パルデンの会

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救う会全国協議会 9月29日東京連続集会 最新報告

 

 

★☆救う会全国協議会ニュース★☆2023.10.02)動くか拉致問題 2-最新報告

 

動くか拉致問題 2-最新報告1

 

9月29日に東京・文京区民センターで東京連続集会125が開催されました。

北朝鮮は5月29日に、両国首脳が「会えない理由はない」という外務次官談

話を出しましたが、それ以降日朝協議のニュースはありません。北朝鮮は戦術核

攻撃訓練を繰り返す中、食糧難が深刻化しています。ロシアとの武器取引が進み

ますが、戦争中のロシアは大規模な人道支援を行う余裕はありません。中国も北

朝鮮が昨年秋に頼んだ50万トンの食糧支援を断っています。

北朝鮮指導部からすると、日本からの大規模な人道支援への魅力は下がってい

ません。外務次官談話を引き出した岸田政権が多方面で動いていることは間違い

ないようです。横田拓也家族会代表が近況報告を行い、西岡会長が最新報告2を

行いました。概要以下の通り。

 

西岡 力(救う会会長)

 

皆さん、今晩は。何も動いていないのではないかといらいらする人が多いと思

いますが、今朝、日朝秘密接触に関する驚くべき記事が「朝日新聞」の1面に出

ました。私の感触でも、何も動いていないのではなく、まだ表面に出る段階では

ないのではないかと思います。

 

まず、横田拓也さんに近況報告と最近感じていることなどをお話いただきます。

 

◆ハイレベルな協議を着実に進めてほしい

横田拓也(横田めぐみさん弟、家族会代表)

皆様、こんばんは。家族会代表の横田拓也でございます。

お忙しい中、北朝鮮による日本人拉致事件必ず解決させるという思いを一つに

して、本日もお集まり頂きましたこと、心から御礼申し上げます。ありがとうご

ざいます。

日朝首脳会談平壌で開催されたのが2002年9月です。5人の拉致被害者

ご本人とそのご家族を取り戻せただけで、それ以降私の姉横田めぐみを初め誰一

人も奪還する事が出来ないまま21年という長い時間が経過しています。北朝鮮

は今も人質外交を続け、重大な人権侵害を行っています。許すわけにはいきませ

ん。

私が家族会の代表を飯塚繁雄さんから受け継いだのが2021年12月です。

拉致問題を取り巻く環境は何一つ変わっていません。北朝鮮で私達の救いを待っ

ている私達の家族や兄弟・姉妹に本当に申し訳ない気持ちで一杯です。

岸田首相は、本年5月27日の国民大集会の場で金正恩委員長向けに向けたと

思われる踏み込んだ発言をされました。改めてご紹介しますと、

「日朝間の実りある関係を樹立することは、日朝双方の利益に合致するとともに、

地域の平和と安定に大きく寄与いたします。しかしながら、現在の状況が長引け

ば長引くほど、日朝が新しい関係を築こうとしても、その実現は困難なものになっ

てしまいかねません。一瞬たりとも無駄にせず、今こそ大胆に現状を変えていか

なければなりません」、「日朝間の懸案を解決し、両者が共に新しい時代を切り

開いていくという観点からの私の決意を、あらゆる機会を逃さず金正恩委員長に

伝え続けるとともに、首脳会談を早期に実現すべく、私直轄のハイレベルで協議

を行っていきたいと考えております」、と発言されました。

水面下でのハイレベルな協議はどこまで進んでいるのでしょうか。今西岡会長

から、「朝日新聞」の記事についてお話がありましたが、日本政府は人権問題で

ある北朝鮮による日本人拉致事件に対して真剣且つ必死で向き合っているのでしょ

うか。

表向きにはその動きを私達は全く認識する事は出来ません。そうしている間に、

拘束されている私達の家族や兄弟・姉妹は苦しみ続けています。日本政府の真剣

且つ具体的な取り組みを望みます。

最近のトピックスとして、岸田首相による内閣改造と露朝首脳会談が印象的に

目に留まりました。

拉致問題担当大臣を松野官房長官が引き続き兼務されます。私は支持します。

北朝鮮は交渉相手が度々変わる事に信用を置きません。また交渉相手が実権を持っ

ていなければ真剣に対峙しようとはしません。官邸主導で、そして岸田首相の強

いリーダーシップのもと、北朝鮮と真剣に向き合い、一日も早い拉致事件解決に

繋げて欲しいと思います。その為には日朝首脳会談を開催する必要があります。

ハイレベルな協議を着実に進めて欲しいと思います。

二つ目は露朝首脳会談についてです。専門的な事は有識者の方々にお任せする

として、私は金正恩委員長の発言で許せない事があります。それは、「我々は常

プーチン大統領とロシア政府の決定を支持する」と言う部分、またウクライナ

侵攻を巡り「ロシアは主権と安全を守るため聖戦に立ち上がった」と全面支持す

る発言をした事です。

「一方的な力による現状変更」で、ウクライナの主権・領土・文化・生活・家族

の絆は破壊され続けています。こうした残虐行為を全面的に支持する事など許さ

れて良いはずがありません。北朝鮮はと言えば、45年前から”一方的な力によ

る現状変更”で日本の主権・領土を侵害し、家族の絆を引き裂く形で無実の13

歳の少女を拉致し、人権侵害・人質外交を続けています。日本国民の一人一人が、

我が事としてこの問題を捉え、絶対にこの様な邪悪な相手を許さない、必ず全拉

致被害者の即時一括帰国を求め続けると言う覚悟を強く堅持して頂きたいと思い

ます。

私達は絶対に諦めません。母早紀江と姉めぐみが再会し、抱き合える日が来る

まで声を上げ続けます。今後ともご支援頂けますようどうぞ宜しくお願い致しま

す。ありがとうございます(拍手)。

 

官房長官拉致問題対策本部担当大臣を兼任するのが一番いい

 

西岡 力 先ほど拓也さんの話にあった、松野官房長官が今回の内閣改造で今回

拉致問題担当大臣を兼任したことですが、私も大変よかったなと思っています。

 

