パルデンの会

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中国は嗤っている。欧米が武器を使い果たし、ロシアが資源枯渇に陥れば熟した柿がおちるように濡れ手に粟の状態となる。ロシアを属国化し、台湾を侵攻し、軍事力でアメリカを超える日が近づいたと誤断しはじめた。

「北京は外国のことが全く理解できておらず、気球を飛ばせばアメリカが怯えると考えていたのだ(中略)。北京が外国に対していかに無頓着かがわかるだろう。だからこそ、彼らはたとえ経済で成功してとしても、戦略で必ず失敗する」

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 「宮崎正弘の国際情勢解題」 
    令和五年(2023)2月24日(金曜日)
      通巻第7651号  
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なぜアメリカは戦略を間違えてしまったのか
主要敵はロシアではなく、「あの国」だろ
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戦略研究家として知られるエドワード・ルトワック地政学の泰斗ミアシャイマー博士より日本では有名だろう。たびたび来日し、中国の軍事情報などを披瀝する。かれは「中国は戦略が下手くそだ」と断言してはばからない。

ならばバイデンのアメリカにマシな戦略があるのか? 
就任後のバイデン外交なるものはアフガニスタンからの無様な撤退から開始され、中国をハイテク封鎖すると標榜しつつ対中貿易赤字は増え続けた。
とても「大戦略」の下に行動しているとは思えず、外交はキエフ撃訪問などポピュリズムに基づくパフォーマンス過剰だった。だから「気の抜けたサイダー」。

 米国議会には正論を述べる共和党議員団があり、「主要敵は中国であり台湾有事に備えるのが優先順位で言えばトップであるべき。ウクライナにかまけていては、中国を利するだけだ」と手厳しい批判を展開している。米国メディはこうした声を無視している。

紀元前六世紀にプラトンが言ったように「少数派が正しいことは往々にして起こる」。しかし衆愚政治ソクラテスを処刑してしまった。

大戦略」とは中国を封じ込め、台湾侵略を抑止するためにロシア北朝鮮を活用すべきだったのである。それを途中まで展開していたのがトランプ外交だった。
 トランプ前大統領は、2月21日のヴィデオメッセージで、「第三次世界大戦がかつてないほど近づいている」と警告した。「すべての戦争屋とグローバリスト、そして陰の政府(ディプ・ステート)国防総省国務省、国家安全保障産業複合体を一掃する必要がある」と続けた。

「これらの人々は長い間対立を求めてきました。現在、私たちは第三次世界大戦の瀬戸際でぐらついていますが、多くの人はそう見ていません」
トランプは国務副長官のビクトリア・ヌーランドを非難し、ウクライナをNATOに押し込むことに執着していると痛烈だった。 


 ▲ニクソンは例外的な戦略家だった

 私は1984年に、リチャード・ニクソン元大統領が書いた『リアル・ピース』の日本語版を翻訳した関係で、NYの連邦プラザビルにあったニクソン・オフィスを訪ね、独占インタビューをしたことがある。

 ニクソンは戦略家だった。当時のアメリカの脅威はソ連で、そのソ連の崩壊は1991年、レーガンを継いだブッシュ・シニア時代の出来事だった。
ソ連封じ込めの梃子として「中国を活用」したのがニクソンの「大戦略」だった。
インタビューは30分の約束が一時間となって、帰り際に私がニクソンに「日本の役割はなにか?」と尋ねると、「経済力を活用せよ、いまの日本は巨大なインポテンツだ」と言った。

 日本は手術したわけでもないのに、自ら去勢してしまった。
ガッツ、武士道を喪失し、文明が衰退へ向かう「少子化」という深刻な問題を抱えているが、日本の政官界からは小手先の政策しかでてこない。
欧米から中国、韓国、香港、台湾にまで、この退嬰的な「少子化は拡がり、韓国たるや出生率は0・78となった。

 昔、ギリシアもローマもつよく逞しい男たちがゲームに勝ち抜き、戦争をやってのけ、その強き男たちに憧れて女たちが子供をたくさん産んだ。
それが文明を発達させた。社会を強靭なものにした。近代工業化となって、欧州はそれを忘れ、ロシア人もたくましさを競わなくなり、米国も少子化に傾斜し、工業先進国はなべて少子化社会となった

ローマは少子化が深刻な結末を産む懸念を軽んじ、繁栄に酔い享楽を貪り、防衛は外国人傭兵に依存した。傭兵は金の切れ目が縁の切れ目。ローマは滅びた。一方、人口が激増している「元気」な国はインド、ベトナムインドネシアバングラデシュパキスタンなどである。米国でも白人は減る傾向だが、ヒスパニックとアジア系人口は増えている。

少子化社会では生命がなにより大事、教育に金をかけ、正面の戦争はしない。
そのことはウクライナ戦争を見ればよいだろう。欧米はウクライナに夥しい武器を供与し、兵站を支援し、自らは前線からは遠い安全地帯にあって、ロシアと代理戦争をやらせているではないか。

そのロシアも少子化に悩み、厭戦気分が横溢し、たたかう野蛮はチェチェンとワグネル軍団。囚人らである。


▲嗤う中国だが、バイデンより戦略がない

 中国は嗤っている。欧米が武器を使い果たし、ロシアが資源枯渇に陥れば熟した柿がおちるように濡れ手に粟の状態となる。ロシアを属国化し、台湾を侵攻し、軍事力でアメリカを超える日が近づいたと誤断しはじめた。

 ニクソンは米中国交回復の立役者だが、経済発展に伴っての中国の軍事力拡充を、たいそう懸念し、「われわれは『新型のフランケンシュタイン』をつくってしまったのか」と晩年しきりに発言していたという。

 冒頭、エドワード・ルトワックは中国は戦略が下手だという問題に戻る。
 私が最初にルトワックにあったのは1999年、米国がセルビア空爆して、在ユーゴスラビア中国大使館を「誤爆した直後だった。
当時の日本の防衛畑を代表する参議院議員永野茂門(元陸幕長)で、彼が主催し都内の料亭でルトワックを囲んで数人の会合。通訳は当時永野の政策秘書をしていた浜田和幸(その後、参議院議員一期)。ルトワックはペンタゴンに爆撃目標などを進言していると言った。

ユーゴは分裂し、七つの国にわかれたが、数年後に私がベオグラードを再訪したとき、当時のユーゴ国防省ビルが、空爆で破壊されたまま意図的に記念物として、原爆ドームのように残骸を晒したままだった。

次にルトワックとあったのは外務省の小部屋で、松川るい(現参議院議員)の斡旋だった。参加者は十人ほどで、そのなかに安倍元首相のスピーチライターとなる谷口智彦(現慶應大学大学院教授)がいた。
ここでもルトワックは「大戦略」をかたった。

三年ほど前にもルトワックとあった。場所は加瀬英明邸でやはり少人数の会だったが、このときルトワックが日本語で少し出来ることを発見した。氏の英語はブカレスト訛り、ルーマニアユダヤ人である。

 ルトワックは「中国は戦略が下手」だとし、「北京は外国のことが全く理解できておらず、気球を飛ばせばアメリカが怯えると考えていたのだ(中略)。北京が外国に対していかに無頓着かがわかるだろう。だからこそ、彼らはたとえ経済で成功してとしても、戦略で必ず失敗する」(『HANADA』4月号、奥山真司訳)。
 彼の予測は的中するか?

     ◎☆□☆み□☆☆□や☆□☆□ざ☆□☆□き☆□☆□