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ヒマラヤの辺境地帯の帰属を巡り、中印がまた争い

投稿日:2024/4/7

ヒマラヤの辺境地帯の帰属を巡り、中印がまた争い


中村悦二
(フリージャーナリスト)

【まとめ】

・アルナチャール・プラデーシュ州の地名について、中国は同地域を「蔵南」として守り抜く姿勢。

・インドはこうした中国の姿勢に猛反発している。

中国・民生部の地名についての漢字、チベット文字、中国語での発音発表は今回が初めてではない。

 

インドが実効支配するヒマラヤのアルナチャール・プラデーシュ州を巡り、中国の国務院に属する民生部が30か所以上の地名について漢字、チベット文字、中国語での発音などを発表。中国は再度、同州地域を「蔵南」として守り抜く姿勢を示している。インドはこうした中国の姿勢に猛反発している。

インドのタイムズ・オブ・インディア紙が、香港のサウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙報道として3月31日付けで伝えた。

以前、インドと中国の間で今世紀に入り様々な紛争が起きていることを紹介したことがあるが、もう一度振り返ってみる。

英領インドと中華民国の間では、ネパールとブータンを挟む形で国境を接するダライ・ラマ14世政権下のチベットには、中華民国の実効支配は及ばず、チベットは英国とマクマホン・ラインを境界としていた。

1949年に中華人民共和国が誕生し、中国とインドは非同盟運動を推進する仲となった。しかし、1956年にチベットで動乱が起き、ダライ・ラマ14世はインドへの亡命を余儀なくされ、印中間で緊張が高まり、両軍兵士間で戦闘が起きた。この動きはインドとパキスタン間での核開発競争にも影響した。印パ間では、カシミール、シッキム地方で2013年、2017年、2020年に小規模ながら軍事衝突が起きた。

中印間では両国軍間の銃撃戦が国境で勃発するなどした。2020年には、インドで中国製品の不買運動が起きた。インドのモディ首相は2021年7月の中国共産党建党100周年に際し、祝賀メッセージを送らなかったが、10月にはモディ首相と中国の習近平国家主席は電話会談を行った。

中国・民生部の地名についての漢字、チベット文字、中国語での発音発表は、今回が初めてでなく、2017年に6地点、2021年に15地点でも行われた。

インドは2022年12月から翌年の11月までG20の議長国を務めた。G20の正式名称は「金融・世界経済に関する首脳会合」。同会合は世界のGDPの8割以上を占める「国際経済協調の第一のフォーラム」として世界経済を力強く成長させていくことを目的としてきた。グローバル化の深化とともに、最近ではマクロ経済や貿易だけでなく世界経済に大きな影響を与える開発、気候変動・エネルギー、保健、テロ対策、移民・難民問題など地球規模課題についても取り組んでいる。

G20には中国も入っている。インド外務省は、中国・民生部の30か所以上の地名について漢字、チベット文字、中国語での発音などを発表したことに対し、「根拠のない主張」と反発。同省はインドに属するのは「変えることができない事実」としている。