一人が兼任ではなく、単独で担当大臣をした方がいいのではないかという人も

いるようですが、それは誤解です。官房長官が一番いい。第二次安倍政権の初め

ころストックホルム合意がありましたが、あの時は拉致問題担当大臣は国家公安

委員長と兼任でした。

 

横田ご夫妻のモンゴルでのお孫さんとの面会から始まった一連の動きについて、

拉致問題担当大臣はほとんど知らされていませんでした。後から報告を受けまし

たが、外務省が主導して進めました。

 

しかし官房長官が担当大臣だと、外務大臣官房長官の調整を受けます。各省

庁にまたがる案件については、官房長官が調整することが法律で決められていま

す。この問題は様々な省庁にまたがる問題ですので、拉致担当大臣を飛び越えて

何かが進むということはありえないのです。

 

また政権の事実上のナンバーツーですから、その人が拉致を担当しているとい

うことは、本当に最優先課題で取り組んでいることになるわけです。菅官房長官

が兼任し、その後菅政権では加藤官房長官が兼任した体制が大変良かったのです。

それが今も続いているということは、何らかの動きが出てきた時に政府がばらば

らにならないで一枚岩で進められるということで、これ以上の体制はないです。

 

今回松野さんが代わらなかったこともありがたいことですが、官房長官兼任の

体制が続いたのは大変よかったと思います。

 

拉致問題対策本部は今8億円、9億円の予算がついているようですが、官邸機

密費を持っているのが官房長官で、情報を取る時には、通常の予算執行ではでき

ないお金の使い方をしなければならないことも当然出てきます。

 

私たちが繰り返し政府に求めているのは、確実な生存情報あるいは所在情報を

たくさん取ってほしいということです。それなしに岸田総理を平壌に送ったら、

また騙されるかもしれない。

 

その場合にも官房長官が兼任していると大変いいのです。各省庁から上がって

くる情報も官房長官の所に来るわけです。そういう点でも岸田総理はよく分かっ

ておられて、安倍総理が最後にそういう体制を作り、それが菅政権、岸田政権に

まで続いている面では、大変いいことだと思います。

 

またある所から聞いたのですが、官房長官は大変忙しいのです。忙しいことは

少しマイナスかもしれませんが、松野官房長官は自分が担当大臣だという意識を

ものすごく持っている。事務方から上がってくることをこなすだけではなく、こ

うしたらどうか、ああしたらどうかといつも考えていらっしゃるようです。それ

は自分が担当大臣だという意識があるからです。

 

もちろん官房長官ですから、岸田総理より先に、絶対表には出ないという姿勢

を貫いていますが、この問題は自分の問題だと考えているというふうに複数の人

から聞いていますし、私もそうだなと思っています。そういう点で、拓也さんが

「支持する」とはっきりおっしゃいましたが、私も同感です。

 

◆時間的制約は日本にも北朝鮮にもある

 

今の状況をどう見るか、そして「朝日新聞」の報道をどう見るかですが、その

ことを話す前提として、私たちが今年の運動方針で、「全拉致被害者の即時一括

帰国が実現するなら(北朝鮮への)人道支援に反対しない」と決めた背景が3つ

あります。そのことをまず頭に入れていただいて、今の状況の説明をしたいと思

います。

 

第一に、時間が限られてきたということです。家族会の親の世代で生存されて

いる方は、横田早紀江さんが87歳、有本明弘さんが95歳になっています。早

紀江さんはこの夏晋三の手術をされました。ご本人が明らかにされましたので私

も公開の席で言っています。また、有本のお父さんは車椅子でしか移動できなく

なっています。年齢から言っても、いつ何があるか分からないことになっていま

す。

 

私たちの運動は、26年前に家族会が立ち上がった時から始まったのですが、

その時の主たるメンバーは親の世代でした。しかし、その親の世代が一人欠け、

二人欠けと言うことで、今二人しか残っていません。早紀江さんと明弘さんに、

めぐみさんと恵子さんを会わせたい。それができなければ私たちの運動はある面

で失敗なのではないか。

 

その時間的制約ということは、実は北朝鮮にとっても言えることです。北朝鮮

は日本から物やお金を取りたいと思っている。人質として拉致被害者を使おうと

思っている。

 

私は菅政権の時、4回総理に呼ばれて1対1で会って、「どうしたらいいと思

うか」と聞かれました。政府がやっていることは教えてもらえませんが。その時、

「親の世代が生きている間に被害者を返さなければあなたたちもほしい物をもら

えなくなりますよ」と訴えてほしいと言いました。

 

あまり言いたくないことですが、早紀江さんや明弘さんに何らかのことがあっ

た後に、めぐみさんや恵子さんが帰ってきても、日本人は喜びませんよ。「なぜ

親が生きている間に返さなかったのか」と怒りますよ、と。

 

何か取りたい物があるなら日本人が「よかった」と思わなければならない。い

くら総理が約束しても「よかった」と国民が思わない限り、日本は民主主義で選

挙がありますから通りませんよ。「よかった」と思うためには、親の世代が存命

中に、それがもう二人になっているんですよということを北朝鮮に訴えてほしい、

と言い続けてきました。

 

私もまったくルートがないわけではないので、そういう(生存情報や所在情報)

の作業をしています。北朝鮮の側からみて今何か取りたいのであれば、時間的制

約がでてきた。そのことを岸田総理も去年の10月以降、「時間的制約」という

言葉を使い始めています。以上が第一点です。

 

核・ミサイル問題と拉致問題を切り離さなす

 

2点目は、核・ミサイル問題は少なくともバイデン政権の間は動かない。今回

北朝鮮憲法を改正して、「核武力を発展させる」というような内容を書き加え

た。既に憲法に、「核武装国である」ということは書いてあるわけです。

 

そして昨年は核をどういう時に使うのかという法律まで作っています。それま

では「自衛のため」と言っていましたが、「最高首脳部が砲撃された時など相手

が核を使わなくても核の先制攻撃をする」という法律を作っています。

 

そしてミサイル発射についてはご承知の通り頻繁にやっています。こういう状

況で国際社会は厳しい経済制裁をかけていますが、アメリカとの間での核・ミサ

イル交渉は完全に途絶えたままです。

 

