリンケン新国務長官チベット問題に対し、今までの議会の決議などを引用しながら、中国のチベットにおける弾圧を批判するとともに、できるだけ早いうちにチベット担当調整官(大使)を任命すると約束した。ダライ・ラマ法王の後継者についても中国が干渉すべきではないということを明確にした。

 その他、ウイグル、あるいは南モンゴル、香港問題についてもトランプ政権同様の政策をさまざまな形で明言している。またコロナウイルス蔓延(まんえん)中にもかかわらず、中国の武装海警は連日のように尖閣諸島周辺への侵入を繰り返している。

 大統領就任前後の2度にわたる菅義偉首相との電話会談でバイデン新大統領が、尖閣諸島日米安保条約の第5条の適用範囲に含まれることに言及したことは、同盟国として当たり前とはいえ、中国を含め世界中が注目しただろう。さらに大統領はアメリカ国内における中国のさまざまな形のサイレント・インベージョンに対しても強硬な姿勢を見せている。菅首相をはじめ「クアッド」(アメリカ、インド、オーストラリア、日本の4カ国)の連携の重要性を示す意味でも、インドのモディ首相とも電話会談を行っている。

 当初「アジア太平洋」という言葉にこだわりを示していたが、「自由で開かれたインド太平洋」の重要性もトランプ政権から引き継ぎ、活発化することを政権の重要な課題に位置付けている。今後の成り行きを注意深く見守っていかなければならないが、少なくとも当初私たちが心配したような中国に対して軟弱な態度を取ることはないように思う。むしろ同盟国からの協力を強化し、中国の覇権を阻止する強い決意が見られる。

 日本ではいまだに米中を天秤(てんびん)に掛けてうまくやろうと考えている官僚や、政治家、財界のリーダーがいる。だが、私は日本が天安門事件のときのように世界の人々の信頼を裏切るようなことをするよりも、安倍晋三前首相がイニシアティブをとって始まったインド太平洋構想の中心的な役割を果たし、アメリカの頼れる同盟国として行動することの方が、愚かな忖度(そんたく)をするよりも世界から信頼されるであろう。

 アメリカにおける大統領選に関わる騒乱や、ミャンマーの軍事クーデターなど、世界全体で今、民主主義が大きな危機にさらされている。われわれは今までアメリカを民主国家の模範として頼りにし、少なくとも今の国際秩序を維持するには、民主主義の方が権威主義共産主義独裁国家よりははるかに尊いものであると認識している。それだけにアメリカが今後世界の自由と民主主義のためのリーダーシップを発揮できることを期待したい。

他の意見や自由を尊重

 日本の民主主義においても第4の権力であるメディアの暴走ならびに扇動的な姿勢を見ると、いささかの危惧を覚える。私が民主主義について一番納得できる言葉は、中国の天体物理学者の故・方励之博士がよく引用した、仏哲学者ヴォルテールの「私はあなたの意見には賛成できないが、あなたが意見を自由に述べるためには命を懸けてもよい」というものである。同博士は1980年代、中国の民主化を進めた学生たちに、多大な影響を与えたため共産党から追放されて海外亡命を余儀なくされ、そのまま亡くなられた。民主主義は他の意見や自由を尊重することも大切であることを、あえて中国の学者から学ぶべきであると痛感している