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「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和六年(2024年)10月4日(金曜日)
通巻第8442号 <前日発行>
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米議会下院は中国制裁法案のオンパレード
共産党幹部の在米資産凍結など強硬策がずらり
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米国議会下院は「バイオセキュリティ法」など、中国の脅威に対抗するための一連の法案を可決した。すぐさま中国政府が強く反発した。
9月9日、米議会下院は賛成306票、反対81票で、「バイオセーフティ法改正案」(HR8333)を可決した。主に米国連邦政府を制限するもので、上院に送られる。ただし上院は民主党が多数のため、可決見通しは薄い。
中国政府は、「断固とした反対」を表明した。中国外交部の毛寧報道官は「米国が中国企業に対して『差別的措置』を講じている」と非難し、「中国企業を不当に抑圧するためにさまざまな言い訳を乱用することをやめろ」と獅子吼した。
法案には中国企業名が網羅されていたため、当該の中国企業数社も声明を発表し、「米国の国家安全保障に対するいかなる脅威」も否定したうえで、法案の展開に細心の注意を払っていると述べた。中国関連企業の株価は大幅に下落した。
「バイオセーフティ法」は共和党の下院議員マイク・ギャラガー(下院中国問題特別委員会委員長=当時)が民主党議員のラジャ・クリシュナモーティと共同で提案されていた。時間がかかったのは米議会の仕組みと優先議題がさきにあったからで、くわえて中国側のロビィ工作も舞台裏で展開されていた。
主眼は国家安全保障上の脅威と認定された中国のバイオテクノロジー企業と米国連邦政府が取引を行うことを禁止し、米国の税金が関連企業に流れることを防ぐ契約を結ぶことを目的としている。
「外国の敵対者」という表現が盛り込まれた。とくに米国の機密医療データを収集している疑いのある中国企業を指す。
下院米中戦略競争特別委員会のジョン・ムーレナー委員長は、「私の同僚の中には、この法案に中国企業を名指しすることに疑問を抱いている人もいるかもしれないが」と注意を喚起しつつ「議会には国家安全保障関連法を制定する憲法上の義務があり、その中には国家安全保障に対する脅威となる『外国の敵対者』によって支配されている企業を調査し、その法律の中で名指しすることも含まれる。それらの企業は「BGI」、「MGI」、「無錫無錫AppTec」、「無錫生物製剤」など五社である。国家安全保障に対する容認できない脅威となる証拠は明らかである」と
採決前に演説した。
▼中国「軍民融合」戦略の一環、米国の国家安全保障に脅威をもたらす
「これらの中国企業は遺伝子配列決定とバイオ医薬品の先進企業で、中国の「軍民融合」戦略の一環であり、米国の国家安全保障に脅威をもたらすと考えられる。ゆえにこれらの企業と協力すると、米国の機密医療データが中国政府の手に渡る可能性が高い」とムーレナー議員は発言した。
とくに「無錫無錫AppTec」は2024年3月に、機密性の高い医療知的財産権を中国共産党の公式部門に譲渡したと米国の安全保障局が指摘していた。
「BGIより深刻なのは、同社が遺伝子配列決定とバイオテクノロジーにおいてファーウェイ企業と同等であり、中国共産党軍と協力していることだ。遺伝子配列決定技術がひとたび兵器化されれば、それが中国共産党によって利用される可能性がある」
同日、下院は「反中華人民共和国悪影響基金認可法」(HR 1157)を351対36の投票で可決した。
これは夥しいフェイク情報との闘い、透明性の促進、汚職の削減、中国の経済行動やその他関連する事項への対抗など、中国共産党の世界的な影響力と闘うために、2023年から2027年まで毎年3億2,500万ドルの当該基金への支出を承認した。
アンディ・バー下院議員は、「中国共産党の世界的な影響力の増大は、国家の主権と、我々が守ろうとしている『自由で開かれた国際秩序』を直接脅かしている」とし、「この法案は、我々に中国に対抗する手段を提供するものである」と述べた。
米議会下院が9月9日に可決した中国制裁法は、「台湾紛争抑止法」(HR 554)、「中国共産党のドローンに対する抵抗法」(HR 2864) )、「経済スパイ防止法」(HR 8361)
9月10日に下院が可決した法案は、「孔子学院および中国関連団体に対する国土安全保障省の制限に関する法律」(HR 1516)、「香港経済貿易局認定法」(HR 1103)、「2024年米国農業を外国の敵から守る法」(HR 9456)、「2024 年米国電気自動車分野における中国の支配の終結」(HR 7980)などだ。
かくして全米に蔓延するアンチチャイナ風潮を背景として、米議会下院は中国制裁法案のオンパレードとなった。
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