パルデンの会

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中国経済を当てにする時代は終わりが近づいています。経済も歴史認識も、中国を「デカップリング」時代が本格的に始まろうとしているのです。

 

中国版リーマンショックも。不動産大手「碧桂園」破綻なら中国経済は“崩壊寸前”に

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若者世代の失業率が急上昇するなど、減速著しい中国経済。ここままの状態が続けば習近平国家主席が掲げる「共同富裕」も画餅に帰すこととなってしまいますが、そもそも何がこのような状況を招いたのでしょうか。今回のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では台湾出身の評論家・黄文雄さんが、その原因を徹底解説。さらにこの先中国で、「反日機運」が高まる可能性を指摘しています。

※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2023年8月16日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

地獄へと進む中国経済。ことごとく失敗した習近平の政策

● 中国が予想外の利下げ-7月経済指標低調、若者の失業率公表停止

中国人民銀行は8月15日、中期貸出制度の1年もの金利を2.65%から2.5%へ、短期金融市場の公開市場操作金利である7日物リバースレポ金利を1.9%から1.8%へ引き下げることを発表しました。

こうした利下げの背景には、中国の深刻な経済の減速があります。都市部失業率は5.3%である一方で、16歳~24歳の6月の失業率は21.3%と過去最悪を更新しており、国家統計局は7月の若者失業率の公表を直前になって停止し、調査方法を見直すことを明らかにしました。

報道によれば、取りやめの理由として政府は、「卒業前に就職活動を行う学生を統計に含めるべきか検討が必要なため」としています。

中国の失業率については様々な報道や憶測が流れており、ある報道によれば、「16-24歳の若者の失業率は6月に21.3%と過去最高に達した。中国通信社が先週民間の調査データを引用して報じたところによると、卒業後半年以内に出身地に戻った学生の割合は2022年に約47%で、18年の43%から上昇した」と、あります。

● 中国、若年失業率の公表一時停止 海外投資家の信認さらに低下も

このメルマガでもこれまで述べてきましたが、若者の失業率が危険水域に達し、もはや公表できないほどのレベルになっているということです。

【関連】就職先なく、死んだも同然。中国の若者たちは習近平に見捨てられた

中国経済の減速ぶりを示すニュースは毎日にように流れており、今や「世界の工場」だった中国が、その地位を失ったにも拘らず過剰生産を続けていることから、「世界のゴミ捨て場」となっているとの報道もあります。

● 「上海では豚汁がタダで、北京ではタバコが無料」の自嘲的揶揄が意味するものとは…過剰生産を続けてきた中国が今支払う代償

とくに危機的状況にあるのが、中国不動産です。中国有数の不動産開発業者である碧桂園がデフォルト(債務不履行)の危機に直面しており、同社が発行したドル建て社債2,250万ドルの利払いを期日だった8月6日までに履行できない事態にまで陥っています。

● 中国不動産「碧桂園」赤字1兆円…社債利払いできず、デフォルトなら恒大集団より影響深刻か

碧桂園は8月10日、2023年1~6月期の最終利益は450億~550億元(約9,000億~約1兆1,000億円)の赤字になるとの見通しを発表しました。昨年1~6月期の最終利益が19.1億元の黒字だったといいますから、この1年で急速に経営状態が悪化したことになります。

中国不動産セクターは、2021年後半以降に売上の落ち込みが顕著になっています。その結果、中国第2位の不動産開発会社である恒大集団(エバーグランデ)が債務の元利金を償還できずに不渡りになり、以降、中国の不動産バブルは急速にしぼみました。

その恒大集団は今年7月に、開示を延期していた2021年と2022年の通期決算数字を発表しました。それによると2年間の純損失は単純合計で8,120億3,000万元(約15兆7,021億円)に上り、債務超過は22年末時点で5,991億元(約11兆5,847億円)と、きわめて深刻な状態にあることが判明しています。

そこにきて、今度は恒大集団の最大のライバルといわれる碧桂園の経営危機です。碧桂園は2022年末基準でマンション建設など3,000個のプロジェクトと関連する1兆4,000億元(1,990億ドル)の負債があり、今年9月には58億元の債務満期が到来、利子4,800万元の支払いをしなくてはなりません。

● 中国不動産最大手に債務不履行の兆候…「恒大集団以上の衝撃」

加えて2024年末までに中国国内で24億ドル、海外で20億ドルの債務を返済しなければならないという状態で、破綻まっしぐらといった状態です。

碧桂園には恒大集団よりも4倍も多いプロジェクトがあり、もしも破綻すれば、2021年の恒大ショック以上の衝撃が中国経済を襲うと見られています。それどころか、碧桂園または恒大集団のいずれか片方が破綻すれば、それはまたもう片方、さらに別の不動産開発企業の連鎖破綻を呼び込むことになり、アメリカのリーマンショック級のシステミックリスクを引き起こしかねません。