トランプさんがもう一度政権を取ったら金正恩・トランプの人間関係はありま

すから、どうなるか分からない面がありますが、少なくともバイデン政権の間は

無理でしょう。核について法律を作り、憲法にも書いたのですからなかなか難し

いでしょう。

 

だから核・ミサイル問題と拉致問題を切り離さない限り、「時間的制約」に間

に合わないのです。これが二番目の状況です。

 

(2につづく)

 

 

■動くか拉致問題 2-最新報告2

 

◆両国の「人道問題」で取引できるなら

 

そして三番目ですが、二番目とも関係があるのですが、核・ミサイル問題が解

決していない時に日本が使えるカードには限りがあります。日本は国連制裁違反

をすることはできません。

 

核・ミサイル問題で国際社会が厳しい制裁をかけていますが、それは国連安保

理が決めた制裁です。安倍さんとトランプさんが主導して作った枠組です。北朝

鮮は年間30億ドルくらい輸出していましたが、コロナの前に3億ドルまで落ち

ました。そういう厳しい制裁です。

 

それは核・ミサイル問題を理由にしていますので、拉致被害者が帰ってきたか

らといって、日本がそれに反することはできないのです。

 

しかし、人道支援は国連制裁違反ではないのです。そして日本は国連の制裁よ

り強い制裁をしています。すべての貿易を止めています。すべての船舶の入港を

禁止しています。朝鮮総連幹部などの北朝鮮を目的とした再入国許可は出さない

という制裁もしています。これらは拉致が理由で日本が制裁しているものです。

これらは拉致が動けば解除することができます。カードとして使えるのです。

 

そして北朝鮮は今、人道支援を必要としています。今年に入って大変な飢饉が

起きていて、餓死者が出る状況になっています。もともと北朝鮮が日本からほし

かったのは100億ドル、1兆円とも言われる経済支援でした。小泉訪朝の時は

そのような話がなされています。

 

しかし今それを動かすことは、核・ミサイル問題が動かない限りできません。

北朝鮮が日本から取りたい物が100億ドルであれば、いくら日本が人道支援

できますよと言っても振り向かない。核・ミサイル問題と切り離してやりましょ

うと言っても、切り離して100億ドルくれるのかという話です。

 

しかし人道支援が必要な条件が生まれているので、岸田総理は去年10月に、

拉致問題は時間的制約のある人権問題だ」と言って、安保3文書の中の国家安

保戦略では、「拉致問題は時間的制約のある人道問題だ」と閣議決定されて書か

れています。

 

日本にとって最優先の人権問題、人道問題が拉致被害者の全員帰国で、それも

親の生きている間に会わせることだ。あなたたちにも人道問題があるでしょう。

「人道問題と人道問題で交渉しましょう」というカードが有効な時期になってき

た。それを岸田政権は去年の10月からそういうことを言い始めました。

 

安倍政権も菅政権もそれは言っていません。表向き言っていたのは、日本にとっ

て最優先課題である拉致問題と、核・ミサイル問題を同時に解決して、不幸な過

去を清算して国交正常化し、経済協力すると言っていたのです。「切り離す」と

いうことは一度も公的に言ったことがない。

 

安倍さんは、家族だけの席ではそれらしいことを言いましたが、それは外に出

せることではない、外交上の問題があると。本音では、「やる時はやる」と言っ

ていましたが、岸田さんは公然と、拉致だけに「時間的制約」という言葉を付け

ています。

 

それについて櫻井よしこさんが岸田さんに直接聞いたら、「拉致問題は別次元

である」と言っています。それは核・ミサイル問題と一緒にすると「時間的制約」

があり間に合わないからです。

 

そして北朝鮮は今人道支援が必要な状況になっています。そこから出た戦略的

な判断だと思います。それを去年10月に言い、そして5月にも同じことを言っ

たら、北朝鮮から「会えない理由はない」という外務次官の談話が出たわけです。

 

私はその談話の内容よりも、反応が速かったことに注目しています。土曜日に

岸田総理が我々の国民大集会に来たのです。そうしたら月曜日の朝に談話を出し

た。そして岸田総理が土曜日のある集会で「私直轄のハイレベルで協議を行いた

い」と言ったと引用しています。

 

土曜日の国民大集会に誰かが来ていてテープ起こしをして平壌に送り、談話の

案を金正恩に見せて、そして月曜日に出た。北朝鮮も基本的には日曜日は休みで

す。北朝鮮では金正恩委員長の決済がなければすべてのことが進まないのです。

 

唯一指導体制と言って、最高指導者だけが決定権を持つ。それ以外の幹部は最

高指導者が決めたことを実行するという政治システムになっているので、決済を

貰いたい人たちが列をなしているんです。そういう中で横から入って週末に決済

を貰った。それは、金正恩委員長が、「岸田総理が何か言うはずだから俺に報告

しろ」と事前に言っていなければおきないことです。

 

そういう何らかのコミュニケーションがあの時点で取れていたのだと思います。

私は交渉のプロセスについては知りませんし、政府に対しても「教えてくれなく

てもいい」と言っています。漏れるのが一番よくないですから。但し、結果につ

いては意見を言います。「全拉致被害者の即時一括帰国という観点から意見を言

いますよ」とは言っています。

 

どう考えても、土曜日の午後に話した内容が引用された談話が月曜日の朝出た

というのは、コミュニケーションが取れているということなんです。

 

◆「北朝鮮の食糧事情が好転した」のか

 

6月になって北朝鮮外務省の日本研究所の研究員が、「日本政府(松野官房長

官)が行った国連での発言について、これは拓也さんも耕一郎さんも参加した拉

致のシンポジウムですが、「その発言がけしからん」という声明を出しましたが、

それは決済なしでできるのです。なぜなら前年も、同じことを同じ人物が言って

いるからです。「日本政府がこういう発言をしたらあなたが反論しろ」という命

令が出ているのだから、新しい命令が出ない限りそれはできるんです。

 

