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習近平政権の「ゼロコロナ」政策に対し白紙を掲げ抗議するデモが各地で起きた。その背景について、1989年の天安門事件時に抗議運動に参加し、現在は米国を拠点とする中国民主化支援組織「公民力量」の創設者である楊建利氏に聞いた。


中国「白紙デモ」の背景 原因は独裁 市民ら認識 楊建利氏

  山崎洋介  2022/12/22(木)  

インタビューfocus

 

在米中国民主化活動家 楊建利氏に聞く

 中国では11月下旬から、習近平政権の「ゼロコロナ」政策に対し白紙を掲げ抗議するデモが各地で起きた。その背景について、1989年の天安門事件時に抗議運動に参加し、現在は米国を拠点とする中国民主化支援組織「公民力量」の創設者である楊建利氏に聞いた。(聞き手=ワシントン・山崎洋介)

 

不満募り退陣要求/SNS駆使し拡散

 

天安門事件の時と今回の抗議デモとの違いは。

 われわれと異なる時代に生まれ育った今回の抗議デモ参加者は、高い生活水準を享受し、世界との交流が増え、民主主義や人権、特に個人の権利とは何かということをより理解している。

在米中国民主化活動家 楊建利氏

 楊建利氏 1963年中国山東省生まれ。米カリフォルニア大学バークリー校、ハーバード大学で博士号取得。天安門事件時に帰国して民主化運動を支援、中国当局の武力弾圧を逃れる。2002年に労働運動の視察で帰国した際に逮捕され、5年間投獄される。07年に釈放され、米国で中国民主化支援組織「公民力量」を設立。

 われわれは天安門広場で政治改革を求め抗議したが、中国共産党の退陣を要求することを考えていた人はほとんどおらず、政権を転覆する意図や計画は全くなかった。しかし、今回の抗議デモを行った世代は、自分たちが直面しているすべての問題の根本原因が中国の政治体制、つまり中国共産党や習氏による独裁だということをよく理解している。だから、ゼロコロナ政策に抗議するだけでなく、より直接的に中国共産党や習氏の退陣を要求したのだ。

 また、今はインターネットや携帯電話など通信技術がある。もちろん政府もこれを弾圧に利用しているが、抗議デモを行った人たちはインターネットを組織化のツールとして使うとともに、抗議活動の写真やビデオを、素早く世界に提供し、国際社会の注目を引くことができるようになった。

 

 さらに、今回の運動には主要なリーダーがいない。この世代は一般に親の世代が耐えなければならなかった経済的苦難をあまり経験せず、最近まで政治的な活動を行った人はほとんどいなかったからだ。また、政府によって特定され、処罰されるリスクを避けるためでもある。

近い将来、再び大規模な抗議デモが起きると思うか。

 そう思う。第一に、今回の抗議活動によって人々が中国共産党や習氏に対して抱いている恐怖心が薄れたからだ。たとえ政権による厳しい弾圧政策があったとしても、目的を遂げることができると人々は理解するようになった。

11月27日、北京市の名門・清華大で、抗議の意思を示す白紙を掲げる学生(目撃者提供・時事)

11月27日、北京市の名門・清華大で、抗議の意思を示す白紙を掲げる学生(目撃者提供・時事)

 第二に、国民の不満の根本的な原因は、何も解消されていないからだ。中国では、新型コロナウイルスに対する十分な備えがなかったため、ほぼすべての都市で感染が拡大しており、今後数週間から数カ月の間に死者が急増することになる。同時に経済状況も悪化することで、人々に絶望感を与えることになるだろう。

 今回のきっかけとなった新疆ウイグル自治区で起きた火災のような悲劇が再び起きれば、次の抗議デモの引き金になる可能性がある。

習氏は中国の政治体制の優越性を宣伝してきたが、今回の抗議デモはその取り組みにどう影響を与えるのか。

 習氏は、新型コロナへの対応において、その成果を中国の政治体制の優越性と結び付けた。東洋が台頭し、西洋が衰退しているという考えまでも売り込んだ。

 しかし、習氏が過去3年間行ってきたことのほとんどはすべきでないことだ。例えば、習氏は都市を閉鎖し、人々を家に閉じ込めて囚人のようにした。一方、感染の大流行に備え、海外産のワクチン接種を進めるなどすべきだったが、しなかった。

 

 国民がそれを理解していても、何もすることができない。これは、むしろ中国の政治体制の劣位性を示している。リーダーがやるべきでないことに没頭していても、それを抑制する手段をほとんど持たないからだ。

 

習政権崩壊の可能性も

 

抗議デモは、習氏の3期目にどう影響を与えるか。

 経済危機や新型コロナによる死者の増加などが重なれば、人々は再び抗議活動を行うことになるだろう。そうなると、指導者層の中には、習氏に挑戦しようという者が出てくることもあり得る。習政権が簡単に崩壊するとは思わないが、1カ月前に比べると、その可能性が出てきている。

多くの人が考えていた以上に、中国国民の政権に対する不満が高まっていたのか。

 長年、米国など西洋の多くの人々は、中国共産党プロパガンダを鵜呑(うの)みにしてきた。つまり、中国の国民は満足しており、政府や習氏を支持している、と誤解していたのだ。ハーバード大学ケネディスクール・アッシュセンターが10年連続で実施した世論調査によると、中国国民の90%以上が体制に満足し、支持しているという。中国外務省の報道官は1月にその調査結果を引用し、「中国政府は、国民の政府への満足度において世界最高ランクを享受している」と自画自賛した。

 しかし、今回、この世論調査が不正確であることが示された。中国の人々が政府に満足し、支持しているという認識は間違っている。抗議デモを通して、われわれは中国の人々が長年にわたって心の内に抑えてきた思いを知ったのだ。

デモ参加者たちは新疆での火災の犠牲者に哀悼の意を示したが、そこで行われている少数民族弾圧の状況を知っているのか。

 新疆での政策が中国の他の地域よりも非常に抑圧的であることを人々は知っている。なぜなら、中国はそのプロパガンダの中で、「宗教的過激派、テロリストを厳しく取り締まらなければならない」などと常に言っているからだ。中国に長く住んでいる人であれば、新疆で過酷なことが行われていることが分かる。

 また、若者はグレート・ファイアウオール(中国国内のネット検閲システム)を回避する方法をよく知っている。彼らは、新疆で重大な人権侵害が起きていることを多かれ少なかれ知っていると思う。

抗議デモへのバイデン政権の対応をどう思うか。

 バイデン政権が表明した支持には感謝するが、十分なことをしたとは思わない。報道官による発言のみで、本人は何も言っていないからだ。少なくともバイデン氏が自らカメラの前で、何か述べるべきだ。

日本を含む国際社会は、中国の人々を支援するために何ができるか。

 まず、中国でデモが行われた際に、各国は「政治的変化を求める平和的なデモを支持する」と、はっきりと表明すべきだ。同時に、中国政府に対して、抗議デモへの厳しい弾圧に対して警告を発するべきだ。習氏は支配を維持するために暴力的に弾圧する可能性が非常に高い。

 国際社会は、弾圧すれば、大きな代償を払うと直ちに表明しなければならない。それは、流血の悲劇を防ぐためだけでなく、大規模な弾圧が中国に恐怖をもたらし、習氏の支配を継続させることにつながるからだ。

 

 さらに、日本や米国などで民主派の中国人留学生との関係を築くことだ。そうすれば、中国で何か起きた際に、政府は誰に相談すればいいのか、いかに中国に支援を届けられるかが分かるはずだ。