この不動産市場の低迷は、もちろんゼロコロナ政策による買い控えや開発の遅れによる部分が大きいですが、習近平政権による不動産規制も主因のひとつでしょう。習近平政権は2017年に不動産ローン規制などを厳格化し、投機目的による購入を制限しました。

また、2020年には、不動産開発業者の負債を強制的に減らすために、負債の対資産比率70%以下、純負債の対資本比率100%以下、手元資金の対短期負債比率100%以上という「三条紅線(三本のレッドライン)」の基準を定めて不動産会社を分類し、債務規模を制限しました。これにより、資金繰りに窮した不動産開発業者が販売前のプロジェクトを未完成のまま放置する案件が続出、住宅価格が急落しました。

● コラム:緩和された中国不動産規制、投機許容の有無が今後の鍵

加えて、中国の国有企業を利用した国際市場荒らし、技術や情報盗用、覇権主義の増大などでアメリカを始めとする西側諸国との対立を深め、「脱中国」「中国デカップリング(切り離し)」を促進させてしまったことも、経済減速の大きな要因でしょう。

要するに、ゼロコロナ政策を含めて、これまで習近平政策が行ってきた政策がことごとく失敗したということです。習近平政権は不動産業界以外にも、巨大IT企業や教育産業を締め付けてきましたし、今後もさらに民間企業を締め付けて、国有企業を強化する可能性があります。いわゆる「国進民退」です。そうなれば、ますます中国経済は沈んでいくでしょう。

もちろん、習近平としては、いくら中国経済が衰退しても、習近平政権と中国共産党が安泰ならば、それでいいと考えていると思われます。毛沢東主義と独裁体制の強化も、かつて貧しくとも体制は盤石だったころの時代への回帰を目指しているのでしょう。

ただし、ゼロコロナ政策が人民の家計を直撃し、その結果、「白紙革命」や習近平政権への直接的な批判が出てくるようになったことは、習近平にとっても誤算であり、大きな衝撃だったでしょう。ここでも習近平政権は読み違えてしまったわけです。

かつて、改革開放のもと急速な発展を遂げたことで、「中国一金持ちの村」と言われていた江蘇省華西村も、8兆円もの負債により財政破綻しました。

この街は、1978年の改革開放路線に乗って、当時の村のトップが「集団経済」という特殊なシステムを導入。村民の給与の80%を村営企業が吸収し、株や新たな事業への投資にまわして鉄鋼業などを急速発展させました。貧しかった農村は、2010年には年間の売り上げが6,000億円にものぼるほどまでになったといいます。

街の中心には地上72階建てのホテルがそびえ、そこには1トンもの金を使って作られた牛の像まで展示されているとのこと。そしてそのビルの周囲にはヨーロッパ風の豪華な一軒家が立ち並ぶ住宅街が整備されました。

ところが、自由な企業活動が制限され、放漫財政にも反対しづらい環境もあり、新しい産業を育てることができずに負債は8兆円に膨らみ、結局、今年7月に村営企業はたった1元(日本円にして20円)で投資会社に売却されたそうです。

● 「中国一の金持ち村」が破綻 負債は8兆円 村営企業は20円で売却 “成功モデル”が崩壊

中国政府は8月10日より、日本を含む78の国と地域への団体旅行を解禁しました。本来であれば、経済が低迷している現在、海外旅行の増加は富の国外流出を招くため、習近平政権としても規制したいところですし、コロナ以前には実際に人民元や外貨の持ち出しに強い規制をかけていたことは、記憶にまだ新しいことでしょう。

にもかかわらず、団体旅行を解禁せざるをえなかったのは、それだけ移動規制に対する人民の不満が強いことの現れでしょう。習近平政権はとにかく人民のガス抜きに走っているとしか思えません。

一方、人民の不満が高まれば、その不満を海外に向けさせようとするのも、中国の常套手段です。現在、中国では「愛国教育」の強化のため、初の法制化に向けて審議が行われています。江沢民時代のような反日・抗日教育が推進され、中国国内の反日機運が高まる可能性があります。

また、日本のリベラル勢やマスメディアと組んで、中国が主張する「正しい歴史認識」の押し付けがふたたび始まる可能性もあります。

いずれにせよ、中国経済を当てにする時代は終わりが近づいています。経済も歴史認識も、中国を「デカップリング」時代が本格的に始まろうとしているのです。