研究所の研究員の反論などは金正恩の決済が必要ないんです。「止めろ」とい

う命令が来ない限り同じことをやるのです。しかし、月曜日の談話はそういうも

のではない。そしてその後起きたことは、先ほど拓也さんが言った訪ロです。朝

露首脳会談をしました。北朝鮮でコロナが開けたことになって初めて金正恩が外

遊して行った首脳会談でしたが、残念ながら岸田総理との首脳会談ではなく、プー

チン大統領との首脳会談だった。

 

ここで一番注目しているのは、今も情報を集めているところですが、プーチン

が食糧支援をどのくらい約束したのかです。先ほど言った三つの背景の内、人道

支援が必要な状況が変わってしまうくらいプーチンが食糧支援をしたら、一息つ

いてしまう。日本への関心が下がってしまうのではないか。

 

あるいは、私は見ていないのですが、事務所の人がテレビを見ていたら、「朝

日新聞」の元ソウル特派員がテレビに出て、「中国から20万トンの食糧が最近

入った。だから北朝鮮の食糧事情が好転した」という報道がありました。

 

また韓国の統一部の当局者が9月19日に、「北朝鮮が食糧の輸入を増加させ、

麦や小麦などの収穫が相当進んでいるので、食糧状況が上半期以降変化した可能

性がある」と言った。そして、「上半期に食糧難があったことが推定される。そ

れは絶対量が少なかったのではなくて、流通過程上の問題が大きかった」と言っ

て、「上半期以降変化があった」と観測しています。 そして、「秋になってま

た状況が変わるようだ。関係機関と共に食糧事情を注視している」と少しよくな

るのではという話をしています。

 

さらに、まさに私の関心事ですが、金正恩訪露に同行したアレキサンドル・マ

ツェゴラという駐北朝鮮ロシア大使がタス通信とのインタビューで、9月17日

に、「北朝鮮に食糧援助をする準備ができていると伝えたら、北朝鮮側が、「望

んでいない」と、さらに「今年の秋の収穫はかなりいい」と言ったそうです。

 

同大使が、「2020年にロシアは5万トンの小麦を無償で提供した。これを

再び行う準備ができている」と言ったら、北朝鮮側は、「北朝鮮の同士たちには

ありがたい。しかし、状況が難しくなったらあなた方に頼るけれども、今は大丈

夫だと言った」とタス通信に語っています。

 

牧野記者は、「中国から支援が入った」と言っているし、同大使は「今年の収

穫がよかったから(今は大丈夫だ)」と言っている。本当に支援を断るくらい収

穫がよかったという情報も出ています。そうすると3番目の条件が崩れてしまい

ます。

 

◆「日朝が2回秘密接触」と朝日新聞

 

そして今日の「朝日新聞」は、「日朝、東南アジアで今春に2回秘密接触」と

書いています。「東南アジアのある所で今年3月と5月に接触をした」と。そし

て、「北朝鮮は、拉致問題は解決済みという姿勢を変えていないので、今は停滞

している」という記事です。

 

日朝で何らかのコミュニケーションがとれていたので、それが3月と5月の接

触になったのかもしれません。あるいは「朝日新聞」が間違えたのかもしれませ

んが、しかし、今停滞しているというのは、食糧がある程度確保できたからあわ

てて日本に接近しなくていい状況なのか、と言う点です。そこが一番の焦点にな

るわけです。

 

この「朝日新聞」の報道については、私は情報がないので分かりませんが、交

渉について何らかの情報収集をするつもりはないんですね。政府に強く言ってい

るのは、「(秘密接触が)漏れないようにやってくれ」ということです。

 

これが本当にやっていて漏れてしまったのであれば、逆に報道を見て北朝鮮

パイプを切るかもしれない。それは是非避けてほしいと思います。真相が分から

ないのでそれ以上は言いませんが、それよりも私は状況を見ています。北朝鮮

とって(人道支援が)必要なのかどうか。

 

(3につづく)

 

■動くか拉致問題 2-最新報告3

 

◆韓米日NGOの4つのソウル宣言

 

その話の関係で、ロシアと北朝鮮との関係について、私が色々取った情報を

「月刊WILL」に書いたものをこれから説明しようと思います。

 

その前に一つだけ報告したいことがあります。配布資料に、「韓米日NGOのソ

ウル宣言」という物があります。私たちが民間のNGOとしてできることは、日本

政府そして私たちがやろうとしている「核・ミサイル問題と拉致問題を切り離し

て、拉致問題を人道問題として北朝鮮の食糧飢饉という人道問題と、拉致被害者

の全員帰国という人道問題を一緒に解決することです。

 

またそういう枠組について国際社会の理解を得ることです。それで拓也さんた

ちと一緒にアメリカまで行って、国務省副長官を初めとする要路の人たちは、皆

さんが「理解する」と言ってくれました。

 

韓国との交流も色々考えていたのですが、今回9月17日から23日までソウ

ルで「第20回北韓自由週間」が開かれたのです。そこに家族会の人と一緒に行

こうと思ったのですが、色々な事情で私が一人で行きました。大会委員長はスザ

ンヌ・ショルティさん(北朝鮮自由

連合代表)で、何回も日本にも来てくれました。

 

韓国側の代表は金聖●(キム・ソンミン、王へんに文)さんで、自由北韓(北

朝鮮)放送の代表です。そして日本側の代表は一応私となっています。ソウルと

ワシントンで何回もやってきたのですが、「日本人の代表になってくれ」と言わ

れて私の名前を出しています。そして開会式にはいつも行って、挨拶をしたりし

てきました。

 

共同宣言を毎年出しているのですが、それにも私がいつも加わっていて、起草

委員の一人として、起草に加わりました。

 

韓国人がやっている人権NGO脱北者の会で、そして私たちが集まって作った

今年の宣言がこれです。4つの項目について私たちは決議しました。

 

第一に、「緊急状況の救助が最優先」であるとしました。今北朝鮮の人権問題

が最優先になっているのは、実は中国の公安が逮捕している2千数百人の脱北し

て捕まった人たち、あるいは合法的に中国に来たけれども逃げようとした貿易商

とか労働者、そして保衛部の幹部や外交官もいるようですが、国境が開いたので

中国が北朝鮮に送り返そうとしているからです。送り返したら拷問されたり、処

刑されてしまうかもしれない。

 

