「闇の艦隊」タンカー事故 中共によるイラン石油の密輸の危険性
7月19日、イランの原油を積んでいたとされる中国資本の石油タンカー「Ceres I」が、南シナ海のマレーシア海域で別の石油タンカー「Hafnia Nile」と衝突し、大規模な火災を引き起こした。この事故により、両船は深刻な損傷を受け、乗組員も負傷している。
中国共産党(中共)が西側の制裁を回避し、制裁対象国から密かに石油を輸入する「闇の艦隊」と呼ばれるタンカーを使用しており、海上輸送に対する危険をもたらしている。
衝突事件から1か月半が経過したが、中共が Ceres I を利用してイランなどの制裁対象国から石油を密輸している行為は依然として注目を集めている。
「Ceres I」はイランを出発し、中国の寧波港で石油を下ろした後、中東に戻る予定だった。船舶追跡データによると、Ceres I は過去1年間に何度もこの往復を行っていたが、今回は航行を完了できなかった。
マレーシア当局はこの衝突事件について、Ceres I には衝突前に技術的な故障が発生したとしており、ワシントンポストは、衝突前の船の動きのパターンが別の解釈を示唆していると報じている。
Ceres I は船舶位置情報システム上で虚偽の位置を表示していたのである。
Ceres I は上海にあるShanghai Prosperity Ship Management社によって運営されていたが、最近では香港のCeres Shipping Limitedによって所有および運営されている。
「Ceres I」号は中共がイランなどの制裁対象国から石油を輸入するのを助けている
ワシントンポストの報道によれば、Ceres Iは闇の艦隊のタンカーであることは船舶の動向を追跡する団体にとっては周知の事実である。闇の艦隊の運営は国際法に違反しており、原油の禁輸制裁の対象とされた中国共産党が需要を満たすために行っている。
中国は世界最大の石油輸入国であり、イラン、ベネズエラ、ロシアなど、アメリカから厳しい制裁を受けている国々から石油を輸入している。
分析家たちは、中国共産党が西側の金融システムや海運サービスを回避するために、老朽化した不適格なタンカーからなる艦隊に依存していると指摘している。これらのタンカーは違法に運航されており、国際的な海上通路の安全を脅かしている。
Ceres Iは2001年に進水し、安全上の理由からタンカー運航業者が定めている15年から20年という運航期限を超えている。過去5年間で、4つの異なる国旗を掲げており、最近はサントメ・プリンシペの国旗を掲げている。このアフリカの島国は、登録料が安く、規制が緩いことで知られている。
中国共産党は制裁を受けた石油の輸入を認めていないが、イランなどの制裁対象国との貿易を支持している。中国の駐ワシントン大使館の劉鵬宇報道官は、声明の中で「中国は国際法に基づき他国と正常なエネルギー協力を行っており、これは正当かつ合法である」と述べた。
ロイターの報道によると、海事データおよび情報機関「Lloyd’s List Intelligence」のチーフアナリスト、ミシェル・ウィーゼ・ボックマン氏は、Ceres Iが7月19日に停泊していた場所が「闇の艦隊」の使用区域であり、イランの石油を転送するために使われていることが広く知られており、アメリカの制裁に違反していると指摘している。
彼女はさらに、Ceres Iがアメリカの制裁に違反するイランの石油の転送や輸送活動に何度も関与していると述べた。
航運業界の関係者によると、この石油タンカーは近年、中国に対してベネズエラの石油を輸送する活動にも関与しており、ベネズエラはアメリカの制裁を受けている。
Ceres Iの不透明な運航が国際海域に危険をもたらす
「ワシントン・ポスト」の報道によれば、横須賀アジア太平洋研究所の海事ガバナンス上級研究員であるイアン・ラルビー氏は、Ceres Iのような船舶の衝突は「いつ起こるかの問題であり、起こらないかどうかの問題ではない」と述べている。ラルビー氏は、Ceres Iが衝突する前に積載していた石油をすでに降ろしていなければ、「私たちは災害を目にすることになるだろう」と警告している。
Ceres Iの中国の所有者は、「ワシントン・ポスト」からのコメント要請には応じていない。
石油タンカーは、船舶自動識別システム(AIS)を通じて正確な位置を公開することが求められており、他の船舶がそれを検知し、衝突を避けることができるようになっている。しかし、国際海事機関(IMO)は、「闇の艦隊」のタンカーが自動識別システム上でその位置を隠したり偽造したりする(このプロセスは「欺瞞」と呼ばれる)ことで、違法航行を行っていると指摘している。IMOは、これが国家海域にもたらす安全リスクは「現実的かつ高い」と警告している。
7月19日午前3時55分、Ceres Iは船舶自動識別システムを通じての位置情報の送信を停止し、その後「Hafnia Nile」号と衝突した。
マレーシア当局によれば、Ceres Iは技術的な問題によりマレーシア東部の国際水域に停泊しており、「Hafnia Nile」号はそれを避けようとしたが、最終的には衝突したと報じられている。しかしワシントン・ポストは、Ceres Iの動きを分析している三人の航運専門家の意見を引用し、この説明には重大な問題があると指摘している。
海事データと情報機関「Lloyd’s List Intelligence」のチーフアナリストであるボックマン氏は、Ceres Iが停泊し、その正確な位置を発信しているのであれば、なぜHafnia Nileはそれを避けることができなかったのか疑問を呈している。ボックマン氏によれば、衝突前のHafnia Nileの航行速度は14ノットで、最大航速に近く、他の船は航路上に停泊していないと認識していたはずである。
Hafnia Nileの所有者であるHafnia社は、ワシントン・ポストからの質問に対して回答を拒否し、現在調査中であると述べている。海事分析会社Kplerのリスクとコンプライアンスアナリストであるディミトリス・アンパツィディス氏は、Ceres Iが外部に対してその位置を「欺いて」いた可能性が高く、Hafnia Nileがそれを発見できなかったと考えていると述べた。
彼は、Ceres Iが「隠す」数日前に送信された船舶自動識別システムのデータに異常な間隔があり、「ある区域内で不規則な重なり移動が見られ、その後に突然の急旋回と長い直線経路が続く」と説明し、これらのパターンは「欺瞞行為」と一致していると語った。