中国で横行する「臓器狩り」問題に対処するため、台湾の主要都市では加担した者に厳罰を課するよう求める決議案が相次いで可決している。台南市議の盧崑福氏はインタビューで「民意が政治動かした」結果であるとし、 「台湾人は臓器狩りに加担する国家を唾棄する」と強調した。
決議案が可決したのは台北市や桃園市、新北市、台南市などの主要都市。決議案では、中国共産党が行う臓器狩りの実態について行政が広報宣伝を行うこと、臓器狩りに加担した者を厳罰に処することなどが盛り込まれた。
来日した台南市の盧崑福議員は「ボランティア団体が活動を通して、臓器狩りについて周知してきた。民衆も彼らの努力を目の当たりにしている。だから民意を代表する私たちも自ずと賛同した」と指摘する。長年の活動が認められたということだ。
台湾では多くのボランティアが中国の臓器狩り問題について関心を呼びかけている。天候が悪くても、人々に理解されなくても、長年、黙々と真実を伝えてきた。「ボランティアの方々の努力は私たちを感動させた」と盧崑福氏。「だから民意を代表する者として、私たちの力を尽くして、その声を代弁していきたい」
台南市では台南市長と台南市議会の議長も決議案に賛同した。「臓器狩りに反対するうえでは、政党の区別はない」と盧崑福氏は強調した。「民意を吸収した代議士は自ずと立ち上がり、ボランティアの人々と共に戦っていく」
中国共産党の臓器狩りは2006年、内部告発によって初めて明らかになった。拘束された良心の囚人は定期的に血液検査を受け、移植患者と条件がマッチすれば、生きたまま臓器を摘出され、そのまま死に至る。主な被害者は、「真、善、忍」の教えを守り、坐禅と4つのゆったりとした動作で心身の向上を目指す法輪功学習者だ。
「臓器狩りは道徳に反する行為であり、人間が生まれ持つ基本的な権利を侵害している。決して許されるものではない」と盧崑福氏は述べた。「不法な国家、不道徳な商人、邪な心を持つ犯罪者が加担するその行為を決して容認することはできない。台湾人は臓器狩りに加担する国家を唾棄する」
盧崑福氏は日台間の協力にも言及した。等しく中国共産党の脅威に晒されているため、今後も日本の議員と交流を続けたいと述べた。
「ボランティアたちの努力は皆が見ている。近い将来、全人類がそのことを知るだろう。もし彼らの努力を見かけたときには、ぜひ声援を送ってほしい」
中国における臓器の強制的な奪取「臓器狩り」問題をめぐり、米国や台湾で法整備が進行中だ。日本でも議連での取り上げや議員からの周知が行われている。議会だけでなく国際的な医学界でも継続的な警告により問題の認知が高まっている。
米国で厳罰化求める法案
米下院外交委員会は6月21日、「法輪功保護法案」を全会一致で通過させた。「臓器狩りという大量虐殺の終わりを目指す」ことを掲げ、この人道犯罪に加担した者を罰する法律を制定することを政府に求める。最大の犠牲者は中国伝統気功・法輪功の学習者であることから法案名がついた。
同月末には、米共和党のミシェル・スティール、ニール・ダン両議員がブリンケン国務長官に書簡を送り、臓器ビジネスに関わる人物の入国禁止やビザ停止など対処を急ぐよう求めた。
スティール氏の両親は北朝鮮からの脱北者だ。共産主義の恐ろしさに長らく取り組んできた同氏は「中国の臓器摘出に対しても早急に行動を起こすべきだ」と訴え、移植技術を中国の医師に提供できないようにすべきだと書簡のなかで述べた。
下院では3月末、「強制臓器摘出停止法案」が共和・民主両党の圧倒的支持を得て可決した。臓器狩りに関与した者は入国禁止に加え罰金刑や懲役刑が課せられる。
米国では医学会でも臓器狩り問題が取り上げられている。
半世紀あまりの歴史を持つ米国医師および外科医協会(AAAP)は7月、中国の臓器強制収奪問題を非難し、中国など全体主義の国家から来る医学生や医師らが米国で移植医療の技術を学ぶことを規制すべきだと提言した。
米国では中国の移植医344人が技術訓練を受けていると、ハドソン研究所の宗教自由センターのディレクターであるニナ・シェイ氏は指摘する。「米国の移植医療界は中国の移植産業を公然と支持している」として、中国移植医の受け入れを批判している。
世界的に権威ある医学誌「米国移植学誌」は、中国での多くのドナーの死因は脳死や他の自然死ではなく、臓器収奪プロセスがあると指摘する論文を昨年発表した。
台湾地方議会で活発化する 厳罰化求める声
台湾では立法院や地方議会でも臓器狩りの関与に対する厳罰化や啓蒙活動強化などを盛り込んだ法案の可決が進んでいる。
議案を通過させた新北市の周勝考市議(国民党)は、「臓器の強制的な摘出は絶対に許されない行為だ」と強調し、誘拐や臓器売買の被害を防ぐためにも臓器狩りの厳罰化が必要だと訴えた。
游錫堃立法院長(国会議長に相当)も臓器狩り撲滅に向けた法整備に意欲を示している。
「臓器狩りは国連によって人道に対する罪として認定されている。人権を重んじる台湾は、立法を進めるべきだ」とSNSの投稿で指摘。米下院で臓器摘出停止法案が通過したことを引き合いに出し、「臓器狩りを禁じる立法措置は国際的な潮流だ」と述べた。
日本でも着実に広がる
日本でも国会や地方議会でも臓器狩りについて言及されている。
臓器狩り問題に長らく取り組んできた逗子市議会の丸山宏章議員は18日、エポックタイムズの取材に対し「日本でも国会の議員連盟が取り上げていく機運はある。少しずつ進展していっている。もっと動きを加速させたい」と語った。
2014年、丸山氏は市議会で臓器移植に関する決議案を提案したが、法輪功迫害と中国共産党といった具体例をあげたことで強い反発を受けたという。いっぽう、今は「(臓器狩り問題の)認識は広まっている」と述べ、法整備に向けて認知度の向上は「避けては通れない」とし、啓発を続けていく考えを示した。
山田宏参議院議員は18日、「中国共産党により不当に収監されている数百万人の法輪功学習者やウイグル、チベットなどの人々から、オンデマンドで適合臓器が抜き取られ殺害されているとの数々の証言がある」とツイートした。
山田氏は2019年11月に参議院外交防衛委員会で、カナダの独立調査団による報告書『中国臓器狩り』を手に掲げ、人道問題として法整備等対策が必要だと強く訴えた。SNSでも「『臓器収奪』という大虐殺」と表現し、問題の周知を行なっている。
今国会でも石橋林太郎衆議院議員が中国臓器狩り問題について質疑をした。岸田政権で人権担当補佐官が設けられたことや、対中政策に関する列国議会連盟(IPAC)の東京会合で中国臓器狩り問題が話題に上がったとして、「日本の国会でもこの問題が前進することを非常に強く望む」と訴えた。
人道に反する臓器摘出の問題に対処するために、米国、台湾、そして日本はそれぞれの法的対応を進めている。これらの取り組みは、医療専門家と立法者の協力により、全体主義国家の行為に対する強力な反対のメッセージを送っている。