強制退去するにしても、本人の意思を聞いてやるのが国際人権法の方式です。

韓国政府も今水面下で中国と交渉していますが、その人たちを助けるのが緊急だ

ということです。

 

それだけでなく、拉致被害者、韓国軍捕虜、抑留者の課題も緊急だとここで書

いてくれました。それは被害者本人と家族の高齢化ということがあります。私た

ちが言っている「時間的制約」ということを、アメリカや韓国のNGOが理解して

くれて書いてくれました。

 

第二は、「人権問題を理由にした対北制裁を強化すべき」で、今国際社会は核

・ミサイル問題では厳しい制裁をかけていますが、人権は理由になっていないの

です。人権を理由に制裁している国は日本だけです。拉致問題があるから世界で

一番厳しい制裁を課しています。

 

今は解決のために国際世論を喚起する段階ではなく、北朝鮮に対し人権抑圧を

したらマイナスになることを教えるためにも、人権を理由にした制裁が必要です。

私は何回も議論してきましたが、それが書き込まれました。これは既に日本はやっ

ていることです。

 

第三は、「人権問題改善を人道支援の条件にすべき」です。飢えに苦しむ北朝

鮮住民への人道支援は必要だが、政権を助けることにもなりかねないので、色々

な意見はありますがまた300万人という大規模な餓死が起きるなら、それは無

視できない人道問題ですから、「必要だ」とここで書きました。

 

但し、そのためには、「政治犯収容所廃止、脱北者処罰禁止、言論・信教の自

由の保障という前提が必要だ」としました。人権問題の改善を人道支援の条件に

すべきだということです。解決まではいかなくてもですね。そして、「拉致被害

者、韓国軍捕虜、抑留者解放を条件とせよ」と書きました。

 

私たちはまず、「拉致被害者の解放」を人道支援の条件にしているわけです。

無条件の支援には反対だが、条件付きの支援は人道問題だ、と。人権問題の「解

決」は難しいですが、「改善」でバーターすべきだ、と。

 

ソウルでも議論があったのですが、過去に西ドイツは東ドイツに対して様々な

人道支援をしました。その時、刑務所に入っている政治犯の釈放を条件としまし

た。かなりの人を救い出しました。お金で買ったのです。そういうことをやるべ

きだ、という議論をしました。

 

この第三項目が入ったことにより、私たちの運動を、アメリカと韓国の脱北者

たちが理解してくれたということです。もちろんそれは、東京に来てくれて、家

族会に会って、今の私たちの状況を見て、納得できると思った金聖●さんが強く

動いてくれたから、ここまで入ったのです。

 

第四が、「自由統一の準備をせよ」です。実は、8月に米国キャンプ・デービッ

ドで、バイデン、岸田、尹錫悦が会った時に、「我々は、拉致問題、抑留者問題

及び帰還していない捕虜の問題の即時解決を含め、人権・人道問題に取り組んで

いく。我々は、自由で平和な統一された韓半島を支持する」と宣言したのです。

 

安倍総理が、「自由統一を支持する」と、一度韓国の言論で言いましたが、3

か国のトップが、「自由統一を支持する」と言ったのは初めてです。また、韓国

のトップが、「拉致問題を含む人権・人道問題に取り組む」と言ったのも初めて

です。

 

今、日韓の歴史問題が解決したので、ここまで日米韓の連携を作ることができ

たのです。その中には、韓国の首脳が「拉致問題に取り組む」と言ったことも含

まれます。そして自由統一ということがでていますが、これは韓国の国是です。

その自由統一について準備をしようというのが四つ目です。

 

交渉は政府にまかせて、私たち民間ができることは、国際社会の理解を求めて、

人道支援の枠組みで被害者を取り戻すということです。但し、その時の条件は、

二、三人ではない。全拉致被害者の即時一括帰国だということです。

 

最近、田中さん、金田さんのことを繰り返し言う勢力がいますが、安倍総理

第二次政権を終えた後、私が1対1で会った時に、「実は」と言って話を聞きま

した。

 

総理はもう亡くなっていますので、「安倍総理が田中、金田を見捨てた」と言っ

た人に安倍総理は反論できませんので、私がそのことを公開しているんですが、

確かに田中さん、金田さんの名前は出ました。しかしその時の条件は、これで

拉致問題を)終わりにすることだったのです。

 

つまり死亡の証拠はないのに、横田めぐみさんや有本恵子さんの死亡を認める

ことだったのです。そんなこと呑めるわけがない。北朝鮮は公開の席で、「田中

さん、金田さんが生きている」とは言っていません。彼らは見返りなしに誰かの

生存情報を出すことはないのです。

 

それなのに見返りの部分について言わないで、田中さん、金田さんの情報が出

たというだけでリークする人がいるのです。そういう人たちは、「安倍さんがつ

ぶした。菅さんがつぶした」と言っていますが、当事者の人たちは交渉の内容を

言えないのです。

 

それをいいことにして、前に交渉に関係していた外務省の元幹部が、安倍さん

が死んだ後に、そういうことを言っています。私は大変腹を立てています。安倍

さんが死んだ後、参与という肩書で平壌に言ってメモを作った人が、「安倍さん

は必要ないと言った」というメモを今頃になって公開した。安倍さんが生きてい

たら公開しなかったでしょう。(二人を返して拉致問題を終わりにするという)

事情を知っているんですから。売名をやっている人たちが多くて、人間というも

のを見るような気がします。

 

でも私たちができることは、こういうことをやることです。そして「全拉致被

害者の即時一括帰国が絶対の条件だ」ということを言い続けることです。「北朝

鮮が2002年に出した赤十字の調査報告書が間違っていた」ということでいい

んです。「金正恩委員長が嘘をついたということを認めろ」とは言っていない。

 

2002年に日本に通報されたものは、北朝鮮赤十字の調査報告書なんです。

「もう一度調査してみたらそれが間違いだった」と言えばいい。但し、全員でな

ければならないということです。

 

