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「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和六年(2024)5月20日(月曜日)
通巻第8259号
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それでも米国民主党は不法入国の中国人を擁護する
共和党がいきり立っても民主党多数の上院は暖簾に腕押し
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2024年5月16日、米連邦議会下院の国土安全保障委員会の監視・調査・説明責任小委員会(ダン・ビショップ委員長=共和党.)は公聴会を開催し、米国南部国境を不法に越える「異様な、前例のない中国人の流れ」に言及した。
中国人の不法移民が急増しているのだ。24年4月だけで3324人の中国人が南西部の国境を越えた。年初来既に2万7000人を超えて、さらに増加する傾向になる(現在、10万人をこえる中国人が政治亡命を申請している)。
ビショップ委員長は「中国人移民に対する審査の質問が40問から僅か5問に減らされ、国家安全保障上、役に立たないことを懸念している」として続けた。
「中国共産党が地政学的な優位性を追求し続け、我々の主権を脅かしているが、コミュニティに解放することによってもたらされるリスクを検証する必要がある」。
ビショップ議員はトランプ支持の保守派である。
中国人移民には「悪意のある動機」があると指摘されてきた。24年4月にもノースカロライナ州は中国人犯罪集団を起訴し、「メキシコの麻薬カルテルと中国の多国籍犯罪組織が米国全土でマネーロンダリング活動に関与している」とした。
ロジャー・マーシャル議員(共和党、カンザス州)率いる共和党上院議員は国土安全保障省のアレハンドロ・マヨルカ長官に書簡を送り、「米国に不法入国した中国人移民の一部が中国共産党と結びついている可能性がある」と示唆した。
マーシャル議員等は「中国共産党の指示で中国人がスパイ活動に従事し、軍事的・経済的機密を盗んだ例が数多く記録されている。中国が米国南部国境を越えて密輸されるフェンタニルなどの麻薬の重要な供給源である」と書簡で指摘した。
下院共和党は「国境危機の原因はバイデン政権下のアレハンドロ・マヨルカ国土安全保障長官の政策にあると非難し2月13日には、同長官を「法律遵守の意図的かつ組織的な拒否」と「国民の信頼の侵害」で弾劾する決議を行った。
しかし上院は民主党が多数派であるため、弾劾決議には至らなかった。
さきの公聴会では、ヘリテージ財団の国境警備・移民センターのサイモン・ハンキンソン上級研究員が「審査プロセスは不十分だ。これは米国の移民法と主権を嘲笑するものであり、最悪の場合、国家安全保障と地域社会の安全に大きなリスクをもたらす。中国共産党、人民解放軍、その他の国家機関とつながる多くの中国人に加えて、国土安全保障省が犯罪歴のある人々を釈放している可能性が高い」と指摘した。
ことほどさように危機が目の前にあるというのに民主党系列の移民擁護論客も公聴会に呼ばれた。
メーランド大学のメレディス・オーウェン准教授は、「ほとんどの中国人が弾圧から逃れて仕事を見つけるために米国に来ているのだ」と強調した。
ジェリー・ナドラー下院議員(ニューヨーク州。同性婚推進派)は、1月の移民小委員会の公聴会で、「業生産には『不法移民』必要で、さもなければ私たちの野菜は土の中で腐ってしまう」と述べた。
不法移民の人権を守れと訴える民主党は こうした共和党の懸念を一蹴し、「侵略のレトリックと恐怖を煽る新たな『国境公聴会』だ」と批判した。
米国議会は中国人の不法移民対策でも合意が得られないのである。
□◎み○☆や◎☆ざ○☆き◎☆◎ま○☆さ◎☆ひ◎◎ろ○☆