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「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和五年(2023)10月2日(月曜日)
通巻第7931号
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習近平政権には経済政策を舵取り指導者が不在
嘗て朱容基、温家宝、李克強各首相は経済に明るかったゾ
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9月22日、中国の韓正・国家副主席は国連総会の一般演説で、「中国市場を世界に一段と開放する」と表明した。
本来なら国連演説は習近平の晴れ舞台となるはずだったが、このところ国際舞台からは遠ざかり、G20などに王毅外相を派遣している。その王毅もマルタ島でサリバン米大統領補佐官と長時間話し合った後、国連総会には向かわずモスクワへ赴いてプーチンと面談している。
国連演説で韓正・副主席は「中国は独立した外交政策を取り、国家の主権と領土の一体性を守る決意」があるなどと表明した。
「全ての国の合法的な安全保障上の懸念に対処すべきで、全ての国の主権と領土一体性も尊重されるべきだ。相違や紛争は対話と協議を通じて平和的な方法で解決しなければならない」と遠回しにウクライナ問題にも触れた。
なにやらコロナ禍時代の「マスク外交」の強引さや「戦狼外交」のような強烈な中華ナショナリズムを表面に出さず、「国際協調」などと、中国がもっとも不得手なことを唱えるのだから、何処でも聴衆はシラける。
弱気の原因は欧米の経済制裁によるサプライチェーンの寸断ばかりか、ドルの稼ぎ頭だった輸出が激減し、不動産不況の直撃で足下がふらつき始めた現実を、中国共産党高層部が認識したからだろう。
「マンションは人間が住むところだ」と投機に水を指して、規制を強めたら、デベロッパーが軒並み破産、購入者の不満が爆発し、それなら規制を緩和して「バブルよ、もう一度」とジグザグ路線を露呈したものの、国民は蝦蟇口(財布)をしめたままである。
住宅ローン金利をさげ、頭金比率を下げたうえ地方政府にあたらしい債券起債を強化した。何ほどの効果も無かった。産業、とくにAI、半導体の育成に天文学的は補助金を準備したうえ、株式市場の規制も緩和した。
それでも米国との金利差が主因で外国ファンドは中国からエクソダスを演じた。
経済政策の緊急措置は殆どが裏目に出た。中央銀行総裁と財務相を交替させたが、現在の中国経済に救世主は現れない。経済通の共青団を習近平が敵に回した以上、経済の人材は決定的に不足するに到る。
▼政治局メンバーに政策通はいても力不足
政策の立案と決定は政治家の力量にかかっている。
経済政策は国務院の専管事項だった。ところが習近平はいくとも経済小組を立ち上げてすべての議長を兼ねたため、官僚たちはそっぽを向いた。
国務院総理、つまり中国の首相は経済にど素人の李強、補佐役の副首相は四人いる。丁薛祥、何立峰、張国清、劉国中だ。
もっともパワフルなのは政治局常務委員を兼ねる丁薛祥(61歳)だ。丁は江蘇省南通出身で、エンジニアから政治家に、中央弁公室主任(米国で言うと首席大統領補佐官にあたる)から序列六位へジャンプ。習の「側近中の側近」とされるものの経済政策に辣腕をふるえるか、どうかは未知数である。中央国際フォーラムなどに出席しているが、外遊歴はすくなく国際的にも未知数。
何立峰(68歳)は李強首相のもとで国家発展改革委員会主任を務めており、主に経済関係の業務を担う。何は廈門大學で経済学博士。財政金融の専門家として頭角を著し、87年廈門副市長のときに習近平の腹心となる。天津の爆発事件などの責任を問われず、トントン拍子で政治局員に出世した。
四人いる副首相のなかで、何立峰がもっとも政策通であろう。
張国清(59歳)は兵器関連の企業で長く勤務し、重慶市長、天津市長、遼寧省書記などを務めた。張は河南省生まれだが、清華大学で経済学博士、つまり「清華大学閥」である。政治局員。9月12日にはウラジオストクで開催されて東方経済フォーラムに習の名代として参加し、プーチン大統領と会談した。その席でプーチンの一帯一路フォーラム出席の確約を得た。
劉国中(61歳)は、黒竜江省出身で同省副省長、吉林省で省長、陝西省省長、書記などを務めた経歴があるが、中央政界に躍り出て政治局員となった。9月7日からの北朝鮮訪問団の団長格として金正恩と会見した。
この副首相たちは、何立峰を除き若いので次の執行部を担う可能性が高い。
◎☆□☆み□☆☆□や☆◎☆□ざ☆□△◎き☆□☆◎