日本政府の拉致解決の定義は3つです。認定の有無に関わらず全員帰国と、真

相究明と実行犯の引き渡しです。私は交際法上の補償も払うべきだと思いますが、

日本政府は3つを言っています。私たちが人道支援の条件にしているのは、1番

目だけです。真相究明と実行犯の引き渡しは国交正常化までにやってもらわなけ

ればならないが今でなくていい。

 

「時間的制約のある人道問題」とは、まず生きている人たちを一人残らず取り戻

して、親に会わせることです。そう整理しています。その整理の中で、3つ目の

北朝鮮人道支援が必要な状況になる」ことになったのかどうか。それが今の

最新情勢を分析する鍵になります。

 

(4につづく)

■動くか拉致問題 2-最新報告4

 

北朝鮮自動小銃10万丁が既にロシアに出ている

 

私が「月刊WILL」に書いたものについて、朝露関係について集めた情報を紹介

します。

 

リアルタイムで出てくる情報ですから全部私が分かっている訳ではありません。

ただ、マスコミが言っていることとはかなり違う情報を私は入手しています。

 

今表向きは、北朝鮮もロシアも、「北朝鮮の武器がロシアに提供されてはいな

い」と報道されています。そしてアメリカも韓国も、「提供したら許さないぞ」

と言っています。その話をプーチン金正恩がしたのではないかと疑っています。

 

私が聞いているのはもっと深刻で、7月末のシェイグ国防相訪朝の後に既に武

器が提供されています。ではなぜプーチン金正恩に会ったのかということにな

りますが、まず既に提供されていることについて少し説明します。

 

提供されているのは、「自動小銃、砲弾、ロケット砲弾、地雷」等です。特に、

自動小銃10万丁はもう出たと聞いています。裏付けは何なのかということです

が、私が取った情報だけでなく、秘密の動きではない情報が一つあるのですが、

その話の前に、当初北朝鮮は古い自動小銃を出そうとしたそうです。

 

予備兵力のために倉庫にしまってある58式自動小銃や68式自動小銃です。

58というのは1958年モデルです。当時のソ連自動小銃ライセンス生産

したものです。しかしロシアはそれを断った。今北朝鮮人民軍が使っている88式

か98式を出せ、ということだったそうです。

 

そして50万丁を要求されたけど、まず10万丁出したというのですが、私は7月

末にこんな話を聞いていました。北朝鮮の全世帯に、「自動小銃につけるための

ストラップ(小銃を肩にかつぐための幅広の紐)を一本ずつ作って提出せよ」と

いう命令が出たのです。

 

表向きは、「人民軍の自動小銃のストラップが古くなったから」とされていま

すが、全世帯となると数百万本になります。「おかしい。それはロシアに出すた

めだ」と言っていたのですが、8月2日の米国の「自由アジア放送」の記事に書か

れています。

 

咸鏡北道のある住民消息筋は7月31日、「今月29日に清津市青岩区域の各

人民班で住民を対象に人民軍を支援することについて会議を招集した」とし、

「今回の支援品は銃ストラップを作って捧げろということで衝撃を受けた」と伝

えました。

 

「会議では『人民軍隊の銃(自動小銃)のストラップが古く、交換しなければな

らない』として世帯当たりのストラップ1本を捧げるよう指示した」とし、「国

防色(グリーン)の布を縫って作ったストラップの規格は長さ120センチ、幅は4

センチ」と言われています。

 

「一部では『軍隊支援をしていて銃のストラップを捧げるよう指示されたのは初

めて』とし、呆れた表情を見せた」とした上で、「自動小銃のストラップも解決

できず住民に依存しなければならない人民軍の悲惨な実情に衝撃を受けたから」

と付け加えた。

 

そして、「銃のストラップを捧げろという指示が出されると、まるで待ってい

たかのように翌日から市場に銃のストラップが出始めた」、「ミシンがあっても

金儲けができなかった住民たちが一晩中銃のストラップを作って1本2千ウォン

(米ドル=0.25ドル)で売っている」と説明しました。これは咸鏡北道の話です。

 

両江道のある住民消息筋は2日、「最近になって市場でよく売れている品目が

銃ストラップだ」とし、「人民軍の銃ストラップが古くて捧げるよう指示された

ことを受け、銃ストラップ商人たちが誕生した」、「今月初め、両江道内の女性

同盟組織に人民軍隊の支援で銃ストラップを作って捧げるよう指示が下された」

とし、「軍服色の布をリュックサック紐のように縫って作るが、銃紐の規格は長

さ1メートル20センチ、幅4センチに指定された」、「今月末までに銃のストラッ

プを捧げるよう指示が下され、家にミシンがない住民は仕方なく周辺に頼んだり、

市場で買って捧げなければならない」、「銃のストラップ1本2千ウォンで購入し

なければならないと住民は不満をぶちまけている」と。

 

私が聞いたことと全く同じことが起きています。市場で何を売っているかは秘

密ではないのです。住民全員に命令するということは、外に漏れるということで

す。しかし、日韓のマスコミはこれを書いていない。

 

なぜ何百万本も作るのか。実際に人民軍の自動小銃には付いているわけです。

ロシアに送るために緊急に必要なんです。10万丁の自動小銃は倉庫にあったので

すが、それにはストラップが付いていなかった。

 

「何でストラップを作るのですか」と聞いたら、「軍服を切ってミシンをかけ

て作る」そうです。10万丁ももし入ったことが事実ならば、近く(ウクライナ

捕まった)ロシア軍の捕虜が変なストラップを付けた小銃を持っているかもしれ

ない。それが出てきたら、この情報が正しいということになります。

 

去年の秋から、実は砲弾等が出ていたんです。だけどものすごく不発が多かっ

た。アメリカも、「ワグネル(ロシアの民間軍事会社)が北朝鮮から貰った砲弾

を使っている」と言っています。

 

北朝鮮もロシアも国連制裁違反をやっていることを公開したくないので、ワグ

ネルに与えてワンクッション置いたのかもしれませんが、とにかく不発率が多く

て、シェイグ国防相北朝鮮に来た時、「古いのは嫌だ。銃だけじゃなく砲弾も

新しいのをくれ」と言ったそうです。

 

