日米首脳声明「台湾」明記 「海峡の平和と安定重要」 バイデン氏、五輪開催支持
【ワシントン時事】菅義偉首相は16日午後(日本時間17日未明)、ホワイトハウスでバイデン米大統領と初の首脳会談を行った。 【写真】ハリス米副大統領の表敬を受ける菅義偉首相 中国が軍事的圧力を強める台湾問題への対応を協議し、共同声明に「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す」と明記した。日米首脳の合意文書に「台湾」が盛り込まれるのは、日中国交正常化前の1969年に佐藤栄作首相とニクソン大統領が出した共同声明以来。中国の反発は必至だ。 会談は通訳のみの1対1で約20分間行った後、少人数会合と全体会合に移り、計2時間半に及んだ。バイデン氏にとって対面による外国首脳との会談は初めて。 日米首脳は会談で、東・南シナ海情勢について、中国の「力による現状変更の試みと地域の他者への威圧に反対する」ことでも一致した。 首相は会談後の共同記者会見で、厳しさを増す東アジアの安全保障環境について「日米同盟の抑止力、対処力を強化する必要がある。防衛力強化への決意を(大統領に)述べた」と表明。共同声明に関し「今後の日米同盟の羅針盤だ。『自由で開かれたインド太平洋』構想の実現に向け、両国の結束を力強く示す」と強調した。 米国の対日防衛義務を定めた日米安保条約第5条の沖縄県・尖閣諸島への適用も改めて確認。大統領は「日本の安全を鉄壁で守る」と述べた。 香港と新疆ウイグル自治区の人権状況に「深刻な懸念」を共有。首相は会見で「わが国の取り組みを大統領に説明し、理解を得られた」と語った。ミャンマー情勢については、民主的な政治体制の早期回復を求めることを申し合わせた。 共同会見後、首相は記者団の取材に応じ、台湾情勢や尖閣諸島に関し、「厳しい状況が続いていることは事実だ。平和裏に解決することを最優先にしていく」と語った。 首相は、今夏の東京五輪・パラリンピックを「世界の団結の象徴」と位置付け、開催への決意を伝えた。共同声明には「大統領は開催するための首相の努力を支持する」と記した。 北朝鮮による日本人拉致問題に関し、両首脳は、重大な人権問題との認識を共有、「即時解決」へ連携していくことを再確認した。核、ミサイル開発に関しては、完全、検証可能かつ不可逆的な廃棄(CVID)を求めるとした。 気候変動をめぐり、両首脳は「脱炭素」を主導する「日米気候パートナーシップ」を立ち上げることで一致。大統領は来週の気候変動サミットに触れ、「野心的なコミットメントを行う」と表明した。
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日米首脳会談 経済分野も「脱中国」 5Gなどで協力拡大へ
バイデン米大統領は16日、菅義偉首相との日米首脳会談に臨み、安全性の高い第5世代移動通信ネットワーク「5G」の推進や、半導体など重要物資の供給網(サプライチェーン)構築に関する協力拡大で合意した。 【バイデン氏、首相に「ヨシ」 日米首脳会談】 バイデン政権は安全保障や経済覇権を巡って対立する中国を警戒し、安全保障上の重要な製品サプライチェーンの「脱中国依存」を目指しており、今回の首脳会談で日本から一定の協力を取り付けた形だ。 バイデン氏はホワイトハウスで行われた会談後の共同記者会見で、「日米は競争力を維持・強化する技術に投資していく」と述べ、経済分野でも中国への対抗で協調していく考えを強調。「これらの技術は専制主義ではなく日米が共有する民主主義に基づくものだ。安全で信頼できる5Gのネットワークの構築を推進し、半導体などの重要分野のサプライチェーンに関する協力を拡大する」と述べ、先端技術で台頭する中国への対抗姿勢をにじませた。 菅首相も記者会見で「デジタル経済や新しい技術が社会の変革と大きな経済機会をもたらすとの認識のもと、デジタル分野などでの研究開発の推進に日米が協力して取り組んでいく」と述べ、バイデン氏との協調関係を強調。ただ、競争力とイノベーションの強化に向け、対中国を示唆する発言は避けた。【ワシントン中井正裕】
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