◆20万トンの小麦粉がロシアから北朝鮮に入っている

 

それで金正恩が8月の初めに、場所を特定しませんでしたが軍需工場に行って、

「国防は経済だ」と言った。なぜ国防は経済」なのかというと、軍需工場で自動

小銃や砲弾を作れば、全部ロシアが買ってくれる」ということです。

 

新しいのを要求されているから、24時間フル稼働している。ただ、原材料がな

い。ロシアから実務者が来て、「何が必要なのか言え」と言って、ロシアからそ

れが入ってきている。まずは労働者がお腹をすかせているということで、実は小

麦粉がもう入っている。

 

8月に大使が「5万トンを人道支援する」と言ったら拒否されたという話を紹

介しましたが、私が聞いているのでは、既に20万トンの小麦粉が入っているそ

うです。軍需工場の労働者が、それをすいとんにしたり、団子にして食べている

そうです。24時間働いて、砲弾を作ったら出しているそうです。

 

しかし、20万トンの小麦粉では人民軍を食べさせることはできないんです。

ざっくり言うと、北朝鮮の2千数百万人に食べさせるためには1日1万トンが必

要です。20万トンは20日分です。だから軍需工場の工員と兵士たちに少し食

べさせています。

 

それから平壌パン工場とかうどん向上にも回っているそうです。しかし依然

として一般住民の飢えは続いていて、餓死や自殺が続いています。

 

そして新しい情報ですが、新しく作った砲弾も不発が多いそうです。北朝鮮

軍需工場はどうなっているんでしょうか。クレームが来ているそうです。

 

北朝鮮はロシアの下請け軍需工場になった

 

ロシアは人道支援をする余裕はないんです。砲弾を出した量と価格を計算して、

「何で払うか」と北朝鮮に聞いた。「20万トンはまず軍需工場の工員らに食べ

させなければならないが、それ以上は小麦粉では嫌だ」と答えた。「石油がほし

い」と。それも精製石油で、ガソリンや軽油です。それから戦闘機を動かすジェッ

ト燃料。さらに天然ガス

 

平壌では今大規模な住宅建設をしています。きれいな高層住宅がどんどん建て

られて写真が出ますが、寒いんだそうです。オール電化だそうですが、停電が多

い。「こんな所にはいられない」と不満が高まっている。それで天然ガスのヒー

ターを付けたいということで話が進んでいます。あと、ドルがほしい、と。

 

従って、北朝鮮はロシアの下請け軍需工場になったのです。ただ、それ以上の

軍需技術についてはロシアは出す気がない。金正恩は実は軍事偵察衛星の技術が

ほしい。また原子力潜水艦の技術がほしい。最新鋭の戦闘機がほしいと言ってい

るようですが、それは貰えていない。

 

一方ロシアは、砲弾だけではなく「出兵してくれ」と言っているが、金正恩

それには応じていない。それはトップ同士が会って話し合いをするしかない懸案

で、そのために金正恩がロシアに行ったというのが私が聞いている話です。

 

その結果はどうなったのかということですが、表向きは「すべてのことについ

て合意した」とされています。プーチンは「特殊部隊を10万人出してくれ」と

言ったそうですが、「うん」と言わなかった。その理由がふるっているんですが、

北朝鮮の中で意見が分かれていたらしく、一部には「建設労働者に偽装して送っ

てもいいじゃないか」という意見を持っている人もいたそうです。

 

しかし、人民軍の総政治局が秘密裏に特殊部隊の思想状態を調査したそうです。

「お前はロシアに行けと言ったら行くか」と。「行きますよ。行って逃げますよ」、

「上官を撃ち殺して逃げますよ」と。親しい人間を装ってそういうふうに聞いた

ところ、そういうことを言う人が多かった。

 

よく調べてみると、今の20代30代は「チャンマダン世代」と言って、90年代

後半以降生まれたり、物心ついたりしていて、労働党からの配給で生活をしたこ

とがない。食料は、特にお母さんたちが市場で働いて、自分の才覚で商売をやっ

て食べてきたのです。だから党に対する忠誠心が本当にないのです。そういう人

たちが韓国のドラマをみんな見ている。「捕虜になったら韓国に行けるらしい」

と。

 

それで大半が逃げてしまうのではないかと恐れたそうです。プーチンにそれを

言うことができないから、「国際社会の非難を浴びるので派兵できない」と言っ

たようです。もちろん聞いた話ですから、どこかに出ている話ではありません。

 

一方ロシアも、原子力潜水艦や戦闘機、もちろん核技術等は絶対に出さない。

「いくらかかったと思うんだ。お金を払え」となる。貿易ですから。但し、軍事

偵察衛星の部品については話がまとまった。だからもしかしたら10月に、ロシ

アの技術で成功するかもしれません。

 

今、話がまとまっているのは、軍需工場で砲弾を作り、ロシアは今年の冬の軍

服が今なくて、布をロシアから提供されて北朝鮮の軍の中にある軍服工場がフル

稼働しているそうです。これは去年も作ったのです。そういうものを出したら、

出しただけ代金として石油や天然ガスや古い飛行機の部品や、それからドルと小

麦がもらえる。

 

◆食糧事情が好転したという情報はない

 

その中で金正恩は「小麦はそれほどいらない。それよりガソリンや天然ガス

優先する」と言ったそうです。だから食糧事情が好転したという情報はないんで

す。今チャンマダンの米の値段が上がっています。とうもろこしの値段も上がっ

ています。庶民はとうもろこしを食べています。

 

米の値段が上がった理由を聞くと、今年7月にかなりの長雨があったそうです。

日本では梅雨ですね。梅雨前線が北上すると穀倉地帯で田んぼが水につかった所

が結構あった。金正恩が膝まで水につかって困っていましたよね。あれは、あそ

こだけではなかった。今年の作が悪いのではないかという噂が流れた。

 

「今の内に刈り取っておかないと飢え死にするのではないか」と言われ、もう

少し経って「値上がりするのではないか」と言われた。そして米の値段が1キロ

5,000ウォンが通常の所、今6,000あるところでは7,000になって

いる。とうもろこしは3,000ウォンくらいでしたが、今5,000くらいに

なっている。場所によって違いがあるようです。だから一息なんかついてないの

です。それが私が聞いているところです。

 

中国から入ったという情報はまったくありません。ここから先は推測も含まれ

るのですが、去年並みか去年よりも作が悪かったら、社会は大混乱になるし、餓

死者が10万人のレベルで出るかもしれない。90年代後半には年間100万人

の餓死者が出たのです。

 

それを放っておこうと金正恩が考えたのか、あるいは拉致被害者を返せば日本

から米が来るとの計算があってロシアからたくさんの食糧を貰わなくていいと思っ

たのか。そこまで来ると私はウォッチャーではなくプレイヤーになってしまいま

すので、断定的なことは言えないのですが、そういうことを言う内部の人もいる

のです。

 

しかし、金正恩が何を思っているかの情報は残念ながらありません。ただ北朝

鮮は人民を300万人殺しても核・ミサイル開発を続けた国ですから、そういう

道を選択しているのかもしれません。しかし、「時間的制約がある」ということ

が通じていれば、米を貰おうとする可能性はあると思います。

 

5月に外務次官の談話が出たということは、人道支援に関心があったというこ

とです。北朝鮮もばかではありませんから、日本が国連制裁を破って、国交正常

化をして1兆円を出すとは思っていません。だから安倍政権の時にアメリカと先

に交渉したわけです。

 

それなのにコミュニケーションをとったということは、人道支援に関心があっ

たということです。また人道支援が必要な条件は変わっていないとすると、5月

の段階でコミュニケーションがとれた条件がまだ残っているとも思えます。

 

だから我々が運動方針で、「全拉致被害者の即時一括帰国が実現するなら人道

支援に反対しない」と決めた前提条件である、親の世代の時間がないということ

と、核・ミサイル問題が動かないだろうということは今も変わっていません。

 

◆食糧不足は深刻で人道支援の必要性がると聞いている

 

3つ目の人道支援が必要なのかどうかということについて、今韓国政府の当局

者や一部の専門家の人たちは、「食糧事情が好転している」と言っています。そ

れが正しいのだとすると、2回の秘密接触があったが今接触していないというこ

とは、ほっと一息入れたからという解釈も成り立ちます。これについてコメント

できる情報を持っていません。

 

一方私が聞いている北朝鮮内部の状況は、食糧不足は深刻で人道支援の必要性

はまだ残っているということです。少なくとも今年5月に、金正恩と岸田さんと

の間で、公開の席で1回コミュニケーションができたことは事実ですから、この

機会を逃してしまうと本当に私たちは、親の世代の人たちに拉致被害者を会わせ

ることで失敗するかもしれないという強い危機感を持っています。

 

しかし、状況としてはこれしか考えられないという手は打っています。もちろ

金正恩氏が、核・ミサイルさえ持っていれば人民は死んでもいいと判断すれば、

人道支援に対する欲は下がるわけです。そこは分からないのですが、コミュニケー

ションが1回あったことは事実ですから、そのあと水面下で何があったか分かり

ませんが、チャンスはまだ残っていると思います。

 

但し、北朝鮮は追い込まれなければ交渉の場に出てきません。交渉に出てきた

ら嘘をつきます。交渉になったら、また田中さん、金田さんの話が出てくるかも

しれません。もちろん二人のことを北朝鮮が一方的に公表するなら、「被害者を

返せ」と言うべきです。しかし、それで終わりということはない。それだけで人

道支援が行くこともない、と私たちは要求したいと思います。

 

北朝鮮にこそタイムリミットが来ている

 

今息を?むような感じで情勢を見ています。私が言っていることが全部正しい

わけではないですが、分からないのです。政府もそういう中で、まずは情報を取

ること、パイプを作ること、そして様々なことがあると思います。

 

岸田政権が昨年10月に、「核・ミサイル問題と拉致問題を切り離す」という

大きな戦略的決断をしたのは事実です。これは私たち、特に家族の方たちが言っ

てきたことを入れてくれたわけです。米朝が動くのであれば、核・ミサイル問題

にシフトすることもあり得たのですが、動かない。そういうことを見て、北朝鮮

人道支援を欲しているということを見て、手を打ったのです。そうしたら5月

に返事が来たということまでは事実なので、何も動いていない、何もしていない

ということではないのです。

 

但しうまく行くかどうかとはイコールじゃないんです。最初の話に戻りますが、

松野官房長官が留任した。去年以降の体制が今も維持されているということは、

岸田総理は失敗したと思っていないのではないかと思っています。

 

目に見えることがないのはつらいですし、昨日も早紀江さんと話したのですが、

「どうなっているんでしょうか。目に見えることがないのは本当につらいんです」

と言われました。我慢の時だと思いますが、私は動いていると思っています。教

えてもらってはいないし、交渉については教えてくれとも言いませんから。

 

今の段階ではみんなで関心を持って、岸田政権がやっていることを応援して、

全員返してくれるなら食糧支援に反対しないが全員でなければ我々は怒る。そし

て、「親の世代が生きている間でなければ、本当に日朝関係は危うくなりますよ。

北朝鮮、あなたたちにこそタイムリミットが来ているんですよ。我々の怒りの限

界も来ていますよ」、と民間としては発信し続ける時かなと思っています。あり

がとうございました(拍手)。

 

以上

 

 

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■岸田首相にメール・葉書を

首相官邸のホームページに「ご意見募集」があります。

下記をクリックして、ご意見を送ってください。

https://www.kantei.go.jp/jp/iken.html

 

葉書は、〒100-8968 千代田区永田町2-3-1 内閣総理大臣 岸田文雄殿

 

救う会全国協議会ニュース

 

発行:北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会救う会

TEL 03-3946-5780 FAX 03-3946-5784  http://www.sukuukai.jp

担当:平田隆太郎(事務局長 info@sukuukai.jp)

〒112-0013 東京都文京区音羽1-17-11-905

カンパ振込先:郵便振替口座 00100-4-14701 救う会

みずほ銀行池袋支店(普)5620780 救う会事務局長平田隆太郎

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